見出し画像

「路上で歌うのもほどほどに in ドイツ」

世界一周443日目(9/14)

後ろ髪を引かれる思いだった。

ドルトムントの街から離れるのが。


僕はこういう首都よりも
一回りか、ふたまわり程小さい規模の
街の方が好きかもしれない。

首都特有の人ごみや、ごちゃちゃした感じは
最初のうちは楽しいけどすぐに疲れてしまう。

その点、ドルトムントは
普段はそこまでうるさくないけど、
サッカーの試合のある日は盛り上がるし、
カフェやらショッピングストリートだかが
一部に集まっているのも便利だなぁと思った。
街を歩き回らないで済む。

ここに住むという意味では、
また違って来るんだろうけどね。


次ぎの目的地はケルンだ。

世界史の資料集に必ずと言っていいほど、
「ケルン大聖堂」の写真があった。

あのとてつもなく大きな教会の写真。
確か高校の資料集にはライトアップされた
ケルン大聖堂の写真が載っていたような気がする。

『ドイツを旅するなら、
あの大聖堂をこの目で見ておきたい』
そう旅に出る前から考えていた。

公園でテントをたたむと、
友人が「風呂に入りてぇ~!」と言った。

画像2


僕はこの生活にだいぶ慣れてしまったけど、
(そして自分でも気づかないうちに
体臭がついてしまったらしい)

友人は初のヨーロッパ旅行で
いきなりの野宿生活だ。

日本でもこんなに長い期間風呂なしの
生活が続いたことはなかったんじゃないか?


ちなみに友人は大学生の時に
カナダとペルー/ボリビアを
それぞれ二週間づつ旅したことがある。

その時はもちろん宿はとっていたそうだ。

旅そのものは初めてってわけじゃないけど、
こんな貧乏旅をするのは初めて。

僕としては、手頃な個室トイレが
見つかったらすぐにでも髪を洗いたいんだけど、
さすがに日本からわざわざ会いにきてくれた
友人に洗面台で頭を洗うことを
強要することはできないでいた。

サービスエリアには
シャワーがついていることが分かったので、
今日見つかったら利用しようと思う。



ドルトムントの中央駅から地下鉄とバスに乗って、
ヒッチハイクポイントまで向かった。

画像2


ドイツは比較的、一般道から
ハイウェイ沿いのサービスエリアに
アクセスしやすいようだ。


フードチェーン店と併設した
サービスエリアが今回のヒッチハイク場所だ。

そしてここでもトイレでシャワーの
マークを見つけたので
店員さんにシャワールームの鍵を借りて、
一人ずつ交互にシャワーを浴びた。

シャワーの使用量は5ユーロだったけど、
僕たち二人がシャワーを使っても、
追加料金がかかることはなかった。

友人は一日に10回以上は
「お前、臭うなぁ」とイヤミのように
言ってくるので、バッチし体を洗い、
着ていた服も洗濯しておいた。

シャワーを浴びて、フードコート内の
テーブルで充電をしながらiPhoneを
いじくっていると友人がボソっと言った。


「言っちゃ悪いと思うんだけどさ、
やっぱ臭うよ」


気を遣ってるんだか
そうじゃないんだかわからないけど、
彼の言うには僕から

「外人の臭い」もしくは
「そろそろウチの犬も洗わなくちゃな」
って臭いがするらしい。

日本にいた時の僕は
臭いはしなかったと言っていた。

一年ぶりにドイツのブランデンブルグ門前で
再会した時に
『あ、臭うな』と思ったらしい。

いや、こういうさ、
体のディスアドバンテージ
みたいなことを僕はとやかく言いたくない。

足が短いだの、目が細いだの、
背が低いだのー、
ってすべて僕のことなんだけどさ…。

痛みを知っているからこそ、
『こういうこと言ったら、
相手は傷つくかもなぁ』
と思うことができる。

でも、言われないと分からないよね…。


おかげで最近、Wi-Fiが使えてヒマな時に
調べるワードは「体臭 改善」とかだ。

体を洗っても臭いが消えないってことは、
たぶん食生活だと思う。

日本人は欧米人に比べて体臭がないらしい。

それは日本人のDNAに由来するところもあれば、
日本食を食べているからだとも言われているそうだ。

ってー、日本でも臭っー、
香る人いるけどね。



そんな感じでサービスエリアで
シャワーを浴びてまったりしていると、
あっという間にお昼前になってしまった。

画像3


「ヒッチハイクしますかぁ~…」
「そうだね…」
っていうくらいのやる気のなさ。

こんなんで車に乗せてもらうことが
できるのだろうか?



サービスエリアの駐車場には先客がいた。

いかにも旅人っぽい
欧米人の女のが控えめに親指を立てていた。

年期の入ったバックパックと
くくりつけられたマットと寝袋。
ブーツカットのコットンパンツは
まさしく彼女だけのものだった。

僕たちとは行き先が反対方向だったので、
気を遣ってくれて場所を譲ってくれた。
ありがとう。


さー!なんてったってここは
ドルトムントだぜ?

しかも今、僕たちは
ボルシア・ドルトムントの
ユニフォームを着ている!
さぁ!僕たちを乗せておくれ!

徐々にテンションを上げて、
ヒッチハイクを開始したが、
「はいそれでは」みたいに
すぐには捕まらないかった。


場所を移ってくれた
バックパッカーの女のコは
僕たちより早く車を見つけて
その場から去っていった。

やっぱ女のコは有利だよなぁ。
危険も多そうだけどね。


二人旅最後のヒッチハイクは
30分ほどで成功した。

ご主人と奥さんが運転する車。

ケルンの中心地から少し離れた
ところまで乗せていってくれるらしい。

いつものように会話をするのは僕の役目だ。
(友人は英語が喋れないので寝ていた)

画像4





15時にはケルンに到着した。

画像5


なんだか今日は朝から遅いスタートで
頭がボヤボヤする。

降ろしてもらったガソリンスタンドで
コーヒーを飲んで、中心地へと向かうことに。

トラムで中心地まで行けそうだったが、
どのトラムに乗ればいいのか
分からないところはやっぱりドイツだ。

友人は近くにいた人に積極的に声をかけ、
どのトラムが中心地まで行くのかを
訊きだしてくれた。

前回の罰金のこともあるので、
しっかりとチケットを買って
トラムに乗り込んだ。

あいかわらずトラムは
無賃乗車できそうだなぁと思った。

画像6


街の中心地に着くと、
今日はマラソン大会が行われていたようだった。

大会もほとんど終わったばかりのようで、
公園ではさまざまな露店が出ていた。

画像8

ミニライブみたいなのも行われており、
地元のおっちゃんバンドみたいなのが
ボブ・マーリーをやっている。

なんだかケルンは
そこまで食べ物が高くないのかなぁ?

大きな菓子パンが
2ユーロで買えるのに少し驚いた。

画像7

あぁ、こういうのばっか
食べてるから臭うのかなぁ?

ここしばらくは「体臭ネタ」から
離れられそうにないや…。



僕たちは大聖堂のある方角に向かって
ショッピングストリートを抜けた。

日曜日のショッピングストリートは
ほとんど人がおらずゴーストタウンと
言ってもいいほどだった。

とりあえず
ケルン大聖堂へ行くのは明日にしようと、
ショッピングストリートが
二股に別れる地点でウダウダしていると、

友人は
「じゃあおれ、散歩行ってくるわ」
とバックパックを置いて
一人でどこかに行ってしまった。

僕はベンチに腰掛け、
巻きタバコを一本吸った。

画像9


街にはほんとうに誰もいない。

ただ、こういう寂れた場所でギターを弾いたら、
声がいい感じに響いて気持ちが
いいだろうなと思った。

友人のバックパックがある以上、
ここで待ってないといけない。
まぁ、時間もあるしいいだろ。

吸い終わった煙草を
足下に擦り付けて火を消した。


相変わらずヨーロッパの路上は
吸い殻があちこちに落ちている。

まぁ、郷にいってはなんてやらです。

吸い殻はごみ箱に捨てずに
そのままにしてしまった。


「さてとー、
人もいないけど、唄ってみるかな」

重い腰を持ち上げて、
チューニングを済ませて、
一曲唄った。

思った通り、誰もいない通りに
声が響いて気持ちよかった。


一曲唄い終わったと同時に、
警官二人組が僕の前にやって来て止まった。
男性、女性のツーマンセルだ。

別の方向を向いていたから、
近づいて来たことがわからなかった。

まぁ、ここではバスキングしちゃ
ダメだよっていういつものあれだろ。



「君、今ポイ捨てしただろ?
35ユーロ。罰金だ」


はあっっっっ!!??

画像10


「えっ?何言ってるんですか?
どれが僕の吸ったタバコだと言うんですか?
こんなに吸い殻が落ちているのに!」

「これだろ」

と言って、
一発で僕が吸っていた煙草を当てる警官。

「で、でもー、」

「ほらパスポート見せて。
日本かー。君の国ではどうかは知らないが。
ここはドイツだ。ドイツではこうなんだ。
35ユーロ(4,893yen)の
罰金を払ってもらうよ」

「えぇぇぇーーーーーー…」

「嫌ならいいよ?
署まで来てもらっても、
こちらとしては構わないよ?」

そう言って男性警官は
腰につけた手錠をちらつかせた。



僕はサブバッグの中から
35ユーロを取り出し、払うほかなかった。

警官は領収書を切って僕に渡した。

しっかり僕の名前が手書きで書かれている。


「ああ、それと、
バスキングのルールがあるんだ。
知っているかい?」

「…知りません」

「一時間のうちはじめの
30分はやっていいけど、
残りの30分はやってはいけない。
それと、続けて同じ場所でやるのもダメ。
200m以上離れること。
それと、病院と教会の近くはやってはダメ。
わかるね?」

そう街のルールを伝えると
彼らは去っていった。




ドイツで二度目の罰金。

もうどんだけドイツ経済の
発展に貢献してるんだよ、おれ?


アイツらずっとおれのこと
チェックしてたのか…。

『おい、アイツタバコ吸ってるぞ』

って僕がタバコ吸い終わるまで監視して、
バスキング始めてから声をかけるっていう。
罰金までのプロセス。

一応バスキング始めた時に辺りを見渡したけど、
警官の姿なんてどこにも見当たらなかったのにな。

一体どこから僕のことを監視してたんだろう?

画像17


一刻も罰金をくらった場所から離れたかったが、
友人がバックパックを置いて一人で
散歩なんぞに行ってしまった以上、
ここでアイツの帰りを待っていなくてはならなかった。

呑気に散歩から帰って来た友人に対して

『お前がバックパックを
押し付けなければ
僕は罰金くらうことなんて
なかったんだぞ!』

と言葉に出さずとも、
心の中で八つ当たりをした。

腹の虫がおさまらなかった僕は、
バスキングが可能になった時間ジャストに
バスキングをしたが、
30分で稼げたのはわずかに4ユーロくらい。

あぁーーーーー…35ユーロ。
マジ痛ぇ…。



ケルン大聖堂はもったいつけもしないで、
そこにどんと建っていた。

画像11

画像12

画像16


迫力はあるけど、僕が日本にいた頃に
イメージしていたものよりかは
いくぶん小さい気がした。

二人してカメラに
納まらないくらいの大きさの大聖堂に
「スゲェ~」を連発してた。

そんなケルン大聖堂だったが、
ど真ん前ではセロの二人組がバスキングしてるし、
さっきの警官は時間外にバスキングしていた
じいさんに罰金かましてたし、

てかなんだかんだ言って、
この街けっこうごみだらけで汚ないぞ?

画像13


友人が調べた情報に寄ると、
ケルン大聖堂は一応、現在は
世界遺産ということになっているが、
景観を損なう近隣開発から、
一度は世界遺産からはずれたらしい。

時間つぶしにスターバックスで2時間ほど作業し、
落ち込んだテンションを戻すために
今日はちょっとした贅沢をした。

まぁ、こういう時もあるよね。

画像15


ワインで気持ちよく酔っぱらうと、
僕たちはケルン大聖堂の見える川の対岸に
テントを張った。

ライトアップされたケルン大聖堂が
暗闇に浮かび上がった。

画像14


現在、自作キャンピングカー「モバイルハウス」で日本を旅しながら漫画製作を続けております。 サポートしていただけると僕とマトリョーシカさん(彼女)の食事がちょっとだけ豊かになります。 Kindleでも漫画を販売しておりますのでどうぞそちらもよろしくお願いします。