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懲りずにまた行く

やけに沸点の低い店員、略して怒店おこてんがいるクリーニング店ふたたび。

くだんの店から、ダウンジャケット等クリーニング料金半額セールのご案内ハガキが来ていた。
おりしも、諸事情により家の中がとっ散らかっている。
この際だから冬物衣料をクリーニング出しして、自宅から一時避難させようと目論んだ。

しかし怒店おこてんは怖い。
いくら安くても怖い。
疲れているのもあり、余計なストレスに晒されるのは避けたい。
なので近場のいつも利用している店を一時避難場所に決めた。
たしかあそこも30%オフのはず…

ところが!
いつもの店の優しい店員、略して優店やさてんが、カウンターに持ち込んだウチの冬物衣料を前におっしゃった。

割引は昨日で終わってますよ、
いいですか?

なんて優しい、さすが優店やさてん
そう、ついこの間店のドアの前に全品30%オフの貼り紙があった。
だから、あちらをやめてこちらにきたのだ。
それが昨日で終了していたとは!

せっかく教えてくださったのでお言葉に甘えて、ダウンジャケット二点をはじめとする、冬物重衣料合計十点を引き下げた。
カッターシャツの二枚や三枚とは訳が違うのだ。

その足で怒店おこてんの店に向かおうとして、少しためらった。
あのハガキは、あの店から出されたものだったか?
はて。?

◯◯◯T町店とある。
実は◯◯◯チェーン店がT町にはふたつある。
正しい名称はどちらだったか…
ハガキに記載されている電話番号をダイヤルする。
そして言った。

あの、オタクはどこの◯◯◯ですか?

自ら電話をかけてこんな質問をするアホがあるかしら。
悪戯電話と受け取られかねないレベルだ。
小心者の私は、電話に出た声を聞くなり凍りついてしまったのだ。

ぶっきらぼうに不機嫌に応対するその人は、まさしく怒店おこてんだった。
今日も全開で怒っている。
身が縮む。

しかし何という応対だ!
私がかつて、なかなか受け取りに行かなかったことをいまだに怒っているのか!
いや待て、
名乗ってないから相手が誰かわからないはずだ。
誰に対してもこのように怒っているのか?

なぜ働くなぜ辞めない…

セールを行なってるのはあの店であるのは間違いない。
しかし私は家に帰った。
怒店おこてんの勤務時間帯は知らないが、夕方になれば交代しているかも知れぬと思ったのだ。

はたして夕方、怒店おこてんが交代しているのを祈りながらカウンターを訪れると、いた。

すみません、と声をかけると怒店おこてんは、あからさまに不機嫌な顔をした。
やはり相当嫌われているようだ。

ハガキをいただいたので来ました。
お願いします。

店のポイントカードがあったが、もう二度と行くまいと思っていたので捨てたらしく、無い。
電話番号で得意客を登録してあるらしく、求められたので告げると

タダノさんね。

名前は覚えていないらしい。

怒店おこてんは特に怒りもせず数を確認すると、レシートを印字して支払いを請求した。

9680円です。

やっぱり割引を利用してよかったよ…
クリーニング代も値上がりしているのだ。

それから怒店おこてんは、何度も何度も念押しした。

ダウンは仕上がりが遅くなりますけんね、
それ以外は金曜日に必ず取りに来てもらいたいんだわ。
ここおくところがないから、来てもらわな困るに。
すんませんけど、お願いします。

道道考えた。
怒店おこてんはこの店になくてはならなんだ。
この店の売りは迅速・高品質・低価格だ。
実際この店で仕上がりに不満を感じたことがない。
急ぎの時は午前中出して夕方持って帰れることもある。
このハガキに限らず、割引率も他店と比較してかなり高い。

客の顔色なんぞにいっこう臆することなく、約束の期限を言い渡せるこの怒店おこてんは、この小さな取り次ぎ店の重要な戦力なのに違いない。


今度から強気の店員、略して強店つよてんと呼ぼうかな。

たが…金曜日に持って帰るのでは、一時避難になりゃしねー。


※ヘッダー画像はにゃこぱんさんよりお借りしています。
ありがとうございます♪

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