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人を動かす言葉をつくる、山口瞳と戦後日本の広告

戦後日本で活躍した作家でエッセイスト、サントリー宣伝部のコピーライターとして活躍していた「山口瞳」。

私がこの人物の存在を知ったきっかけは、本屋でたまたま目に留まった一冊の本「ヨーロッパ退屈日記」だった。

この本のタイトルが醸し出す気だるさと陰気さに心奪われた私は、その本の前でじっと足を止めた。

その日、私は本を買いに来ていたわけではなかったので、買わずに去ったものの、それ以後不思議と本屋に行くたびにこの本が目に留まる。

 そしてついに私はこの本を買ってみることにした。

この本の内容も、著者のことも何も知らない。私はこの本のタイトル一つによって行動を促されたことになる。思いもよらぬ自分の行動に少し感動さえした。言葉の力はこれほど偉大なのだ。

読んでみると、このタイトルをつけたのは著者の伊丹十三ではなく、山口瞳という人物らしい、山口瞳とは一体何者なのか気になり調べてみることにした。

戦後日本の広告業界と山口瞳


山口瞳は戦後日本の作家、エッセイストであり、サントリー宣伝部のコピーライターだったと知った。

山口瞳の代表作であり出演もしている「サントリーウイスキー角瓶 雁風呂」のCMがある。

このCMが作られた1974年の日本の広告業界は、新聞広告をテレビコマーシャルが追い抜き、広告の社会的役割が問われるようになると同時に、芸術性の追求が盛んになった。

消費者の価値観やライフスタイルに焦点を合わせ、企業ポリシーへの共感を得ることに力を注ぎ、商品や企業とは直接関係しない映像・音楽を流し、人の心に訴えかけるような情感のある広告が流行。

こういった広告業界の変化があった1970〜80年代は、山口瞳のほか、開高健、糸井重里などコピーライターが力を持っていた時代でもあった。

まさにこのCMもその流行に沿っている印象。

ちなみにこの「ヨーロッパ退屈日記」の表紙とコピーはメンズ雑誌の「POPEYE」が敬意を込めてオマージュしているのがとても良い。

山口瞳の言葉は時代を越えて、現代の私たちの心にも色褪せないインパクトを残したと言う証明ではないだろうか。

いいコピーってこうゆうものなんだと思う。


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