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X=歌手。半農半歌手に聞いた田舎暮らしのコツ。

「都会にいるよりも、自然に囲まれた田舎暮らしがしたい」「移住したいけれど、地方には仕事がない」と悩む人は多いかもしれない。そこで提案するのは、半農半Xという生き方。取材したのは、半農半歌手を実践する歌手Yaeこと、藤本八恵(ふじもと・やえ)さん。彼女は東京都渋谷区で生まれ育ち、現在は千葉県鴨川市で農園を経営している。X=歌手の八恵さんを参考に、あなたのXになるものは何なのか、探してみてはいかがでしょう?

書き手:岩田なつこ

〈登場人物〉
Yae/藤本八恵(ふじもと・やえ)
東京生まれ。歌手加藤登紀子(かとう・ときこ)の次女。
2001年ポニーキャニオンからアルバムCD「new Aeon」でデビュー。
存在感あふれる「声」で各地にファンの和を広げ、NHKみんなのうたや人気ゲームソフト、ウォルトディズニー生誕110周年記念作品ディズニー映画「くまのプーさん」の主題歌を歌唱。代表曲「名も知らぬ花のように」は、日本ユニセフ協会の東北大震災応援メッセージCM「ハッピーバースデイ3.11」の挿入歌として起用された。「ロマンスをもう一度」など、テレビドラマや小田急ロマンスカーテレビCMのテーマソングにも多数の曲が起用されている。
絶賛子育て中の三児の母でもあり、「鴨川自然王国」で農を取り入れた生活を送っている。ラジオのパーソナリティも務めながら全国でライブ活動を行う。

幼い頃からそばにあった父の農園

東京駅からバスで90分、千葉県鴨川市に八恵さんが夫婦で経営する鴨川自然王国はある。 八恵さんは、2001年に歌手「Yae」としてデビュー。東京都渋谷区で生まれ育ったが、現在は千葉県鴨川市を拠点として歌手活動を続けている。ハ恵さんと鴨川自然王国との繋がりは、実は幼少期からあった。父親の藤本敏夫(ふじもと・としお)さんが鴨川市に移住していたのだ。

「ちっちゃい時はよく来てたから、山の中を走り回ったりしていました。うち、マンションだったんで犬も飼えなかったから犬を飼ったり。地元の子とも一緒に遊んだりしたんですよ。中学・高校の間は距離があったけど、社会人になってふらっと戻ってきたときに、なんかすごい良いとこじゃん!と思って」

聞けば、父・敏夫さんは東京で会社を持ち、週末だけ鴨川に来ていたという。それは1980年代のお話。半農半Xという言葉が生まれる1990年代以前から、それを実践している人がいたとは!しかし、当時はその生き方が理解されないことも多かったそう。

「父が社員に『半分働けばいいよ、後の半分は農業やろうじゃないか。その代わり給料も半分ね』と言ったら、すごいブーイング(笑)。その当時は経済成長の時代で、企業はお金を儲けて成長していかなきゃいけないっていう固定概念がすごく強くて。父が『半分でいいよ。それで、もう半分は自分の時間とか、家族との時間とか、自給生活をして体も元気に』と訴えてたんですけど、全然世の中に受け入れられなかった」

食べる分だけ作ること

就農を目指す旦那さんとの出会いもあり、渋谷区のマンション生活に別れを告げ、八恵さんは2005年に鴨川市へ完全に移住した。

「ここだったら子どもがいてもいいかも、家族を持ってもいいかもということが、想像できたの。東京にいるときって、若かったのもあるけど未来のことが考えられなくて」

父・敏夫さんの農園を引き継ぎ、鴨川自然王国の運営を始めた。主な事業は農園、カフェ、イベント、サポーター制度の4つ。農園では無農薬・無化学肥料で米や野菜を作り、直接販売している。カフェ「En」では王国の野菜を使ったランチを提供し、収穫祭や料理教室などのイベントを開いている。田舎暮らしや自給自足に関心のある人をターゲットに、サポーター制度も始めた。農ある暮らしの実践として、米や麦、大豆を共に育てている。

以前は宅配で毎週40箱、野菜を東京へ出荷していた。しかし、畑の拡大や安定供給を負担に感じ、「こっち(鴨川自然王国)に来て食べてもらえればいいじゃない」という考えに切り替えた。現在は、自給用とサポーター用の穀物、カフェで使用する野菜のみを育てている。

「もちろん生産すること自体は悪いことじゃないけれど、たくさん作ることによって自分たちの時間もなくなっていくし、畑も増やさなくちゃいけない。そういうことを考えていくと、どんどんダウンシフト*していきました」

自分たちが食べる分だけで十分豊かになれる。これが八恵さんの結論だ。

*ダウンシフト
働き詰めの毎日から思い切ってギアを落とし、自分の好きなことに費やす時間を作り、ゆったりとした無理のない生活を送るライフスタイルのこと

鴨川自然王国の田植えイベントの様子。
カフェ「En」

田舎で感じる、食べるしあわせ

八恵さんが鴨川の生活でしあわせだと言い切るのは「何もかもが美味しい」こと。都会での「美味しい」と鴨川での「美味しい」はどのように違うのだろうか。

「エネルギーの違いを感じます。とれたての野菜、新鮮な魚、野生の肉。都会では食べることは難しい」

その場でとって、すぐ料理する野菜の味は全然違う!と力説する八恵さんに私も迷わず賛同する。自分で畑でとった白菜は、スーパーで買う白菜より何倍も甘く感じる。自分でとった、という達成感や喜びもあるけれど、もっと深いところで何かが違うのだ。さっきまで畑や山で生きていた命には、絶対に生きるための「エネルギー」がある。それが違いとなって現れているのかもしれない。

カフェ「En」のランチ、ごはんプレートには鴨川自然王国の野菜と春先の野草がたっぷり。

田舎暮らしには、手間がかかるものです

幸せなことがある反面、田舎の生活はもちろん大変なこともある。でも、その大変なことから逆に教えられることも多いという。

「日々の生活そのものにすごく手間がかかります。用意されてないから。例えば、暖房にも薪がいる。食べるのも種をまくところから。都会にいると、コンビニに行けば全てが揃っちゃう。でも、お金がないと生きていけない。それは悪いことだと思わない。ただ、消費者ってすごく嫌な言葉。消費するだけの人じゃ嫌だなと思います。暮らしそのものを、ちゃんと自分で作れる人になりたいです」

八恵さんが教えてくれたのは、田舎で生活するためにはスキルが必要ということ。半農半Xの「X」に当てはまるスキルを見つけるための、八恵さんからのアドバイスは、とにかく挑戦すること。いろんなことを試してみれば、ぴったりくる仕事が見つかるかもしれない。

そして、既に持っている経験や知識が役立つこともある。人と話すことが好き、DIYが得意、留学で身につけた英語力、今の仕事のスキルなど。

工夫次第でどんなものも、あなただけの「X」になるのではないだろうか。

農園への想いをメロディに乗せて、歌い続ける

Yaeさんの歌には、自然の風景がしばしば登場する。代表曲「名も知らぬ花のように」を聴くと、喜びと、時には悲しみをもたらす自然の中で、懸命に生き続ける人々の姿が思い浮かぶ。最後に、Yaeさんが歌に込める想いを聞いた。

「歌に大事なものって、『何か残したいもの』なんですよね。例えば棚田の風景だったりとか、失われているわけじゃなくて、再生できるもの。歌に残すことで、それをみんなが想像しやすくなる。だからこそ、ここでできる残したいものを歌にも託すし、自分自身も、鍬を持っています」

鴨川自然王国ではサポーターを募集しています。お米や大豆の特典に加え、農作業体験や収穫祭などのイベントも開催。農的暮らしを、してみませんか?

鴨川自然王国のWEBサイトはこちら

YaeさんのOfficial Web Siteはこちら


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