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『メタバース進化論』を読みました。

バーチャル美少女ねむの『メタバース進化論』読了。メタバースと、その中で行動するアバターの登場によって、「分人」(元々は作家の平野啓一郎が生み出した言葉。「個人=individual=それ以上分けられないもの」に対して、「分人=dividual=ひとりのなかに存在するいくつもの独立した人格」を提唱した)の社会実装が可能になった。それはアイデンティティーの面でも、経済的な面においても革命的な事件である、というあたりが興味深かった。

特に経済面については、ブロックチェーンをうまく組み合わせれば経済的な主体としての同一性をより強固に担保できるのではないか、とも思う。一方で、アバターの生存のためにも、質量を伴った現実世界における身体の維持は必要なわけで、そのためにはリアルワールドで経済活動を行い、飯を食っていく必要がある。仮にメタバース内での経済活動だけでリアルワールドの身体を維持しようとしても、例えばメタバースで手にした資産をリアルワールドの個人名義の銀行口座に預ける必要があるなど、別々の世界を生きる主体たちはどこかで接触しなければならない。だからと言って、リアルワールドの存在を完全に消去する、例えば映画「マトリクス」のように、質量をもつ生物としての身体の存在を認識せずに、メタバースにフルダイブで完全に浸かってしまうと、それはそれでメタバース内での一つの人格(個人)しか生きていないことになる。分人を生きるには、複数の世界の移動あるいは接触そのものをポジティブにとらえることが大切なのかもしれない。

分人とアイデンティティの関係性および可能性については、リクールの物語的同一性を軸にもう少し考えていきたい。

いずれにせよ、世の中は一つの現実にとらわれない移動の自由を求めていると思うし、それが経済的にも大きな可能性を秘めているという点には期待している。このラインで自分のビジネスも展開していきたい。

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