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第3回「ソレ、ホントにそう聞こえてるの?」

さて、前号では「ソニック・アーキテクトが音やサウンドの持つパワーを日本で広げていきたい。」という大きな希望のお話をしました。

実はソニック・アーキテクトは、アメリカでは長い歴史がありますので、そのことをご紹介したいと思います。

アメリカでは2010年代から「音やサウンド」=周波数の表現はヒトの「感情」を引き出し、動かし、「記憶」を呼び起こし、「行動」を喚起することを活用した企業の音声コンテンツや施設の音の環境づくり」が盛んになっています。これにより、音はブランド力・企業価値などの付加価値を高める知財・無形資産としての役目を果たすようになりました。アメリカでは「音はデシベル、音量、騒音を抑え、射倖心を煽りさえすれば良い。」というわけではなく文字通り「資産=アセット」として扱われているというわけです。

さて、時は1960年代。

"a long time ago in a galaxy far far away・・"  
昔々あるところに・・

・・という程昔のことではありませんが、1960年代から70年代の米国はニューヨーク、ジュリアード音楽院でのこと。ジュリアード音楽院にとある名物教授がいらっしゃいました。筆者はお会いしたこともないけれど、ここからは、その功績とお人柄に敬意を表し、そして愛情も込めて「先生」とお呼びすることにしましょう。

先生は、1970年代くらいまで「音楽・芸術表現の研究者であり表現者であり指導者」でした。ジュリアード音楽院内に研究室を設立しジュリアードの学生やプロの音楽家に対して、「音楽家、つまりピアニストやバイオリニストや声楽家などのパフォーマーが、どのようにして人の心に訴えかける素晴らしい芸術表現を行うか」ということなどを、音楽や芸術の側面から研究・実践・指導していました。

例えば、祖国ポーランドの悲哀、パリの社交界、数々の女性との恋の遍歴が聞き手の心をかき乱し涙を流させるショパンのワルツと「♪屋根より高い鯉のぼり〜(ズン、チャッ、チャー!ズン、チャッ、チャー!)」の三拍子の違いは何でしょう?どうやって練習してどのように表現したらヒトの心を揺るがし感動させ涙させるショパンのワルツを演奏できるのでしょうか?

スウィング・ジャズと盆踊りのグルーブとリズムの違いはどう表現するのでしょうか?ソプラノ歌手が雄大な大河のような馥郁たるレガートを表現するにはどうしたら良いのでしょうか?テノール歌手が心の奥底から搾り出すような悲しい悲しいピアニッシモをメトロポリタン歌劇場の5階席までマイク無しで響き渡らせるにはどうしたら良いのでしょうか?

そう。

先生は長年の音楽・芸術表現に関する研究・実践・指導の結果、「素晴らしい演奏の指導や実践は、もう、わかった。」という境地に辿り着いてしまったのです。しかし、先生の大変ユニークで、彼の真骨頂とも言える活動はここから始まります。

「で、素晴らしい演奏の指導や実践はわかったけど、ソレ、ホントに、聞き手にもちゃんとそう聞こえてるの?それ、確かめたくない?」

先生、おかしいよ〜!(褒めてる

先生は、素晴らしい芸術表現を教える方法や、演奏したりパフォーマンスする方法はわかった。きっとそれらの演奏は素晴らしいに違いないはずであるし、事実自分の耳には素晴らしく聞こえる。しかしながら、アウトプットされて空間に放たれた音楽がすべての聴き手にも自分と同じように本当に素晴らしいと感じられているかどうか、ということを科学的に実証したくなってしまったんですね。

ここまでくるともうおかしいです。(褒めt・・

そしてこの頃から先生は独自の音やサウンドに関する研究室を設立し(注)、「音楽・芸術表現だけ」から「音そのもの、サウンド、周波数」の研究にのめり込んでいくことになります。少し長くなりましたのでこの後の展開は次号、お話することとしましょう。

(注):米国での本音表現研究室は米国の公的機関等からの依頼に基づき各研究者が分析官として出向し共同研究等に従事していますので、SNS上での高拡散性の可能性を考慮し研究室の名称、関係者の実名等を匿名と致します。


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