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ほろ苦く、もの悲しい春

ふきを近所の友人からもらった。毎年、この季節には裏庭にたくさん生えるそうで、去年ももらって、初めてふきを料理してみた。皮をむくのが面倒だったけど、出来上がったふきを食べたら、その手間も吹き飛ぶおいしさだった。なので、今年ももらって来て料理した。

やっぱり皮むきが一苦労で、むいてる最中は、なんでまたもらって来ちゃったんだろう、と思ったりした。でも、その後で煮たふきを食べたら、やっぱり皮むきの手間が吹き飛ぶおいしさだった。この季節にしか食べられない、という特別な感じがいい。さらに、この辺りのお店では手に入らない、という貴重な感じもいい。春を感じられる、ほろ苦い味。

そんなふきを食べながら、夫と話していたら、もしもまた何らかの理由で薬を変えなければいけないと精神科医に言われて、本当に変えることになったら、その前に離婚する、と言われた。もう私にあんな辛い思いはさせられない、させたくないから、と。そう言われた途端、心臓がぎゅっと縮んで、涙がこみ上げてきた。そんなこと言わないで、私たちは大丈夫、と言うので精一杯だった。

夫は優しい。こんなに優しいのに、なぜか病気は彼を別人にしてしまう。合う薬を飲んで落ち着いている今のまま、ずっとこのままでいられたらいいのに。でも、それはきっと、暖かい春がずっと続いたらいいのに、と望むようなもの。桜やふきを楽しめる心地よい春は、いつも一瞬で過ぎ去ってしまう。春は、なぜかもの悲しい。


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