見出し画像

惰性で飲んでたタピオカミルクティにさらば 台湾雑記①

大学卒業しました。
最近ぼーっとする時間が多かったのでぬるっと思いついたことをたらたらと、書きます。

雑記ー

台東
お世話になった方たちに挨拶すべく、台東知本へ。還暦近い先住民の友人宅にお邪魔した。
ビンロウで血を吐いたかのように真っ赤な歯茎としわしわの笑顔で出迎えてくれた80代のご両親。
僕が日本人であることを知ると「あんた、日本人か。」から始まり、日本語で統治時代の思い出を間断なく語り、息が切れるとビンロウを無言で差し出してきた。
彼らなりの歓迎だろう、喜んでそれを受け取り口にした。ビンロウは彼らにとっては日常食だが、台湾では今や不健康の代名詞である。
躊躇なく食べたのを意外に思ったのか、より上機嫌に、饒舌になる彼ら。
今では時代錯誤の言葉や殴る蹴るといった当時の軍国教育について、さも誇らしげに話すので、まだあの戦争の余韻は残っているんだと、何とも言えない気分に精一杯の苦笑いを浮かべるしかなかった。

屏東
狐も大変だなあと、カンカン照りとスコールの中、びしょびしょになりながらバイクを走らせた夏の嘉義を思い出す。今日はバイクで屏東へ。
ここにもお世話になった先住民の女性がいる。
彼女ら先住民は山での実践、経験を重視する。夜どこからか聞こえてくる獣の声、石板を歩いた時に辺り一面が共鳴しカタカタする石たち、火、川、風に揺れる木々。それを五感で存分に味わい、生を享受する。山上での暮らしは決して楽ではないが、そこから育まれる精神性や経験則から生まれたものは、彼らの血肉であり、所謂文化なのだろう。

以前、大学院の面接で文化とは何かと聞かれ、返答に困った。
文化とは、その社会を構成する人間が作り出した伝統や行動様式、風習、価値観を指す。日本の文化として寿司とか着物とか能があげられる。だがしかし、外国の友人に時折、日本文化について聞かれても、借りてきた言葉や調べた話で取り繕うしかない自分がいる。普段自分はそれらを享受しないから、それらについては無知に等しい。僕の生活様式にそれらのものはない。
外に出て初めて自分の生まれた土地に興味を持った。

さて、台湾先住民の近代の歴史は茨の道だった。職業的社会的差別、政府主導の村の移転やダム開発、数々の自然災害。山の上で彼女らと生活していた時のとある夜、彼女が突然吐露した若いころに受けた差別の数々、陥る自己嫌悪、自己否認。
「私たちが残せる文化は言葉だけ。」
話の最中にそう語った彼女の表情が今でも忘れられない。あの言葉の意味をここ半年間ずっと考えている。

最後の1日
最後の1日はルームメイトと過ごした。
中米出身の彼らと僕は、コロナによって3年間自国に帰る選択肢がなかった。3人で酒を交わしては互いの国を罵り合ったり、誰かが自国の料理を作るとおいそれと全部頬張って平らげたり。ある時から互いの部屋を4回ノックするのが合図で、散歩するのが習慣になった。
コンビニで缶コーラを買って、適当に夜中を闊歩する。インフレの影響で今年の春、コーラの値段が5元上がった。それに合わせて量も少し増えたが、コーラは初めの一口が全てやろ、と文句の矛先を間違えた相手に向ける。卒業を控え、将来への不安を抱えていた僕らは、それを打ち消し合うようにはしゃいだ。
5年後の約束を果たすべく、それぞれの道をいく。別れの挨拶をし、4年間住んだ台南を後にした。

空港にて
世界一寒いのはカムチャッカでも南極でもなく、空港での待ち時間のベンチと寒さで寝付けない機内だ。現代のマッチ売りの少女はきっと空港にいるだろう、と取るに足らないことをぶつぶつと、空港でチェックインを待つ。帰国まであと10時間。惰性で飲むタピオカティーとも暫しおさらば。

日本
3年ぶりの日本の天気は晴れでもなく雨でもなく、中途半端にどんよりとした雲は自分の今の心情をまざまざと見せつけられているようで、とても嬉しい歓迎には思えない。それでも、台湾でのマスク強制の日々からの解放感は何物にも代えがたいもので、空港を出ると真っ先にそれを脱ぎ捨てた。バスに乗ると、マスクをした厳つい目つきの外国の方の面々。車内で荷物をばたばたと落とし、アホ面を覗かせる僕に、何を思ったのか一様にマスクを脱ぎ始め、空気ってすごいなあ、そういえばまだ空気の研究を読み終わってないことを思い出した。

巷では今もコロナでワクチンやマスクについて、甲論乙駁らしい。台湾では議論の余地が無い程に、政府からの厳しい規則によって今も皆が一様にマスクを着用している。確か高3の現代文の授業で、江戸〜明治期の西洋文化流入による日本人の服装・風俗の変化について、甲高い声の先生が話していたのを朧げながらに覚えている。服で地肌が隠れるようになってエロを創造したとかなんとか、、
いつか台南のビーチで水着の女性がマスクをし、写真を撮ってる様子に唖然としたのを思い出す。口に下ネタ、口パンツ、またしょうもない単語を思いついては手で振り払う。

終わりー

向こう一年日本にいます。
暇しているのでいつでも連絡ください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?