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山形の姥神をめぐる冒険 #19

【水方不動尊 参道】山形市  2023年11月

 姥神めぐりを敢行するにあたり、貴重な資料になっている鹿間廣治氏の『奪衣婆 山形のうば神』によれば、「ここにお参りに来た人の何人に一人が奪衣婆がいることに気づくのだろうか」と、この不動尊の姥神の場所がわかりにくいことを伝えている。
 不動尊に着いたのは、秋の陽も陰り始めた頃だった。ゲームめいた変な闘志がわく。
姥神、きっと見つけてみせる!

 今までめぐってきた姥神のいる場所のパターンを思い返し、推理をしたがやはり難航した。参道を注意深く探して歩く。薮の中に派手な赤や黄色の菓子袋が捨てられている。右手には池があり、不動尊から流れてきた水の流れがある。そうして歩くうちに、本殿の不動尊に行き着いてしまった。そこにある苔むした石像のあれかこれかと見て回るがいない。もう一度参道を引き返すことにした。
 参道沿いの小高い崖で、目立たぬように通る人をチェックできるような場所。
そう思いながら歩くと崖側に少し上に上がっていく小道を見つけた。そこを進むと仄暗い木々の中に座っている姥神がいた。

 目も鼻も口も大きい。でっぷりとしたお腹も立派だ。明るくて大らかそうな姥様だな、と感じたが彼女と同じ高さの目線で参道を見下ろした時、ドキリとした。この位置からは相手に気づかれずに参道を通る人の姿が丸見えなのだ。さっき自分がキョロキョロしながら通った姿もバッチリ見られていたはず。そして、もっとドキリとしたのは、この真下にあの目立つ菓子袋(ポテトチップスだったか)が捨てられていたのだった。

 よく山林で不法投棄を防止する看板を見かける。「だれかが見ている!ゴミを捨てるな」と黒い目玉のイラストのあるあれである。確かに誰かが見ている。それが姥神だったりもすることもあるのだね。
くれぐれも、ご用心。

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