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「タテ型コンテンツ」が流行中?新しい映像の表現方法について

最近見たNHKのクローズアップ現代という番組で、「漫画もドラマも!?“タテ型コンテンツ”が大流行!」という内容が紹介されていました。

僕は夕食を食べながら何気なくその番組を見ていたのですが、意外にもその内容が興味深かったのでちゃんと見ることにし、ついでにその内容を記事にしてみました。


この「タテ型コンテンツ」というのはいわゆるスマホのことです。パソコンやテレビなど、スマホ以前のデバイスは全て「横長」でした。それらとは違い、スマホは基本縦向きで使うので、画面の形は「縦長」です。スマホは今や若者のみならず、全世代の人に普及しています。そうした中で、スマホ特有の「縦長画面」も注目されるようになってきました。

ではそんな「縦長画面」、具体的にはどんなメリットや特徴があるのでしょうか。その特徴は大きく分けると「受け手が画面に集中しやすくなること」と「余計な情報がカットされること」の2つです。


まず1つめの「受け手が画面に集中しやすくなること」について。

番組内での解説によると、人間の視野というのは200度あるそうなのですが、集中して見ることのできる範囲(これを有効視野と言います)はたったの30度しか無いそうです。ですので横長の画面を見るときは、狭い有効視野をカバーするために何度も視点を移動させないといけません。実際に番組内で行われていた実験でも、被験者は全員、横長の画面を見るときに視点を何度も動かしていました。

それに比べ縦長の画面(特にスマホ)では、横幅が狭いのでその全てが有効視野内に収まります。そのため視点を移動する必要がなく、目の前の画面に集中することが容易となるのです。


続いて2つめの「余計な情報がカットされること」について。

横長の画面では、多くのものが映るため情報が分散しがちになってしまうという傾向があります。さらに先程の有効視野の話も相まって、写したいものに集中させるということが難しくなってしまいます。

しかし縦長の画面では、そうした余計な情報をカットすることができます。そのわかりやすい例が、アパレル会社の新作アイテムを紹介する動画です。

ファッションモデルに紹介したい服を着させ、その様子を動画に撮るというものですが、縦長にすることでモデルの全身を写すことができ、それ以外の物はほとんど映らなくなります。そうすることで、顧客により商品のイメージを持たせやすくしているのです。番組ではとある会社がこの手法を使ってみたところ、売り上げが30%近く伸びたという話が紹介されていました。


またこれとは別に縦長の画面で撮影を行うことで、あたかも自分がその場所にいるかのような感覚が味わえるといった利点もあります。縦画面は自分の有効視野と近い横幅のため、映像の撮影者の視点と自分の視点を重ね合わせることができ、より臨場感が生まれるのです。

物件の内装を映像で紹介する会社の例が、ここでは挙げられていました。内装の映像や写真は、一般的には横長で撮られます。横長にすることで内装全体を写すことができますし、家の間取りなども把握しやすくなるからです。

ですが縦長の映像では、内装や間取りなどの全体を写すことは難しいです。その代わりに主観視点での撮影を行うことができ、実際に住んだときの感覚や、生活の様子を顧客に想像させやすくすることができます。この会社のある社員はそれを、「ライブ感」と表現していました。これは横長の画面にはない、縦長の画面特有の魅力です。


今まで縦長の画面の良いところを紹介してきました。しかし縦長の画面にも欠点はあります。それは横長の画面より狭いため、少ししか情報を載せることができないということと、(横長の画面より)見る側が集中力を使うため、長い動画には向かないということの2つです。

つまり縦長の画面向きの動画は、あまり情報量がなく、かつ短い動画なのです。この文章をみて何か気づきましたか?そう、これは完全にSNSに多くあげられている動画の特徴なのです。

TikTokやTwitter、最近はYoutubeのShortなどにあげられている動画のほとんどは、縦長、少ない情報量、短い時間、この3つの要素を満たしています。Z世代と呼ばれる人やSNSユーザーに流行しているのは、こうした手軽で短い動画なのです。


このような動画スタイルは忙しい現代人特有のものなのでしょうが、僕はあまり良いとは思っていません。短い動画では、人気をとるためにインパクトや見た目ばかりが重視され、扱う内容も誰にでもわかるような簡単なものばかり、言ってしまえば知性の低いものばかりになりがちです。

ある程度のまとまった情報を得たり、何かを学んだりするのにこうしたコンテンツは向いていません。こうしたコンテンツが溢れかえれば人々の意識は少しずつ、情報を得るということから、情報を”消費”するという方向にむかっていきます。

あらゆる事件や出来事はエンタメに成り下がり、まるで使い捨て商品のように情報が扱われ、古い情報からどんどん新しい情報へと、めまぐるしく置き換わっていきます。1つの情報をゆっくり吟味している時間なんてほとんどありません。人々はまるで麻薬中毒者のように、日々使いものにならない情報を摂取し、時間を浪費していくのです。また困ったことに、これら価値のない情報は無限に供給され続けます。


確かにタテ型コンテンツには、それまでの横画面には無かった多くの魅力があります。ですがその多くはコンテンツを直感的なものにし、人々の考える力を奪いかねないものです。

こうした流れにのまれるよう、私たちは一度立ち止まり、改めて情報との付き合い方について考える必要がありそうです。

そんな素晴らしい「タテ型コンテンツ」の発展を願って、本記事を締めさせていただきます。



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