引退競走馬の再就職先は多くない現実

引退競走馬のセカンドキャリア・サードキャリアは、よく話題になる。だが、まだまだ僕たちはその本質を知らないのではないだろうか。

そして、この記事を通して何が言いたいか?

それは、もっと視野を広く持って欲しいということ。サラブレッドはこの世に産まれた時から競争で、優勝劣敗ゆうしょうれっぱいの世界だということ。そして、引退競走馬が活躍出来る場所というのは現実問題として多くないこと。馬肉としての文化があること。他にも色々ありますが、記事のなかで触れていきます。

・引退競走馬が輝ける場所不足

引退した競走馬が、セカンドキャリアを歩むにあたって何が必要か?と言われたら、その馬を上手く使える環境が必要だと僕は考えます。
あくまで持論ですが、サラブレッドは犬や猫と同じように、ペットとして扱うことは出来ないと考えています。少なくとも、首都圏におけるごく一般的な家庭でサラブレッドを飼うことは出来ない。
だからこそ、何かで「馬を使う」環境じゃなければ、引退競走馬を飼育するというのは困難でしょう。
そして、この「馬を使う」場所がどんどん減っていってるのが今の時代。
流鏑馬やぶさめ等の神事しんじで馬が使われるのも、今では乗馬クラブ等からの貸し出しに頼っていたりする訳で「家で馬を飼う」というのは、ほぼ無くなっているのが現実。

僕は、引退競走馬をリトレーニングしてある程度の人なら乗れるようにするという取り組みを否定するつもりはありません。
ただ、活躍の場がさほど多くないという現実と、乗馬も流行っている訳ではないのに、リトレーニングした馬をドンドン乗馬クラブへ流しているということは、乗馬クラブからドンドン出ていく馬もいると考えるのが自然。それを考えたときに「何のためにリトレーニングをするの?」と、思ってしまう。
競馬場で走らなくなった馬を追い出して新しい馬を入れるように、乗馬クラブで使えなくなった馬を出して、新しい馬を入れているのが現実でしょう。
結局のところ、リトレーニングだ引退馬支援だと言ったところで、やってることは先送り。単に、肉にされるのが早いか遅いかの違いだと考えます。

そして、乗馬用にリトレーニングされた引退競走馬の価値と、家畜市場で取り引きされるサラブレッドの価値には、ほとんど差がない。これが何を示すか?と言えば、タダで貰って来た引退競走馬を3か月程度でリトレーニング出来て50万円で買い手が付くならば事業として成り立つかもしれないけれど、現実問題として短期間でリトレーニングが完了する馬は3割いたらいい方だろう。
※ この場合「完了」のラインをどこに設定するか?というので話は変わる。

10頭貰って3頭はリトレーニング出来たので売り物になります。これだと儲けはそこまで出ないかもしれないが、事業としてはやっていけるラインにはあると思います。
問題は残りの7頭。これをリトレーニングするのはまだ時間かかります。こうなった時にどうするか?
正直、これらの馬を手放す選択肢があってもいいと思う。出来る限りのことはやりましたが、乗馬に向いてないので売却しました。と「言っていいのならば」だが。
そうは出来ない事情もあるだろう。どうしても外野は思ってしまう。「タダで貰った馬を売るってどういうことだ!」となるのは目に見えている。

だからこそ、支援を求めて赤字を補填ほてんしながら、リトレーニングを続けることになる。これが、引退競走馬におけるリトレーニングの現実問題。
リトレーニング期間を3ヶ月、そして引退競走馬を無償で譲り受けるという条件でも、こんな計算になってしまう。
あくまで僕の考えですが、上記の理由で、リトレーニングして売却するという仕組みで儲けを出そうとするのは無理がある。うまく行かない。

その原因は「今の日本で馬を使う文化が無くなっているから」と考えます。だから、リトレーニングして付加価値を付けたとしても、乗馬としての取引価格は高くない現実がある。付加価値が不足している訳じゃなく、馬が必要とされる文化がないことを問題視しなければ、リトレーニングしたところで意味がないと考える。
もっといえば、リトレーニングしたからって言ってもどんどん出される馬がいる訳だから、数年後に出されるかもしれない訳で、それは果たして馬のためなのか?という話。


・馬肉食文化

この話題については、記事にもしているので添付しておく。

ここまで散々触れてきたが、引退競走馬が必要とされる場所は多くないこと。そして馬肉としての需要があることについて、考えなければならない。

全ての引退競走馬にセカンドキャリアを…なんてのは出来るわけがない。出来るわけがないからこそ、どこで線引きをするか?ただ、その線引きを決めてしまうと、それ以外の馬はどうでもいいのか!と言われてしまうのが現実だろう。
だからこそ、引退競走馬に関する取り組みは進まない。重賞競走の勝ち馬は養老においてのみ補助金が出るけれどその額も雀の涙ほどだし、養老においてのみ補助金が出る訳だから、例えばまだ10歳前後で乗馬として使えるから。といって使っていたら補助金は降りない。そして、補助金を受け取るためには展示の義務がある。個人で引き取ってやれることにも限度があるだろう。
取り組みが進まないのはこういう現実もあるからだと思っている。

そして、馬肉。サラブレッドも馬肉になるというのは、僕が記事にして触れてきたことでもある。
どうしても切り離して考えることは出来ない課題で、全ての引退競走馬がセカンドキャリアを歩むことになった場合、馬肉関係の業者は死活問題におちいる。記事にしてまとめている通り、馬肉の国内生産量は国内需要の約半分で1万頭。その中にサラブレッドは半分ほど含まれているという独自の計算式は記事にも記載している。

言ってしまえば、これも「セカンドキャリア」としての1つだと思う。だが、これを表では誰も言えない。皆、分かっているはずだけど言えないからこそ、無駄なことをしている。

・伝えたいこと

僕は、包み隠さず本当のことを知って貰いたいからこそ馬肉の件も記事にして書いてきたという自負がある。だからこそ、引退競走馬が使われる場所も多くないのを知っているはずで、リトレーニングする馬を増やすより、まずは馬が必要とされる場所、すなわち需要を増やして、引退競走馬の価値を上げることが、引退競走馬における取り組みにおいて、いちばん必要なことだと感じている。
現状、誰もこれはやっていない。やっていたとしても大きなムーヴメントにはなっていない。要するに、引退競走馬のセカンドキャリアという出口は狭いのに、引退競走馬の供給は多い訳だから、まずは出口を広げるために活動しなければならないのに、それをせずにリトレーニングをやったところで、根本的な解決になっていないというのが現実だと思っている。
そして、新たに馬が使われる文化というのは作れないだろう。だからセカンドキャリアのなかに、食肉という分類をしてそれを周知させる。絶対的な反対も当然あるだろう。だが、嘘をつくよりはマシだ。
その中で、カネを出して繋養する人がいるならそれはそれだし、リトレーニングをやるのも自由。その代わり、食肉になることを否定するなよと。特に動物愛護団体。

こんな感じでこの記事を締め括りたい。


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