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現代の医者に必要な事

コロナの波が進むにつれて、医療・介護・救急の現場における無気力感は増している。この背景には高齢化が大きく影響しており、日本が抱える課題の縮図の様相を呈している。少子高齢化、人口減少、地方の過疎化といった課題は誰かの発案によるたった一つのアイデアでどうにかなるものでもなく、一つの分野の専門家で解決できる問題ではない。個人的にはここまで社会に大きな影響を与えたコロナの対応も、もっと幅広い視点からのアプローチが必要であったのではないかと考えている。

ノーベル化学賞を受賞された野依先生は、「わが国の科学社会は「集合知の時代」へ対応できるか」というタイトルのコラムの中でこう語っている。
(13)わが国の科学社会は「集合知の時代」へ対応できるか|野依センター長室から|特集・コラム|研究開発戦略センター(CRDS) (jst.go.jp)

「現代社会が求める複雑系の問題の解決は、いかなる天才、秀才といえども一人では難しい。誰が解決するかではなく、いかにすれば解決できるかを考えるべきで、近年の社会との関係の深まりを考えれば、文理融合は不可避である」

現代の日本は医者が医学のみで解決出来る時代ではとうになくなっている。
臨床では退院調整、転院調整、終末期議論のすり合わせ、業務では病棟運営、教育、院内の会議など、日々の業務の多くは様々な”調整とマネジメント”に追われており、それぞれの方法は学問的に学ぶこともなく経験に基づき進めている医師がほとんどではないだろうか。

幅広い視野をもつためには、行動経済学や社会心理学といった分野のみならず、人財/組織マネジメント、連携型イノベーション戦略の概念もまた理解していくことが必要な時代となっているが、臨床医はもちろん医学教育の現場でもその必要性が認識されていない。
臨床現場の複雑な問題を解決するための集合知を形成する事を目的とした職種連携の推進がようやくなされてきてはいるが、それでも解決が難しい課題に対してどのように集合知を形成していくべきかはまだまだ見えておらず、医療は医療の世界に留まっている。
私自身も学びながら、次世代のリーダーである研修医には臨床以外でも大切なことの教育をしていきたい。

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