見出し画像

大阪の文豪・織田作之助と井原西鶴

なんばにある自由軒で玉子入りの「名物カレー」食べました。

これが、かのチョーチョー有名な「自由軒」の「名物カレー」です。

ドライカレーのリゾット、生卵のせ、と紹介すればよいですかね。

このライスカレーが有名であるには、むろん理由があります。
織田作之助の『夫婦善哉』に出てくるんです。

ランチした、なんばの「大衆洋食 自由軒」の店構え。なんや昭和な雰囲気です。

「…自由軒で玉子入りのライスカレーを食べた。『自由軒(ここ)のラ、ラ、ライスカレーは御飯にあんじょうま、ま、まむしてあるよって、うまい』と嘗(かつ)て柳吉が言った言葉を想い出し…」(『夫婦善哉』より)

※「あんじょう」は、「うまく、具合よく」という大阪言葉。
同じく「まむす」は、「まぶす」という意味。

『夫婦善哉』は、織田作之助二十六歳の時の小説。作家活動はわずか七年だったが、多くの作品を残し、伝説のような生涯を足早に駆け抜けた文士である。(「織田作之助」河出書房新社より)

織田作之助は大正二年に大阪の生国魂(いくたま)神社の近くで生まれたそうです。

織田作像。なんかカッコヨクナイすか!

前掲の「織田作之助」(河出書房新社)の中で、「『夫婦善哉』と織田作之助」をテーマとして、瀬戸内晴美氏と前田愛氏が対談されている。この記事の中で、瀬戸内晴美氏はこう述べられている。

『夫婦善哉』は芝居や映画にもなっていて有名なんですが、それを観ているせいで、すぐ淡島千景のお蝶と森繁久弥の柳吉の顔が浮かんでくるんですよ。(中略)戦後は太宰と織田作と坂口安吾の三人が並び立っていたんですけれども、昭和十五年ごろといいますと、やはり、太宰と織田作なんですね。(中略)『夫婦善哉』は、こんどまた読み直しまして、本当にこれはいい作品で、後に残っていくと思います。ムダがないし、しっかりした構成だし、若書きだというふうな批評がどこかにありましたけれども、それは当たってないと私は思うんですね。処女作にすべてが含まれている。」
(「織田作之助」河出書房新社より)

何といっても、織田作は大阪人、という感じでして、昭和の西鶴といってもいいような雰囲気がありましたね。非常に西鶴を勉強しているんじゃないかと思います。文体も西鶴的ですし、視点も西鶴的。(同上、瀬戸内晴美氏)

そういえば、織田作の銅像のある生玉乃杜に井原西鶴像も建っています。

西鶴と生國魂神社の関係は、実はここが、西鶴「大矢数俳諧興行」を打った場所らしいのです。決められた時間内に俳句を何句詠めるか、という、あれですね。

並び立つ大阪の文豪、織田作と西鶴。こんなわけで、二氏の像が建っているのですね。


織田作像も西鶴像も、どこぞの公園に建つ立派な(金かけた)だけのヘンな偉人像と違って、優れて人間性を醸す芸術的な作品ではないかと思う。何度みても、飽きない。

織田作や西鶴のような、とまでは言いませんが、大阪舞台のおもろい小説書きたいと、一時は目指したものでした(苦笑)

※生國魂神社及び銅像の写真は別日(一か月ほど前)に撮ったものです。

2024.2.22