松戸市警察署とVtuberコラボの行方

0 前書き

今回の事例のみならず、「萌え」と呼ばれる表現と公的機関の広告のコラボは幾度となく炎上と撤回を繰り返してきました。

批判と反論、改善による表現の見直しがされることにより、より素晴らしい表現がつくりあげられていることが大事だと。

表現の自由戦士の一部のようにすべてを受け入れろと考えることはないと書いておきます。

1 どうして話題になったのか、はじまりのツイート…

松戸市警察署と松戸市で活動しているご当地Vtuberの交通安全コラボが批判されました。
Twitterで炎上するキッカケとなったのは、ご当地Vtuberのプロダクション会社の社長のツイートだと私は思う。
というのも、私は松戸市警察署と戸定梨香さんのコラボは知らなかったし、全国フェミニスト議員連盟から出されている抗議文も知らなかったのです。

時系列をさかのぼって整理してみました。

7月‐Vtuber 戸定梨香さんと松戸警察、松戸東警察とのコラボが出される

8月26日‐全国フェミニスト議連が抗議文及び公開質問状を提出

ここで全国フェミニスト議連が抗議文と公開質問状を松戸市警察署、松戸東警察署(千葉県警)、そして松戸市、松戸教育委員会に提出。
この質問状が出る以前に議連側の議員はこのコラボのことを知っていたはずなので、ある程度の期間で準備していた可能性があると考えるが、議連側がどのような意思決定をしたのかはわからない。

8月26日~9月9日 松戸警察署(千葉県警)で対応検討

この間に対応を警察側は考えていたはずである。
誰が、どのように、何を検討したのか、ここでの意思決定の流れも見えてこない。

9月9日 株式会社Art Stone Entertainment 代表 板倉氏がツイート

ここから今回の問題が始まります。
このツイートがなければおぎの氏をはじめとする表現の自由界隈も、また、フェミニズム界隈も知らなかったのではないだろうか。

9月10日 おぎの氏、青識氏、板倉氏から全国フェミニスト議連への公開質問状と署名活動がはじまる

大田区議のおぎの氏、ネット論客であり公務員の青識氏、そして上述の板倉氏により全国フェミニスト議連への公開質問状が出された。

9月18日 全国フェミニスト議員連盟がコメントする

全国フェミニスト議員連盟がコメントを出したのは18日。

千葉県警等に提出した抗議ならびに公開質問状にご関心をお寄せいただいた皆さまへ提出した文書は、公的機関としての認識を問うたものです。当該動画の掲載も、削除も、ともに千葉県警によるものです。現在、多数のメール等が多種の内容で寄せられており、個別に回答は致しかねます。悪しからずご了承ください。

この際に代表の一人である松戸市議の方もツイートとFacebookの更新をしている。

2 全国フェミニスト議員連盟は何を主張したのか

全国フェミニスト議員連盟は何を目的に公開質問状を出したのだろうか。
公開質問状を見てみると、こんなふうに書かれている。

千葉県警、松戸警察署・松戸東警察署に強く抗議し、当局の謝罪、ならびに動画の使用中止、削除を求めます。

あくまでも使用中止、削除を求めている先は警察であることがわかる。
つまり、戸定さん自体の活動については削除を求めていない。

じゃあ議員連盟はどうして削除を求めたのか?
理由は公開質問状に書かれている。

本動画は、女児を性的な対象として描いており、女性の定型化された役割に基づく偏見及び慣習を助長しています。

他にも丈は短い、へそを出している、胸が揺れている、と書き連ねている。

なんだい、戸定さんのことを批判しているじゃないか、と思う人もいるだろう。

ただ、議連が公開質問状の宛先にしているのは警察(と松戸市)であることは忘れないでほしい。

議連は、警察が「女児を性的な対象として描いており、女性の定型化された役割に基づく偏見及び慣習を助長」している動画の使用中止と削除を求めているのである。

議連(議員)と警察という公vs公になる。
警察が受け取ったときにヤベッと思うだろうし、戸定さんやプロダクション会社がビビるのは理解できます。

議員連盟により戸定さんの活動自体に公開質問状が出されているとなると、公vs民となり、圧力になると考えます。ただ、法で規制されるよりは緩いだろうと。条例なんかで戸定さんの活動を規制しようとするならばとんでもない話です。

3 議連への公開質問状は何を求めているのか

警察へ出された公開質問状に対して、おぎの氏、青識氏らが議連に出した公開質問状。

この公開質問状はなぜ削除したのかを聞く目的ではないことが一目瞭然。
公開質問状に書かれていることへの根拠は何かを尋ねているのです。

警察へ聞けという批判について彼らは華麗に避けているが、目的が動画の再掲というよりも全国フェミニスト議員連盟への反論がメインになっているか、あるいは、警察もまた全国フェミニスト議員連盟の被害者であるという立場をつくり対立軸を明確にしたいのかもしれない。

ともかく、議連は「千葉県警に聞いてくれ」と追記しているが、擁護側はそんな回答求めていないのです。
いやいや、何を根拠に公開質問状を出したのか?って聞いてるんや、となるのは当然です。

4 議連は公開質問状に答えるの?

全国フェミニスト議員連盟はおぎの氏らの公開質問状に期日までに回答をしませんでした。
ただ、東京新聞の報道によると後日見解を示すとのことなので、それを待つのが良いと思います。

擁護側も今日は回答がありません等繰り返し伝えていましたが、全国フェミニスト議員連盟は警察に対してそのような態度を取っておらず、冷静に議論をするべき場をつくろうとしているように思えません。

全国フェミニスト議員連盟のいう性犯罪を誘発、という部分には賛同できませんが、どのように考えているかを知ることは今後の表現に活かせるはずです。

萌キャラと呼ばれているもの自体が許せない、と考えている可能性もあります。フェミニストの中には萌キャラを女性蔑視表現であると考えている人もいます。
宇崎ちゃん騒動のときは、キャラクターはよいがポスターとしてふさわしくない、と、キャラクターは女性への性的誇張表現であり許されないとする考えの2つがありました。

フェミニスト側で統一の見解を出せと言われても無理です。
フェミニズムの考え方によっても表現の扱い方は変わりますし、ゾーニングでよし、もいれば、規制しかない、というひともいるわけです。

オタクの人たちは、全て自分たちの思う通りに表現を振り回せない、と考えるべきですし、そう考えている人もいるでしょう。
フェミニスト側も、萌え絵表現への完全規制を目指すのは同意を得るのは難しいと思います。

直していかなければならないところは直す。
女性蔑視、女性差別(に限らずすべての差別)と言われたら、検討して、再評価して、経緯と結果を公表する。
そういった表現をしないようにガイドラインを策定する。

じゃあ今回はどうするべきなのか。

5 警察はどうするべきか?

削除したのは警察、と議連は述べています。
その通りで、削除を決めたのは松戸警察署(千葉県警)、板倉氏に伝えたのも松戸警察署です。

なぜ、警察署は削除を決めたのか?
違う意図で伝わるから、と報道には答えています。ただ、表現には問題がなかった、とも答えています。議連の抗議が影響した、と伝えるマスメディアもありました。

表現に問題がなかった、とするならば議連からの公開質問状にはっきりとそう答えればよかったのではないでしょうか?削除せずに堂々としていればよかったのでは?

千葉県警には問題があったにせよなかったにせよ、なぜそう考えたのかを経緯と結果を報告して、次のコラボを考えてほしいです。

また、広告におけるガイドラインを策定しておく必要もあるのではないでしょうか。

6 どのように表現を直せばよいのか?

すべての人間が受け入れる表現はありえません。
個人の場でYouTubeの動画をあげているだけならば、自由にできるものでも、警察という公的な機関の動画となると話は変わります。

今回の場合、企画のメインターゲットは小・中学生に向けられたものだと、、、
性的なモチーフを含む女性表象、特に乳揺れ表現や衣装は本当に必要なものでしょうか?

乳揺れはリアルに起きるものではないと女性から指摘されており、なんで揺らすのか疑問です。
また、衣装についても好きな格好をしているとありますが、秋冬に向けたコラボでは警察官の制服を用意していたとしているので、はじめからそれを用意すればよかったのではと思います。

この点では松戸警察署(千葉県警)の検討が足りなかったと考えています。

宇崎ちゃん騒動のときのように2弾目で改善されることを望みます。ただ、松戸警察署は未定としているようですが。

7 あとがき

動画を再公開するか次の企画をするかのボールを握っているのは千葉県警なので、千葉県警において考えるべきだと思います。もちろん、再検証を含めて。
全国フェミニスト議員連盟の回答も待ちたいところです。何を根拠にしているのかが明確になれば、彼らの中で一定の議論はされていくのではないでしょうか。

上述したとおり、批判側と擁護側で求めている世界が全く別のものなので、双方が意見をぶつけ合ってもすれ違い通信という無意味な時間になるだけだと思いました。

それ言ったらおしまいか、、、



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