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taco
2016年12月9日 09:55
澤山家の人々澤山忠直今回は、ちいさな「なお殿」として登場。無邪気な「おなかすいた」攻撃で、姉のデートをことごとく邪魔する。澤山助右衛門当時40歳くらい。阿津、忠慧、忠直の父。名奉行だが、自分にも他人にも厳しく、「鬼奉行」と呼ばれる。阿津18歳。厳しさは父譲り。美しいが、体格が良い上に運動神経も良すぎ、さらに気が強いので嫁ぎ先がない。本人は弟の忠慧に嫁が来る直前までは家にいるつもりで
2016年12月8日 08:36
江戸日本橋を渡ってすぐの広場の先に、大黒屋という、大きな平屋建ての呉服屋がある。 江戸で店を構えて三代目。現当主は名前は主水という。五十を少し過ぎたあたりの恰幅の良い男で、声が大きくてよく笑う、愛想の良いダンナだった。 この主水の息子が、潮五郎という。背が高くて色黒で、愛嬌のある若者だったが、数え18になったのでそろそろ許嫁を決めることになった。潮五郎に見合わせた許嫁の名は亜久里といい、
2016年12月8日 18:57
このたびのお信乃の再婚、やはり江戸の町では格好の話のタネとなった。 なにせ、お信乃は子どもが二人もいる未亡人とはいえ大金持ちで、それなりの美人。実は密かにお信乃の二人目の婿にと狙っていた中年男も多かったのだが、そこに婿に来たというのが美人のお信乃を遙かに凌駕するほどに美しい、二十歳の美青年。 しかも、小国とはいえご公儀も認めた大名の十男坊だという。 若君と一緒についてきた姑のお円《えん》
2016年12月9日 12:45
さて、小国とはいえ大名のご子息がたかが一介の長者に嫁いで……ではなく、婿に入ったと聞いて、機嫌を悪くしていたのは北町奉行の澤山助右衛門である。 まだ40そこそこの澤山は非常に優秀な男だが、自分にも他人にも厳しい。南町奉行である相木玄馬は気が優しい人だったから、澤山の厳しさが目立ち、江戸の住人たちは相木を「仏奉行」、澤山を「鬼奉行」と呼ばわった。 この鬼奉行には、娘がひとり、息子が二人いる
2016年12月9日 20:30
相模屋のダンナの羽振りの良さは、江戸の太鼓持ちたちのあいだで瞬く間に噂に上った。 若いがもとはお城の若様。遊女や芸者を揚げるときの遊び方にも品があり、金払いの良さは一流だったから、女たちにも太鼓持ちにもよくモテた。 そんな若様に一人の老人が、「こんな刀は要らないか」と、持ちかけてきた。帯刀を許されない商人には売れないが、若様なら実家の江戸屋敷に置くことができるだろうと、老人は言う。 若様
2016年12月10日 09:33
困ったのは奉行所だ。 例え正義の味方でも、ご公儀にとっては許しがたい犯罪者である。しかも、奉行所が追い切れていない悪党を懲らしめて見せたというのだから、奉行所の面目は丸つぶれ。南北両奉行所の枠を超え、それぞれの奉行所から精鋭の与力と同心を結集して事の次第に当たらせていたのだが、ここに来てもう一人の辻斬りが出たと聞いて、南の仏も北の鬼も、奉行二人は肩を落とし、深いため息をついた。 この数ヶ
2016年12月11日 00:26
近頃、目が痛くてしかたがないのだと、若様がお信乃に訴える。「寝不足じゃあないんですか」 お信乃はあっさりそう言って、若様の布団をもうすこし上等のものに変えるように、番頭に言いつけた。「うーん、身体の方はどうもないんですけどねえ」 若様は首をぐるぐると回し、左肩も回しながら、なおもお信乃に「目が痛い、目が痛い」と訴え続ける。「あ。わかった。今日は長老方との寄り合いの日だ。あんた、面倒くさ
2016年12月11日 10:32
我こそが「月夜の使者」だと言って、壺振り師の次郎吉が北町の奉行所に名乗り出てきたのは、それから10日後のことだった。「壺振り師……」 北町の鬼奉行が、男の職業を呟いて、引っ立てられてきた男の顔をまじまじと見つめる。なるほど、確かに気が強く、ケンカっぱやそうな顔をしている。「刀はどこにやった?」「神田の川に放り投げた」 男がそう言うので、如月の寒い冬の中、南北の同心、岡っ引きが総力を挙
2016年12月11日 23:26
ここは、お江戸日本橋の大黒屋。 数え40歳になった大黒屋4代目の主 潮五郎《ちょうごろう》は、半ば緊張気味に、目の前にいる大きな身体のお武家様と見つめ合っている。 娘のおりさの婿を探し始めて早二年。「おりさに恋仲の男が出来たらしい」という噂を口の軽い後家の婦人方から聞き、どのような男なのかと案じていたそんなとき、りさ本人が「結婚したい人ができた」といって、少し高めに造ってあるはずの御店