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投手のランニングメニュー

前回もお話ししたように、私がオフシーズンに投手にお勧めするランニングメニューは、常に全力で走る短距離走がメインです。特に、多くの研究で裏付けられている 30m走のタイムとスイングスピード、ボール速度と高い相関性があることから、 この30m走を軸に考えます。

練習の休み明けは、この30m走の新記録を狙う目的で5〜8本、通常は15〜20本行います。経験上、これ以上本数を増やすと一本一本の質が落ちてきます。ただ単 に30mを走ればパフォーマンスが向上するのではなく、30mのタイムを向上させる ことによって成されます。従って常に100%で走ることが大切です。90%以下で走るとタイムの向上は期待出来ないと言われています。

基本的にこの30mを軸にするのですが、時に10m、20mと距離を短くし、その分、 量、つまり本数を増やして行ってもらっています。また逆に本数を減らして、 50mも行います。身体にスピードを付ける目的で行う場合、インターバルはしっかり取り、毎回ほぼリフレッシュした状態で走ることも大切です。

前回からの話をまとめると、持久力向上のランニングは不必要か?思う方もおられるか、と思います。これに関しては、答えは「いいえ」で、ある程度は必要だと言えます。最優先すべきが速筋繊維に刺激を入れる筋トレ、短距離ダッシュではありますが、投手の場合は、心肺持久力や筋持久力も大切になるのです。実際 投手はマウンドに上がると、心拍数が150拍/分位まで上がり、ピンチになるともっと上がります。この際、持久力が無ければ試合後半にパフォーマンスが低下し、ケガのリスクも高まります。

また、新しい技術を身に付けるには、その身に付けたい動きに対して最高の集中 (質)で、気の遠くなる程反復(量)することで、いずれその動きが自動化される、つまり無意識に出来るようになるのです。すぐ疲れてしまうようであれば、 集中力は早く低下し、反復量も減ります。なので、何度も言いますが、あくまで瞬発力、パワーをメインとし、そして、最低限の持久力を養う必要があるのです。

そこで、その方法が大切です。サッカーやバスケットボールなど他の競技の多くは、常に激しく動いており、そしてプレーに絡むと、更に激しく動かなければなりません。プレーが止まるラグビーでも、スクラムなど最大の力を長い時間発揮しなければならない場面が多々あります。

しかし、野球ばどうでしょうか?投手で言えば全身を使って全力でボールを約2〜3秒で投げます。全力ではありますが、負荷の軽いボールを扱い一瞬で終わります。そして最大15秒のインターバル(ほぼレスト)の状態で、1イニング平均15球繰り返します。そして、攻撃に移ると、ベンチに座り完全休養で出来ます。

野手も打席には4回くらい立ち、全打席4回スイングしたとしても、一試合16スイ ング、4打席ともゴロを打った場合、全力で27.431mを4本、走者として塁に出るのは良くて3割、そして、打球を追う場合、内野手は速い打球を短い距離で追う、外野手は打球を追う場合、走る距離は長いが守備機会は内野手より少ないと言えます。そう考えると野手も一回一回の出力や反応を上げることが最優先ということが理解出来ます。

そう考えると、野球選手の持久力を付けるためのランニングメニューは「瞬発型持久力」を養うべきなのです。この瞬発型持久力とは、私の造語で専門的にはありません。これは、短い距離を全力で走り、同じインターバルでそのベストタイムが本数をこなしてもなかなか落ちてこないことを言います。トレーニングの成果として評価する時、例えば、一ヶ月前までベストタイムが10本目から落ちてきたが、今は 15本目から落ちてきた。と、なれば、これは、瞬発型持久力が向上したと言えるのです。

それでは次回は私が大学や社会人野球で行っている、または個人的にプロ野球選 手やコーチにアドバイスしている、実際のランニングプログラムをお伝え致します。


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