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【伝統医療でGO!#09】 #定期的にブームは来ている?#伝統医療の近代史をふりかえる#時代は未だ来ない

”これから、間違いなくこの分野の時代がやってくる!”

と、励まされたのが30年前。だけど、待てど暮らせど、そんな時代は未だやって来たのを見たことがない。ってな感じで、よくボヤいているわけです。

でも、数十年の単位で、伝統医療や自然療法が取り上げられている様子を見ていると、まあ確かに「伝統医療」は何らかの形で、定期的に話題になっているのかなあとも思うのです。

◼︎ 1960年代 ナチュラル志向の誕生

一般の人にとっては、漢方や伝統医療って常に現代科学を背景とする西洋医学と比較されがちだし、いわゆる「意識高い系」の一定の層に強く指示される感じがあるようですが、知る限りでは、1960年初めのアメリカで「沈黙の春」って本が化学汚染問題を取り上げて、科学一辺倒に警鐘を鳴らして注目されたのが、西洋社会的には自然(ナチュラル)志向支持者を増やしたキッカケなのかもしれません。

それ以降も、そんな流れから自由と平和を愛するヒッピーの方々が、非西洋文化をファッションに取り込んだり、1970年代になると、米中間の国交正常の動きの中で、鍼灸も東洋の神秘!なんて新聞記事にも多く取り上げられたようです。

◼︎ 1970年代 国の医療政策

1970年後半には、今度は国際開発の業界でも国際間の開発格差(南北問題)で生じた医療格差を埋め合わせようとした、プライマリーヘルスケア運動の中で、僻地でも入手できるハーブなどを使った医療類似行為も国際機関が奨励したことで、アジア各国で政府が積極的に、各国の伝統医療を医療サービスに取り入れていったのは大きな転機だったと思います。
参照:ヘルス・ケア・システムにおける伝統医学の存在意義

今は日本でもお馴染みの漢方薬ですが、初めて国内で健康保険の適用を受けたのが1967年で、それから10年後の1976年までに一気に適用幅を拡大されています。また、それまで2年制だった鍼灸教育も、1983年に初めて4年制の大学機関が発足されています。

◼︎ 1980-90年代 バブルと共に一般社会へ

1980年から90年代になると、生薬などの科学的検証も進み、医療分野だけでなく健康ブームも起こる中、機能性食品化粧品原料として、またエクセサイズの流行の中でヨガなどのブームが再開し、私たちの食卓や一般生活にも伝統医療の恩恵が、身近なものとなりました。

◼︎ 2000-10年代 社会システム、職業として

2000年代になってからは、私の周りの「漢方薬」業界のひとたちは、漢方薬は国民医療の一部であって代替医療ではない、と主張する声を聞くようになりました。また、社会的な不況によってリストラを受ける人が溢れ、それまで業界に関わりのなかったような一般の方々が、代替医療という分野に再就職の場を求めようとする動きがあったのも衝撃を受けました。

2010年代前後には、途上国開発業界の中で、再び伝統医療を東南アジア各国の保健サービスに活用させる運動が起きました。わたしも、この活動に関連するプロジェクトに参加しましたが、研究、産業、教育、といった分野の各国の専門家が集まり熱い議論を繰り広げている状況に、胸が熱くなりました。

”日本でも、こんな風に盛り上がってくれたら良いのに。。。”

◼︎ 2020年代 これからのムーブメント!?

こう見てみると、ファッションと同じように十数年周期で、大ブームとは言いませんが、定期的なムーブメントはあるようです。しかし感じとしては民間のメディアを巻き込んだブームは、まだ起きていないような。

今年2023年春からのNHK朝ドラ「らんまん」は、高知県出身の植物学者・牧野富太郎の人生をモデルとした作品だそうです。わたしもブータンに移住する際に、日本の植物資料として牧野の植物図鑑を持参したことを覚えています。また、同じくNHKでは、「東洋医学ホントのチカラ」という特番が定期的に放送され好評だそうですね。

下の記事は、10年ほど前にフリーペーパーに連載させていただいた記事です。ご覧になってどうでしょう。驚くことに10年前の話題とは思えません。一時期の大きなムーブメントにはならずとも、時代を感じさせないテーマというのが伝統医療の魅力なのかもしれません。

(Phnom 2014年9月号)



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