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【アイデアノート改】第6話 晴れ男

アイデアを出すことに夢中な晴男。そんな彼にも過去があった。彼もまた、何かを背負った人生を送っていた。



晴男は中学生2年の時に父を亡くした。

父は建築業を営んでいて、いわゆる土建屋の親方をしていた。その父もまた、夢を追いかける人だった。父は由緒ある家系に生まれて、有名大学に進んだが、本当は絵画の道に進みたかった。芸術大学に進みたいという希望を親が大反対し、仕方なく普通科の有名大学に進んだのだ。
しかし、大学2年の時、やはりまわりの学生と合わないと感じ、大学を中退しデザインの会社へと就職した。就職して1年がたった頃だった。その会社は倒産した。そして、当時流行りの土建屋を始めたのだ。

そんな父を持つ晴男は、小学校を卒業したら、父の仕事を継ぎたかった。しかし父は亡くなった。

悲しむというよりは、周りが気遣って接してくる様に違和感を感じていた。そう、まだ中学2年生。父との思い出もあまりない。それに加えて忙しい父とその家庭環境だったため、父の死に対して晴男は冷静だった。むしろ、悲しまない自分はおかしいのかなと思っていた。

父の死に際に際して、晴男は涙ひとつ流さなかった。それを見て親戚のおばさんが言う。

「あんたは強い子ね」

その言葉に、とてつもない孤独感を感じたが、晴男は黙っていた。ただ、父の意思は受け継いでいた。

ー自分でなんとかしたい

その気持ちは意識してないが受け継がれていた。

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