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第59回:ジングルかソニックロゴか?それが問題だ。

昨今多くの日本の大手金融機関がソニックロゴを使い始めているように思います。

みずほ銀行、三菱UFJ銀行、りそな銀行に三井住友銀行。

内閣府の「知財・無形資産の投資・活用戦略の開示及び ガバナンスに関するガイドライン」(参考資料篇-5)に「ブランド価値は、、位置、立体形状など多様な商標によって保護されており、これらも知財・無形資産の対象範囲に含まれる。」と述べられている通り、ソニック・ロゴは単なる製品宣伝のためではなく、企業理念やメッセージを発し人々の共感を醸成する知財・無形資産となるべき、というわけです。

ですから、最も重要な社会インフラの一つである大手銀行がこのメッセージを受け止め、各種CMや音声コンテンツでソニックロゴを使われ始めたのは、各行が重大な社会的責任を果たし、社会課題を解決していきたいと極めて真摯に取り組んでおられる証といえるでしょう。
特に三菱UFJ銀行さんの🎵MUFG〜、はさまざまなコンテンツで最近よく耳にするように思います。メロディに社名を乗せたソニックロゴをすべての音声コンテンツで発信しておられますので、まさに教科書通り・教科書以上の素晴らしい運用をされておられます。

ソニックロゴとは何か

会社のソニックロゴはビジュアルロゴと同様、音を通じても企業理念を発信するもの。ですから、企業理念が変わらない限り、シーズンごとにソニックロゴを変更するものではありませんが、商品や季節、社会情勢に応じてアレンジを変え、聴き手の気持ちに寄り添いお客様の共感を醸成していくものです。

そこでこちらのMUFGさん。今回のアレンジでは元気がよく若々しく勢いが良い「変化の速い時代に挑戦する」イメージを発信されているのでしょうか。

実はこの 

🎵M! U! F! G (タン!、タン!、タン!、タン!)
🎵M! U! F! G (タン!、タン!、タン!、タン!)

は ソニックロゴ・・・・の機能を果たしていないかもしれません。

ソニックロゴは、音を通じて企業理念やメッセージを発信し、聴き手に親しみやすさやロイヤリティを感じさせるためのもの。

三菱UFJ銀行さんは大手の金融機関。多くの人たちが安心・安全に資産をお預けし、親世代から子の代・孫の代まで長いおつきあいをしたい。これが、三菱UFJ銀行さんの思いであるとともに、資産をお預けする方の思いでもないでしょうか。統合報告書などを拝見しましても共有すべき価値観の中にはもちろん、「信頼・信用」といったキーワードが見られます。つまり、変わらない永続性がキーポイントですね。

ところが、このスカのリズムに乗せた 🎵M! U! F! G (タン!、タン!、タン!、タン!) の連呼は、「ジングル」になっています。

まず楽器の編成が少なく金管楽器の倍音・音圧の帯が薄く、少し刺激が強い音に感じますね。さらに、テンポも速く頭打ちのアクセントでクイックな瞬発性を発信し、視聴者のアテンションを喚起しています。

さて、それではジングルと何でしょうか?ジングルとソニックロゴの違いは何でしょうか?

ジングルとは切り替えや始まりを視聴者に感じさせる・アテンションを喚起させるためのものです。例えば、お昼の時報や緊急ニュース速報。例えばラジオの番組中に挟まれる交通情報への誘導。

(00:12秒頃 ~ )

あるいは、オリンピック開会式のファンファーレは世界最大のスポーツの祭典の始まりを全世界に告げるジングルといえるでしょうし、映画スターウォーズはいつも勇敢なファンファーレともに開始し、銀河系の長く勇壮なサーガが始まることを告げるジングルとしても機能しています。

誤解を恐れずに申し上げれば、ジングルは刺激の強いサウンドで多少頭が痛くなったとて、アテンションさえ得られれば良いともいえるでしょう。視聴者に「あ、何かが始まったな?何かが切り替わったな?」と注意喚起を与えられば良いのです。ファンファーレやジングルはそのための合図なのですから。

しかし、ソニックロゴはただの合図ではありません。

ソニックロゴは会社の理念やメッセージを音でも発信し、視聴者のロイヤリティを醸成するもの。

さて、MUFGさんのお話にもどりましょう。

今回のスカのリズムに乗せたCMでは、速いテンポのソニックロゴが「くるくるとクイックにアテンションを変える」ジングルとして機能しており、「銀行に寄せる信頼感や永続性」を発信するソニックロゴとしてのお役目をこなしていないのでは、と懸念します。

もし、ソニックロゴで「変わらない永続性、信頼・信用」を発信し、お客様の共感を醸成したいのであれば、速いテンポや頭打ちのリズムで視聴者にアテンションを喚起するのではなく、「継続性を喚起させるレガートとプロソディ」(韻律)が必要ですね。

次回以降も企業の発する音やソニックロゴを深掘りして参りましょう。

お楽しみに。

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