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2021年の年間ベストと備忘録

久しぶりに備忘録を兼ねて年間ベストを記す。例年よりも音楽を聴いていないので中身については保証しないし、時間の都合上一筆書きでいくので、普段の原稿の5000倍乱文になってしまいそう。(全体的に敬称略です)

・総論

国内外の音楽を聴いていたものの、今年はフォローできている範囲が狭かったのか、欧米の曲で突き抜けていいというものが数曲を除いてなかったような気がする。
あと、10曲を並べたとき、プライベート方面のイベント中心に、今年はあまり調子がよくなかったのかも……と思わされた。以下、年間ベスト。

・女王蜂「夜天」

構成も音もシンプルな楽曲だが、これを2021年は何度聴いたことか。アヴちゃんの2つの声色が切り替わるタイミングーー1番サビ終わりの〈宿る〉に込められた殻をブチ破る感覚が、世間や自分の閉塞感を壊してくれる気がして、行き詰まった時やドン底の時にグッと持ち上げるブースターにもなってくれた。
最近は歌詞のひとつ取っても、いまの感覚っぽくないものに触れるとウッとなって距離をとってしまうのだが、この曲の「みんな」に語りかけるのではなく、「一人ひとり」の孤独に語りかけつつ、しかし適度な距離もあるような温度感が心地よかった。

あと、完全に後付けだけど『FGO』第2部 第6章「妖精円卓領域 アヴァロン・ル・フェ 星の生まれる刻」における自分のなかでの裏テーマ曲でもある。わかる人にしかわからないであろう、戴冠式以降のオベロン感。

・Porter Robinson「Look at the Sky」

Porterが昨年、緊急事態宣言真っ只中のオンラインフェス『Secret Sky Music Festival』で見せてくれた最高のDJで聴いて以降、ずっとリリースを待ち望んでいた楽曲。煌びやかなメロディの上に乗る、希望はあるがどこか陰鬱な歌詞、来年こそはという気持ちを2020年末から抱えながら駆け抜けた2021年のやりきれない感じと、テック×音楽で今年一番よかった体験ともいえる『Secret Sky』の思い出が重なって、自分のなかでは「夜天」と並ぶ今年のテーマ曲だった。

・TAKU INOUE & 星街すいせい「3時12分」

インターネット音楽が流れるクラブのフロアに居場所を見つけていた自分も、2018年末に長男が産まれて以降は足を運ぶ頻度が少なくなり、2020年以降のコロナと次男の誕生もあって、2021年は一度も足を踏み入れないまま終わってしまいそうだ。あんなに思い出を作った新木場のagehaも、遊びにいけないままお別れを迎えることになる。「3時12分」を聴いたとき、ピークタイムが終わって酔い潰れる人、アガり続ける人、端のほうで始まる浅かったり深かったりする人生の話、翌朝の仕事や生活に馳せる想い、始発まで近くのファミレスや中華屋に入ってもうひと呑みするかどうか迷って、結局7時くらいまで居座ったあとに見る朝の街の光景、そのすべてがフラッシュバックした。筋金入りのイノタクファンとして、待ちに待ったソロ名義でのメジャーデビューに歓喜もしつつ、この曲は自分のなかでも特別なものになった。最近はバーチャルタレント×クラブミュージック界隈が専門領域になりつつあるので、星街すいせいの起用も素晴らしいと思った。

ここから下は順不同。

・Rain Drops「エンターテイナー」

星街すいせいからの流れでまずはこの曲を。バーチャルタレント(自分はVTuber・Vライバー・VSingerの領域全てを指す言葉としてこれを使う)たちのメジャーデビューや楽曲リリースがより盛んになった2021年においては、名曲と呼んでもよいものが数多く存在するのだが、さまざまな文脈などを踏まえたうえで、個人的にポップスとしての到達点はこの曲だと思う。じん×堀江晶太による楽曲は、6人の個性を活かすようにバラバラなジャンルの集合体で成り立ちつつ、最高にキャッチーで気持ちいい駆け上がり方をするサビのメロディが特徴的。いまの時代における“エンターテイナー”の代表格であるバーチャルタレントのグループがこの曲を歌う意味は大きいし、多様な属性・バラバラな個性の6人が集まって活動をした延長線上にできた曲としての意義も感じる。

・宝鐘マリン「Unison」

同じ流れで。あまりにも複雑怪奇な構成は、楽曲の構成・構造フェチとして愛さずにはいられなかった。Yunomi楽曲のファンとしても、彼の新たな扉を開いた一曲のように感じる。これがポップスとして成立するシーン、普通にすごくない? 89秒のキャッチーさが求められるアニソンや、プロデューサーが好き放題できるキャラソンも、それはそれで豊かなジャンルだとは思うが、この曲がここまでリーチするいまのバーチャルタレントシーンには、新たな音楽シーンとしての可能性を感じずにはいられないし、できればこれが濁らないまま2022年以降も良曲を次々にリリースしてほしい。

・aespa「Next Lebel」

バーチャルシーンという意味では、aespaの活躍も自分にとって面白いと思えるものの一つだった。K-POPシーンはあらゆる面で日本の数歩先を進んでいるが、フォトリアルなバーチャルアーティストを手がけるだけでなく、リアルな活動とリンクさせ、マルチバースでやっていくというのは、今後数年の芸能・音楽シーンにおいて超重要な試金石になるかもしれない。そんな彼女たちがある種の宣戦布告をしている楽曲として、この曲を推すことにした。

・宇多田ヒカル「PINK BLOOD」

A. G. Cookが共同プロデュースした『シン・エヴァ』主題歌の「One Last Kiss」も良かったが、どんどんHIPHOP的になっていくいまの宇多田ヒカルの才能が爆発している楽曲。今年読んだベストインタビューのひとつである、つやちゃんによるビルボードジャパンでの宇多田ヒカルインタビューが良かったのも影響しているのかもしれない。

・HXRY「safe2say」

シカゴのベッドルームR&Bシンガー兼プロデューサー・HXRYのデビューアルバムから1曲。8月リリースの作品で、夏の終わりのチルで退廃的な世間や自分のムードとこの作品が異様にマッチして以降、繰り返し聴いたアルバムの一つ。構成もメロディーもベタかもしれないが、音の滲ませ方と歌声にはどこか2nd以降のJames Blake的なものを感じた。

・YOASOBI「もう少しだけ」

AyaseをボカロP時代から知っていたというだけの話なのですが、実はYOASOBIはかなり早い段階から好きだったりする。

昨年以降の活躍は誰もが知るところであり、今年も「怪物」や「三原色」、「群青」とヒット曲を数多く出しているが、個人的になぜかツボだったのがこの曲。全体の構成などが特段ズバ抜けて良いというわけではないのだが、2番Aメロ、〈自分は「いらない」存在? なんて考える朝に〉のコード感とメロディーの運び方、ikuraの音の取り方とボーカルの転がし方が自分の琴線に触れまくった。ちなみに自分のその琴線はビーイング的なものーー織田哲郎的でありGARNET CROW的なものに起因しているので、理解者はおそらく少ない。そういえば今年はGARNET CROWのサブスク解禁に歓喜して「GARNET CROWと渋谷系とネオアコとギターポップとなんか色々」というプレイリストを作ったりもした。

・Mom「心が壊れそう」

ここまでコンスタントにアルバムを出しながら、コロコロ毛色が変わりつつ、それでもそれぞれが良い作品というのはまさに才能の賜物だろう。良曲揃いのアルバムにおいてもこの曲を選んだのは、おそらくタイトル通りの精神状態に近い、もしくはそれをオーバーフローしている日々があったから。静かに怒りながら踏ん張れたのはこの曲のおかげ。

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そのほか、2021年良かったコンテンツとか

・『#むかいの喋り方』
ずっと聴いてるラジオだが、今年は特に刺さりまくった。冒頭1時間のフリートークが自分のなかの陰湿な部分を絶妙にくすぐってくる、いま一番欠かせないラジオ番組。

・『流れの中で インターネット時代のアート』(ボリス・グロイス)
VRChatも含めたインターネット時代のアートや現代アートについての的確な批評といえる一冊。NFTなどの概念についても、概ねこの本の延長線上で語れるのではないかと思う。

・『Fate/Grand Order』第2部 第6章「妖精円卓領域 アヴァロン・ル・フェ 星の生まれる刻」
ここに至るまでに費やさなければいけないリソースがえげつないので、あまりこれから始めてくれと言いづらいものではあるが、2021年に奈須きのこが書いたシナリオは、いまのSNSやインターネット、そして社会を切れ味鋭く描いたものであった。そのBGMとしてあった芳賀敬太の美しすぎる雄弁な音楽も含め、この作品をやり続けて良かったと改めて感じた章。

・『VRChat』
外に出れない&夜中の時間が少ししか確保できないということもあり、とにかく隙間時間でダイブしまくった空間。バーチャルクラブをはじめ、自分のもう一つの人格ができるくらいには入り込んだ気がする。未来はここにあるというよりも、今がここにあると思う。

・『Arcane』
『LoL』の文脈を知らなくても楽しめる、アニメとしての完成度の高さに驚いた。こんな領域まで韓国コンテンツが先行していることを、日本のゲーム・アニメ界隈の人が認識できているのだろうか。

・『Inscryption』
一番良かったゲームは?と聞かれるとこれを挙げるくらい良かった。詳しくはJiniさんの記事を読んでもらえれば。

・『Anker Nano II 45W』
これ1台でスマホもMacも充電できるため、荷物が圧倒的に軽くなった“神の充電器”。


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