鮮魚パックの結んでもはぐれない香りに燻されながら、同じアトモスフィアの輝く下海岸が何故にそちらは愛おしいかと悩ませる、僕の頭はトサカが尖っていて家を出られません。引き寄せる、取り寄せる、手繰り寄せるリンゴや愛情にも限りはあるのでしょうが、半世紀も前のバンドの彼が伝家の宝刀を一度限り披露したことが再現も際限もなく、また別の日には誰かが終わりと言わない限りは溝を滑り続けてくれるのも事実ではありませんか。

　大事にできる？できない？気まぐれで飽き性な僕や君には少々難題が過ぎる。どうして最高値や平均値を、喫茶店に行けば「 本日のオススメ」を、いつだってポジティビティと空元気は背中合わせながら美しいデュオで伝えてくれるのに…隣にあって愛おしいものほど、ひとたび見つけた無礼には裏切られた気分になる。僕は数年かけてようやくそれを心から赦すようになりました。愛と無関心が対義語ならば、どちらに赦しを振り分ける根拠は一体。

　香りだけではない。秋の口笛空には覆ってくれる屈折率が見当たらないから、メトロポリスと斜陽都市の聞こえに区別が僕はつきません。近すぎるジェット機の視聴覚的危うさが実は特産品でなかったらしく、妙に奪われた気で身の丈知らずながらいるのです。リンゴを齧る。お仏壇もバアバのまな板も通らないで届く、産地直送イエローサブマリンの美味しいことに今更溺れてしまいそう。そう、アレには決して溺れなかったんだ。下海岸沖を長い事流されたママの無断遊泳武勇伝、然り。

　着替えてからご飯。トサカは直してきなさい、顔を洗ってタオルを干して、犬を撫でたら行ってらっしゃい。圧倒的リズムに暮らす窮屈さを一人ではどうしても創れずにいる。二人が分離したり、結合したり、合作したり、喧嘩したり…世界は二人でできている。ひいふうみい、圧倒的リズムの主役を、みんなが誤解しています。僕も、君だってね。

　次に食べるリンゴを、手始めに飾っておくと決めました。数年かけた物語を、目の前に置いとくことに満足した頃、が食べごろなんですきっと。不思議と一日にピッタリ重なるそれを、仏壇は無いが、行ってしまった彼らはどう思うだろう。

　ものの数分で、芯までたどり着いてしまったから捨てる。医者いらず。切って食べれば、もう少し内側まで食べられたかな？僕の寿命は、伸びたでしょうか、縮んだのでしょうか。