世界一周４４７日目(9/18)

ゆっくりした朝のスタートだった。

テントをたたみ終えると、
パタゴニア・ベルリン店の
すぐ横にあるカフェでコーヒーを注文した。

コンセントを使いながら各々に作業をした。

僕が何度か足を運んだカフェだったが、
今日はどういうわけだかiPhone４SしかWi-Fiが使えず、
友人は僕のiPhoneでFacebookを覗いたりしたいた。

フライトの時間までまだまだある。

僕は書きたまった日記を少しでも
リアルタイムにおっつけようと、
ひたすらにキーボードを叩いた。

ひとつの日記を書くのに
だいたい１時間以上はかかる。

なんでたって僕はいつもこんな
長ったらしい日記を書くのだろうと思う。

でも、これが僕のスタイルなのだ。

できるだけ起こったことは書く。
できるだけ思ったこと、感じたことは書く。

その方がリアルだし、
あとで自分が読み返した時も、
その時自分がどうだったのかを
鮮明に思い出すことができるから。

友人はどこかにフラリと行ってしまった。

たぶん散歩だろ。

僕も気にせずに日記を書き続ける。

しばらくて彼が帰ってきた。

「はい。プレゼント。Tシャツ」

「え???はっ!!??
えぇぇぇええええ～～～～!!!」

パタゴニアの袋から出て来たのはTシャツ。
ネイビーとグレー。

「どっちがいい？」

「もう紺色は持ってるからグレーで」

「あ～、おれそっちがよかったのになぁ」

「だって持ってるんだもん」

「いや、シミがネイビー持ってるって
知ってたけどさ、サイズあるの
これしかなかったんだよ。
ほら、着てこいよ」

トイレで友人が買ってくれたばかりの
Tシャツに着替えた。

彼は日本円を除いて
お金を持ってないから、
クレジットカードで買ったんだろう。
着替え終わった僕に対して
彼はこう言った。

「やっぱり臭うな(笑)」

「うるせえ」

「おれもお返しするよ。
帽子無くしちゃったろ？どれがいい？」

僕たちは再びパタゴニアへ向かった。

なんだかんだで三日間連続だ。
どんだけパタゴニア好きなんだよって話。

「シミが選んでくれたのなら
どれでもいいよ」

「あっそう？
これなんていいんじゃない？」

この二週間、

『わざわざ日本から
高い金払って来てくれたから』
と食費や交通費、
バスキングのアガリですらシェアして、
半ば彼を養う状況になっていたが、
こういうことなら気持ちよくお金が使えた。

なんだかんだで、
今自分の身の回りにある物の
ほとんどが新しかった。

またそれぞれの
旅が始まるのだ。

空港まではバスで向かった。

一度、中央駅まで向かい、
そこから空港行きのバスに乗った。

チェックインを済ませて、
さっきパタゴニアで撮った写真を
パタゴニア・ベルリン店の
Facebookページに投稿する。

すぐに返事が返って来た。

「君たちに会えてよかったよ。よい旅を！」
そう返信が返ってきた。

やっぱりパタゴニアはいいお店だ。

ネットの繋がるバーガー・キング前で
作業をしているとあっというまに一時間が過ぎた。

友人の乗る飛行機の搭乗受付時間になった。
僕も彼と一緒に列に並んだ。

不思議と別れの寂しさのような
ものは感じなかった。

世界中のどこにいたって
Wi-Fiさえあればいつでも連絡は取れるし、
自分たちがやるべきことも分かっている。

僕は旅をしながら絵を描き、
彼は新しい就職先で
新しい仲間と活動が始まる。

お互いの夢に向かって
進んでいくことには間違いない。

「じゃあな」

「わざわざ会いに
来てくれてありがとな」

ハグをして別れた。

彼は搭乗ゲートの向こうに
スッと消えていった。

また一人旅が始まる。

見たこともない地へ、
一度も会ったこともない人に会いに。

そう考えただけでじんわりと汗をかいた。

まだまだ行きたい場所は山ほどある。

僕は明日の朝の飛行機で
スウェーデンへ向かう。

今日は空港で一晩を過ごす予定だ。

空港はほんとうに小さかった。

ベルリンには新しい空港ができて、
この空港は役目を終えるらしい。

一通り空港内をうろつくと、
コンセントを見つけて、
そこでひたすらに日記を書いた。

僕の目の前をスーツケースを
転がした人たちがせわしく行き交った。

ここから別の場所へ行く人、
ここへ帰ってきた人、
誰かを待っている人、
ここで働いている人。

それぞれに目的を
持った人たちがここにはいる。

僕は僕の目的地へ。

iPhotoに入れた写真を見返した。

僕たち二人はほんとうに
楽しそうな笑顔をしていた。

最後の方は疲れが溜まって、
旅が楽しめていないようにも感じたけど、
全然そんなことはなかった。

一ヶ月くらいに感じた２週間。

やっぱりアイツと旅して正解だった。

おれと旅をしてくれてありがとう。

日本で頑張れ。おれも応援してるから。

この日は寝ないでずっと作業をしていた。