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「ベルリンの壁は思ったよりも感動しなかった in ドイツ」

世界一周446日目(9/17)

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ベルリンに来たからには
やっぱりベルリンの壁がみたい。

東西冷戦がどうのこうの、
背景知識もすっかり忘れてしまったし、
それにまつわる映画も弟のトシと一緒に観たけど、
あまり細部まで覚えていない。

情報収集を怠りがちな僕だが、
とりあえず見ておきたい。


ここはドイツ、首都ベルリン。
友人との旅も今日で最終日だ。
明日の便で彼は日本へ帰る。

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公園で目覚めテントをたたむと、
僕たちは朝ご飯も食べずに
ベルリンの壁へと向かった。

イーストサイドギャラリーというのを
僕は見てみたかった。

ピースフルなウォールペイントが
壁一面に描かれた写真を
ブログなどでよく見てきたからだ。

イーストサイドギャラリーは
公園から歩いて行ける距離にあった。

もうかれこれ13日も一緒に旅をしてきて、
しかも連日野宿だから、
朝は遠足の日の子供みたいに
テンションが上がらない。


「そいじゃ、行きますか」


どこか、観光ノルマを
達成しようとしているようにも思える。

あれ?「僕ってほんとうに
ベルリンの壁行きたいんだっけ?」
って感じ。分かるかな?

たぶん世の中には
そういう類いのものが沢山あると思う。

「観光地」や「有名スポット」という
名前がついているだけで、
そこに行かなくては
ならないような気がするのだ。

ベルリンの壁のアートは
見ておきたい!と思ったけどね。

やっぱり朝は砂糖を
たっぷり入れたコーヒーを飲んで、
血糖値を上げなくちゃダメだったんだと思う。

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黙々と朝のベルリンの街を歩く二人の日本人。

最近友人がよく口ずさむ定番ソングは
猿岩石が日本に帰国した時にリリースした曲だ。
藤井フミヤ作曲のミリオンヒットしたってヤツ。

僕は当時の猿岩石のことなんて
ちっとも覚えていない。

『あぁ、なんか海外で道着て
空手パフォーマンスしている芸人が
いたなぁ』ってくらい。

歌詞の中には
二人旅をする若者があてもなく旅する。
そんな歌だった。


ガソリンスタンドでトイレを借りた。

個室トイレだったけど、僕は頭を洗わずに、
Tシャツをもみ洗いするのに留めておいた。

そうすると外で待っている友人を
待たせなくちゃならない。
あぁ、今日で3日くら髪洗ってないなぁ…。

僕が先にトイレから出ると、
友人は家から閉め出しをくらった
子供みたいにして順番を待っていた。

もうテンションの低さが滲み出ていた。


別にトイレを待っている時に
テンション上げて待ってくれだなんて、
バカみたいなことは言わないけど、
『テンション低ぃ~~~…』ってのは一目で分かる。

ガソリンスタンドのおばちゃんに
トイレの鍵を返すと、再び僕らは
ベルリンの壁に向かって歩き始めた。
会話もあまりない。

相手もたぶん同じことを僕に対して
感じているんだろうけど、この
「テンションの低い人と一緒に行動する」
のって、居心地が悪い。

四六時中、ハイテンションのヤツと
一緒にいるのもそれはそれで
疲れるだろうけどね。



ベルリンの壁には最初の方だけにしか
僕が期待したクオリティの絵はなかった。

最寄り駅に対して
正面側に観光客がよく写真に収めるような
絵が描かれているんだけど、
裏面には近所の悪ガキが描いたような
落書きしか描かれていない。

ちょっとガッカリだ。


これがベルリンの壁じゃねえのかよ。

正面側の第三者から加えられた
落書きもヒドイものだった。

日本人アーティストの描いたであろう
ペイントもあったのだが、
ほんとうにどうでもいい落書きや
クソみたいなサインが描かれている。

くだらな過ぎる。

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これがみんなを巻き込んだアートならいいけどさ、
ここに自分の名前なんて書いて一体なんになるの?
何を示したいの?って感じ。

ベルリンの壁のすぐ目の前には、
ほとんど隙間も無く路上駐車されていた。

少し後ろに下がれば
ペイント全体がカメラに納まるのに、
おかげで変なアングルになってしまう。


絵を見ていて気づいたことは、
ほとんどの絵が比較的最近に
描かれたものだということだった。
2009年に描かれたものもあった。

きっと、時々アーティストを募り
絵を描き直すんだろうな。
一部の有名な絵は残しておいてね。

僕のベルリンの壁に対する
期待は見事に裏切られた。


ベルリンの壁は僕が生まれた
1989年に壊された壁だ。

小学校の校長室前のディスプレイに
壁の破片が展示されていたのを思い出した。

ベルリンの壁は平和の象徴でもあった。
これが壊されて世界はまたひとつになった。

僕の中ではそういうイメージだった。



「はぁ~…疲れた」

イーストサイドギャラリーの
終わりまで行った時に思わず口から漏れる。

まおはそれなりにベルリンの壁に
感動したようだが、僕はガッカリだ。

「あの有名な絵を見た!」って感じ。

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次の予定は友人が行きたかった
一年中クリスマスの装飾品が売られている
というお店だった。ここから電車に乗れば行ける。

とりあえず駅まで歩いた。

朝からご飯も食わずに行動だなんて、
僕のイライラは次第に募ってきた。

節約節約とか行っておきながら、
駅の売店で「もう、メシ喰おうぜ?」と
すぐさまサンドイッチを買った。

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「どれ喰う?」
と僕は友人に尋ねた。

彼が僕のよりも高い
サンドイッチを迷わず選んだ時は、
『貴様…!!!』と思った。

ここ数日、食費は僕持ちになっている。

友人が日本から持って来た3万円は
とっくに底をついていた。

彼が来る前は
『わざわざ日本から来てくれるから、
滞在費は全部おれが持つよー♪』

なんて調子のいいこと言ってたけど、

連日ビール飲んだり、
ファストフード食べたり、
今までストイックに節約していた
あの頃の自分はどこへやらだ。

野宿やヒッチハイクにつき合わせているけど、
僕なりに気を遣っている。

写真家のたまごのメグミさんも、
日本から友達が来た時は泊まっている
宿のグレードも少しばかし上げると言っていた意味が
ちょっと分かった気がした。

それにお腹減っているとダメだ。

小腹を満たすと大分気持ちもスッキリした。



クリスマスオーナメントが
売られているお店までスムーズ辿り着くと、
お店の近くのベンチでタバコを吹かした。

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街はいくらかひんやりとして、
辺りには落ち葉がある。
空を見上げて感じたことは
「秋」だった。

日本で何回もこの季節を経験した。

秋はいつも気づいた時にはいなくなっていた。

寒さに凍えるでもなく、
かと言って暑さに上着を脱ぐほどでもない。
風が服と上着のポケットに手を突っ込む。
確かに感じる秋の気配。

僕より一足先にお店に入った友人は、
クリスマス一色の店内に感動したようだった。

僕が「フ~ン」とか言っていると
「シミはこういうの好きじゃないかもね」と言った。

や、好きか嫌いかで言ったら好きだけどさ、
彼はけっこうなロマンチストなのだ。

店内で売られているものはけっこうな値段がした。

友人は持って来たクレジットカードが使えたので、
自分の好きな物が買えたようだ。



お店をあとにして僕たちは
プラプラと歩きだしたが、急に疲れを感じた。

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そんな僕に向こうも気を使ってくれたのか、
「どこかで昼寝でもすれば?」と提案してくれたので、
動物園前のベンチで一休みすることに。

なんだかんだで僕も
疲れが貯まっていたんだろう。

『今日を最終日に持ってきたくなかったな..』

友人に対してちょっと申し訳ない気持ちになった。



彼から起こされた時は一時間以上が経っていた。

「悪いね。昼寝につき合わせちゃって」

僕が寝ている間にどこか
ブラついててもいいよと言ったけど、
彼はずっと近くでスマートフォンをいじっていた。

荷物のことでわざわざ近くにいてくれたのだろう。

さすがにまた、寝ている間に
盗難だなんてしまらないからね。



「あ、帽子なくした…」

と彼は思い出したように言った。


「え?どこで?」

「ケルンからベルリン行きの
バスに乗った時は持ってたから、
きっとバスの中だ」

彼が被っていたパタニアの
迷彩柄の帽子がいつの間にか消えていた。

旅をしていると置き忘れってけっこう多い。

まだパタゴニア・ベルリン店が
閉まるまであと2時間ほどあったので、
メトロで向かうことにした。

今回はiPhoneのバッテリーもちゃんと
残っているのでお店までは迷わずに行くことができた。


店内には割とたくさん帽子が置いてあったが、
彼が日本で買った帽子はなかった。

迷彩柄ならあったけど、横がメッシュ。
こういう微妙なディテールの違いってけっこう気になる。

結局何も買わずに、
そのままご飯に行くことにした。

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友人のクレジットカードが
使えると分か、
僕は彼に食品を負担してもらうことを提案した。

今までの僕の気遣いなんてちっとも知らない様子で
彼はクレジットカードで食材を買うことを了承した。

だけど、周辺のお店はどこも全滅。

キャッシュのみで
クレジットカードなんて使えなかった。

結局は僕が食費を持つことに。

日本に帰ったらこの分は
返してもらうことにしよう笑。


今日はアウトドアで贅沢をすることに。

スーパーで売れ残りのパスタや
果物や野菜やパンやチーズ、
そしてワインを買った。

野宿場所にしている公園のカフェバーで
ビールをお互いに一瓶ずつ注文して、
テーブルの上に買ったばかりの食べ物を広げた。

ビール一瓶と安ワインで
僕はすっかり酔ってしまって、
ベンチで爆睡。
青春トークも全然盛り上がらなかった。


「そろそろテント立てようぜ?」

「うぇ…吐きそうだ…」

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現在、自作キャンピングカー「モバイルハウス」で日本を旅しながら漫画製作を続けております。 サポートしていただけると僕とマトリョーシカさん(彼女)の食事がちょっとだけ豊かになります。 Kindleでも漫画を販売しておりますのでどうぞそちらもよろしくお願いします。