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4年ぶりの朝霧JAMに行ってみて思ったこと

2019年は台風直撃で中止。2020年、2021年はコロナによる中止。開催はなんと4年ぶりになる。例年通り、10月の三連休におこなわれた。

筆者は2003年から連続で参加し続けている。このフェスの魅力は、なんといってもそのロケーションにある。
富士山を最大級に大きく仰ぎ、秋晴れのもと、仲間たちとキャンプ。
運営会社がフジロックと同じSMASHだということもあり、出演するアーティストも素晴らしい。

私自信、大好きなフェスのひとつだ。

で、今年の率直な感想。
す、空いている!
土曜日午前中、毎年繰り広げられるテントの場所取り争奪戦。だーれも取り合わない。
テントがびっしりと貼りつめられ、歩くことが困難になるほどの密度を誇る例年。今年はそれぞれのグループごと、たっぷりスペースを確保しながら設営することができた。ステージ前のAサイトも土曜の夕方でもまだスペースは空いていたし、私たちが設営したBサイトも広大なスペースが空いていた。私にとっても初めての体験で、正直とても驚いた。快適さを楽しむより、少し不安にすらなった。空白の4年で、こんなに需要のないフェスになってしまったのかと。悲しくなった。同行したキャンプ慣れした友人は、普段の土日の方が混んでいるくらいだ、と言った。この会場は普段、キャンプ場として通常営業している。設営密度が、その土日営業以下だと言うのだ。
違和感は、これだけで終わらなかった。
ステージに向かうと、意外や意外、人は例年並みに多い。反比例して、飲食店や物販店の少なさに目を疑った。えっ?少なっ!
こうなると、必然的に発生するのが、ご飯、ビール待ちの行列。当たり前。
メインステージ前のタイ料理屋なんか、常に1時間待ちの列をキープし続けていた。
結局私も、ステージ前の飲食店には1円も落とさなかった。いや、落とせなかった、こちらの表現の方が正しい。キャンプサイト内にある管理棟が出す店で、つまみや酒を買った程度だ。ここだけは並ばずに買うことができた。
この状況がなぜ起きてしまったのか、私なりに推測してみた。
①チケットの売り上げが伸びず、予算削減、規模削減→飲食店数減。
これが最も考えやすい原因だ。来場人数に対して飲食店数や仮設トイレの数も決まるはずだ。
②Bサイトの客が減った。
これもあると思われる。私たちが設営したBサイトは、火を扱うことができ、料理もできる。ここの客がAサイトやふもとっぱらサイトに流れたのだとしたら、自炊ができないのだから、飲食店の需要は高まる。ふもとっぱらでは自炊ができるとはいえ、シャトルバスで移動する距離だから、ステージ側にいる時は、当然飲食店の世話になる。
③Bサイトで自炊をする客が減った。
実は、今回、キャンプサイトで覚えた違和感の一つに、客の軽装備が挙げられる。
以前は、ダッチオーブンや鍋、焚き火台を持ち込み、ライブそっちのけでみな思い思いの料理を楽しんでいた。今年は持ち込んでいるのは焚き火台程度で、みな荷物もそれほど多くない印象を受けた。昼間、キャンプサイト内を歩いて回った時も、以前のようにどこもかしこも、エンドレス宴会状態になっているグループはほとんど見受けられなかった。残っている人は少なく、とても静かだぅた。ということは、みなステージに行っているのだろう。

初日午前中。管理棟の裏、まだ誰もいない。リッチに場所を確保。

ここで、②③について考えてみた。
簡単に考えられるのは、みな、面倒臭さを捨てたことだ。
自炊、タープ、焚き火ができるBサイトは人気だが、駐車場、ステージから遠い。さらに、その道のりは舗装されておらず、大きなカートがなければ運搬作業が困難である。朝霧最大の関所だ。小さなタイヤのカートは、壊れ、右往左往する初心者たちを何人も見てきた。ようやく空いたスペースに辿り着く頃には、全員汗だく、そんな状況も珍しくなかった。
ただし、そんな道のりを制覇してたどり着いたユートピアに設営し、汗を拭いながら仲間たちと乾杯!それはそれで最高の瞬間であった。が、みな、それを捨てたのだと思う。ビール一杯の感動のためにはあまりにも重労働過ぎたのだ。割に合わない。時代に合わない。
最小限の荷物で、あとは会場で楽しむ。割り切った立派なスタンスだ。
この観客のスタンスの変化に、運営側が気付かず、4年前の古いデータのまま通常営業したことが(さらに規模を縮小して)、先の飲食店大行列を生み出した原因だと推定する。
この先、朝霧JAMはどこへ向かうのか。20年続いたイベントである。すぐになくなるとは思わないが、このままで長く続かないと感じた。一緒に参加する友人たちも、当然同じだけ歳をとった。まずは客のターゲット層を明確にすること。そして、恵まれたシチュエーションにあぐらをかかず、魅力的なコンテンツを発信すること。
どんなものも、変わり続けるものしか残らない。それは、変わり続けるものにしか価値がないと同意だ。変わる勇気があるものだけが、トンネルを抜け、次の光を浴びることができるのである。
大好きなフェス、故の苦言。

加山雄三のステージ。こんなにオーディエンスでいっぱいになったメインステージを見たことはない。


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