真名哲也

TRAVEL WRITER TETSUYA MANA 1996年11月に旅行作家・江藤…

真名哲也

TRAVEL WRITER TETSUYA MANA 1996年11月に旅行作家・江藤誠晃が「VIRTUAL作家プロジェクト」としてスタートさせた世界各地を舞台とするハイパーフィクション。真名哲也のペンネームでリリースしてきたネット小説作品群をアーカイブしたnoteです。

マガジン

  • TRANS ISLAND 儚き島 回顧録

    2002年2月19日から5年間260週間をかけてオンライン配信された連載ネット小説『TRANS ISLAND 儚き島/真名哲也』。スマートフォン黎明期に掌上の端末で読む未来形の小説を創作してほしいというマイクロソフト社からのオファーを受けて書き下ろした作品は「NETWORK小説」なるカテゴリーで、フィクションと現実の世界が同時進行するリアルタイム配信の実験となった。 作品配信開始からちょうど20年を経た2022年2月19日。同作品の語り手である作家・真名哲也を自らのアヴァター的存在としてプロデュースした江藤誠晃が回顧録を含めた複層的作品としてSNSで再配信を行う。 ※各種オンラインサイトで販売・公開されたコンテンツ(原題『儚き島』真名哲也)に現在補足を加筆した回顧編です

  • CROSS WORLD PUZZLE SINGAPORE

    シンガポールで一通の古い手紙が発見されました。残された消印が1928年といいますから今から約95年前のイギリス統治下時代。植民地として既に1世紀を経ていたシンガポールが西洋と東洋を結ぶ自由貿易港として大いに栄えていた時代のものです。 「JBの手紙」と名付けられました。なんとレポートには20世紀前半のシンガポールの様子が克明に伝えられると同時に、この国の未来の姿(すなわち現在)が的確に予想されていたのです… ※シンガポールの街歩きを楽しみながら謎解きを行うプロジェクト向けに書き下ろされたオリジナルストーリー。現在は旅行商品販売は終了しましたが、小説コンテンツを特別公開しています。

  • Time Travel HAWAII

    1868(明治元)年5月17日。日本人150名を乗せたイギリス船籍のサイオト号がハワイへ向けて横浜を出港した。のちに「元年者」と呼ばれることになる初の日系移民集団であったが、実はこの移民計画が徳川幕府とハワイ政府間で決定した事項であったことから事態は複雑になっていた。明治新政府がこの移民を認めなかったため元年者たちは無断で日本を離れる違法移民のレッテルを貼られることになってしまうのである。 そして、この船に日本のある人物から特命を受けたひとりの青年が密使として乗り込んでいた。数奇な運命によってハワイ王国第7代国王デヴィッド・カラカウアと共に世界一周の旅に出たその男が関わることになる亜細亜諸国連合計画とは…

  • 世界一周307日

    2011年3月10日。ひとりの旅行作家が全く新しいシステムによる世界一周の旅をスタートさせた。巡る先はアジア、ヨーロッパ、アフリカ、北米、南米、オセアニアの世界6大陸。『SUGO6』と名付けられた旅はトラベル系ベンチャー企業・PASSPOT社が提供するユニークなプロジェクトで、その名のとおりスゴロクゲームを楽しむように旅行者個々がサイコロの目に応じて世界各都市を転々と旅していく… ※AppleBooksで販売されたコンテンツ(原題「SUGO6」世界一周/真名哲也の旅)を加筆修正したものです

  • 電遊詩人

    真名哲也が2001年にスタート直後のau公式サイト向けに提供していたデジタルポエム企画『電遊詩人』の中から代表作を紹介。 横10文字×縦10,20,30文字の3種の定型詩は「poemail」と名付けられ、読者からの投稿作品募集も行われました。

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TIME TRAVEL HAWAII 1868予告

1868(明治元)年5月17日。日本人150名を乗せたイギリス船籍のサイオト号がハワイへ向けて横浜を出港した。のちに「元年者」と呼ばれることになる初の日系移民集団であったが、実はこの移民計画が徳川幕府とハワイ政府間で決定した事項であったことから事態は複雑になっていた。明治新政府がこの移民を認めなかったため元年者たちは無断で日本を離れる違法移民のレッテルを貼られることになってしまうのである。 そして、この船に日本のある人物から特命を受けたひとりの青年が密使として乗り込んでいた。数奇な運命によってハワイ王国第7代国王デヴィッド・カラカウアと共に世界一周の旅に出たその男が関わることになる亜細亜諸国連合計画とは…

    • 115.時空を旅する研究所

      2004.4.27 【連載小説115/260】 せっかくの機会だから、かなり以前に訪ねた地を選び、記憶を辿りながら「変化」と「不変」の比較を楽しむ旅をすることにした。 出発地は成田国際空港。 香港行きキャセイ・パシフィック航空のチェックインと出国手続きを済ませる。 アテンダントの笑顔に迎えられて機内に入り、ビジネスクラスのシートに落ち着く。 機内誌にざっと目を通していると離陸のアナウンスが聞こえる。 いよいよ旅のスタートだ… 「また旅に出たの?」 そんな声が聞

      • 114.シンガポールの向こう側

        2004.4.20 【連載小説114/260】 アジア南方の島から飛んできた渡り鳥と、北方の島から飛んで来た渡り鳥。 別々のルートを旅する2羽の鳥が中継地の太平洋上の島で知り合う。 共に旅を人生の住処とする放浪者として意気投合した彼らは旧知の友のごとき仲となり、生まれた国と旅してきた先々のことを語り合い、暫し穏やかな時間を共有する。 2羽の渡り鳥のお国は、それぞれシンガポールと日本。 似て異なる国家でありながら、異質の中に共通点も多い。 そんな互いの祖国に対して親近

        • 113.未来を読む機械

          2004.4.13 【連載小説113/260】 「南の島で過ごす最も裕福な時間は?」 と、熟練の旅人に問うと 「椰子の木陰で心地良い風に吹かれながら1冊の本に向かう読書の時」 なる答が返ってくる。 「読書を行う上での最も贅沢な環境は?」 と、熟練の読書家に問うと 「仕事も複雑な人間関係も全てを置き去りにして旅立つ先の南の島」 なる答が返ってくる。 そう、空間的に日常を脱するリアルな行為である「旅」と、時間的に日常を脱するヴァーチャルな行為である「読書」は、相

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        マガジン

        • TRANS ISLAND 儚き島 回顧録
          116本
        • CROSS WORLD PUZZLE SINGAPORE
          1本
        • Time Travel HAWAII
          2本
        • 世界一周307日
          100本
        • 電遊詩人
          36本

        記事

          112.デュアルライフ

          2004.4.6 【連載小説112/260】 4月1日の島開き記念日を終えて、トランスアイランドの歴史が3年目に突入した。 1年目。 実験的社会スペースとしての島が整備された。 これはベースとなる自然環境はもちろんのこと、インフラや各種施設も含めた生活空間のことだ。 2年目。 太平洋島嶼国家との連携活動が誕生した。 これはもちろん完成されたネットワークではなく、今後着実に深まっていくであろう友好の輪のこと。 そして、3年目。 「ここに集う皆さんでこれからの1年に

          112.デュアルライフ

          111.奄美の誘惑

          2004.3.30 【連載小説111/260】 駅の雑踏の中で一枚のポスターに目が釘付けとなり、暫しその前で身動きできなかった。 大袈裟さではなく、その日本画のポスターはそれほど強烈な印象をもって僕の心に飛び込んできた。 アダンという亜熱帯植物が題材となったそのポスターは、奄美群島日本復帰50周年を記念して大阪の百貨店で開催されているひとりの偉大な画家の作品展のPRポスターだった。 50歳で奄美大島へ移住し、孤独と病と闘う創作生活の後、静かにその地で生涯を終えた画家の

          111.奄美の誘惑

          110.陸に浮かぶ島

          2004.3.23 【連載小説110/260】 冒頭からクイズを出題しよう。 先週、僕は何処の島を訪ねていたのか? ヒント1 その島は日本の真ん中に位置する。 ヒント2 その島の岸辺に立てば360度に対岸を確認することが可能。 ??? 誰もがおかしいと思うはずだ。 まずは、島は国土の周辺に点在するもので、日本の真ん中に島などあるはずがないという反論。 そして、いかに複雑な地勢的条件(入り組んだ海岸線の傍とか、島の密集地とか)に位置していても、何処かに水平線は存在

          110.陸に浮かぶ島

          109.未知なる国へ

          2004.3.16 【連載小説109/260】 今、この瞬間。 小さな液晶画面を通じてこの文面に向かっている貴方は、新たなる時を迎えたといっていい。 「貴方」と記したのは、もちろん、この連載手記を読む全ての「貴方」だ。 そこには大きく分けて2種類の読者が存在するはずである。 まずは、太平洋の真ん中、ミクロネシアとポリネシアの中間海域に浮かぶトランスアイランドという小さな島に暮らす210人の移住者諸氏、すなわち僕の同胞。 そして、もう一方の読者。 そう、日本に暮らし

          109.未知なる国へ

          108.空飛ぶ博物館

          2004.3.9 【連載小説108/260】 チャンギ国際空港で出立前の静かな時間を過ごしている。 午前0時30分発の関西国際空港行きJAL便に充分なゆとりをもって22時に空港入りした。 改めて居心地の良い空港だと思う。 喧騒が常の国際空港であるにもかかわらず、ここでは時間がゆったりと流れている。 優れた観光国家シンガポールは、旅立つ者が最後にその身を委ねる空間にまで手を抜かないということなのだろう。 搭乗手続きを済ませた僕は、大きなミュージアムを見学するかのように

          108.空飛ぶ博物館

          107.動物園が博物館になる日

          2004.3.2 【連載小説107/260】 19時40分。 自然保護区の森が薄暮から闇夜へと移行する微妙な時間。 多数の見学者を乗せたトラムが滑り出すように動き出す。 シンガポールが世界に誇る観光アトラクション、ナイトサファリのスタートだ。 以前、日本の動物園で夜行性動物展示館なるスペースを訪れたことがある。 公営の動物園ゆえに17時閉園と決まっているから夜の見学ではない。 他の檻から離れて外光を遮断された建物内に人工的に再現された薄暗く狭いスペースがあり、数種の

          107.動物園が博物館になる日

          106.優れたミュージアム国家

          2004.2.23 【連載小説106/260】 博物館を訪ねるということは、極小の自己を到底かなわぬ歴史の重みの前にさらすことである。 開館と同時に先客のいない異国のミュージアムにひとり入り奥へと進む。 世紀を経たセピア色の人物写真の眼差し群がじっとこちらを観察している。 幾多の手垢にまみれた工芸品や民芸品の類が無言のうちに解せぬ言語で次々とメッセージを放ってくる。 窓のない密室に微風が吹き、頬を撫でたような気がする。 目を閉じると声が聞こえる。 「何者だ?」

          106.優れたミュージアム国家

          105.リトルドラゴンの不思議

          2004.2.17 【連載小説105/260】 60億人存在する地球上の人口。 それを幾つかのグループに分ける手法を考えてみよう。 まず誰もが国家という枠組みを思いつく。 が、ここでは国家そのものを論じたいので他の視点を求める。 大陸という物理的空間。 土地は人類を受け入れる器である。 ユーラシア大陸、南北米大陸、オセアニア大陸…といった大きな器から分類していけば人類のグルーピングは容易い。 次に民族。 国家建設に先立つのが人間集団としてのエスニックグループの存在

          105.リトルドラゴンの不思議

          104.21世紀発の古典文学

          2004.2.10 【連載小説104/260】 先週、東京で「大きくなり過ぎた島国」の編集会議に参加した後、翌日には日本を離れハワイへ戻った。 久しぶりの日本で、会いたい友人や訪ねたい所が他にありながらも3泊で慌しく旅立つたのは、マウイ島に立ち寄る予定があったからだ。 マウイといえば「ラハイナ・ヌーン」。 そう、僕が昨年10月に参加した太平洋を創作の舞台とする小説家の私的円卓会議である。 その参加者の面々は互いに匿名とし、開催日を事前に公開しないことがルールとなって

          104.21世紀発の古典文学

          103.渡り鳥が選ぶ島

          2004.2.3 【連載小説103/260】 島々のことを最もよく知るのは誰だろう? 今日の編集会議で話題になったそんな疑問に対して 「渡り鳥じゃないかな」 と僕は答えた。 学者や作家の名前が挙がる中、一同の笑いを集めた発言ではあったが、それには訳があった。 一昨日、5ヶ月ぶりに降り立った成田空港で大型旅客機の尾翼に止まる一羽の渡り鳥を見たのである。 季節と外見からしてカモメの類だったと思う。 東京湾の浅瀬には野鳥観察エリアもあるから、渡り鳥がいるのも不思議では

          103.渡り鳥が選ぶ島

          102.ポジティブな隣人

          2004.1.27 【連載小説102/260】 隣家に面白い男が越してきた。 僕が暮らすNEヴィレッジは、現在村民51名。 男女比は約6対4。 主に文筆業に携わる人や読書家、出版関連のSOHOワーカーといった人々で構成されている。 「一旅一冊運動」の結果完成した世界中から集まる名著の図書小屋も着実に質量が増え、静かな読書目当てのツーリストも安定して迎えており、文学がテーマの村としては予想以上に知的で洗練されたな空間になっている。 (「一旅一冊運動」の詳細は第55話を)

          102.ポジティブな隣人

          101.大きくなり過ぎた島国

          2004.1.20 【連載小説101/260】 少し大きめの地球儀が僕のデスク上にある。 多くを持たず可能な限りの身辺品をパソコン内のアプリケーションで代行させる僕も、こと辞書と地球儀に関してはリアルな実物を手放せないでいる。 革表紙の使い込んだ国語辞典は四半世紀の友人で、五十音別のページ頭なら目を瞑ってでも僅かな誤差で開くことができるし、無数にひかれたラインマーカーが「知の紀行録」のごとく私的思考と学習の痕跡を残している。 地球儀の方は10数年の付き合いになるだろう

          101.大きくなり過ぎた島国