見出し画像

Jリーグマッチレビュー⑳J3第12節 松本vs藤枝【2年ぶり現地アルウィン!戦国J3熱き上位対決】

さて、今回はサンプロアルウィンで行われたJ3第12節、松本山雅FCvs藤枝MYFCのマッチレビュー書いていきます。

6月に入り場所によっては梅雨入りになったところもあり、ここからは基本的にはナイターになる試合も多くなってくるが、J3はまだ割とデーゲームの試合がある。
というわけで、今回は2年ぶりに松本のホーム、サンプロアルウィンへ。初のJ3シーズンで独特の苦しさにも時折ぶつかりながら、何とか3位で上位争いにも食い込んでいる松本。序盤に課題だった守備にも改善が見られ、現状は8試合負けなし。

今回は得点力を武器に同じく上位争いをする藤枝との対戦。松本との勝ち点差は「2」で4位につける負けられない相手である。「堅守」と「攻撃力」の対照的な武器で勝ち上がる両チームの熱い攻防に期待したい。

2年ぶりにやってきた松本駅。
あずさは結構混んでいた
長野県のキャラクター「アルクマ」
前から一度会ってみたかった
大町市のキャラクター「おおまぴょん」
おおまぴょんとガンズくん
ガンズくんは今年で10周年

今回の観戦ユニフォーム

2018 1st(田中隼磨③Jリーグ500試合出場達成記念)

今回の観戦ユニフォームは、2018年の1stユニフォーム。私がこのクラブを応援し始め、そしてJ2優勝を勝ち取った思い入れの強いユニフォーム。

このユニフォームのテーマは「TO THE TOP」。クラブの魂のカラーであるグリーンをベースに、チームが一丸となり頂点を目指す姿をユニフォームの下部から上部へのグラフィックで表現している。
そして背番号の「500」は「松本の誇り」こと田中隼磨が2018年5月にJリーグ通算500試合出場を達成した記念のものである。当時の試合後に彼がこのユニフォームを着て、選手たちとともにサポーターを背に撮っていた写真がとても良いものだったので、発売が決まってすぐに注文した。そしてこれを着ていくと割と勝率も高いので、今回もそれにあやかって(個人的なアルウィンの成績は2勝3分け0敗)。

2018年5月3日の水戸戦。
田中隼磨の500試合出場達成試合後の光景。
今となっては懐かしいメンツ

本日のメンバー・見どころ

松本山雅FC


予想フォーメーションは4-4-2。前節の4-3-2-1からのシステム変更。
前節からのメンバーの変更は、宮部大己に替わり常田克人が左のCBに入った。
中盤には佐藤和弘に替えて住田将が右サイド(もしくはボランチあたり)前線では前節右ウイングの位置にいた榎本樹に替わって田中パウロ淳一が今季リーグ戦初出場となった。

リザーブには基本前節スタメンで、今節外れたメンバーが入るような形。安田理大、野々村鷹人、ルカオがベンチからも外れた。

前節はアウェーで鳥取と対戦。6連敗中の相手との対戦となったが、U19の日本代表に招集されたエース・横山歩夢を欠く攻撃陣はペースは握れども不発でスコアレスドロー。下位相手に確実に勝ち点3がほしい中で痛い結果となった。
終盤には鳥取の決定力の低さに救われたものの、危ない場面も作られたこともあり、名波浩監督も「今季最低最悪のゲーム」と怒りを隠さなかった。

開幕から勝ててはいながらも、毎試合失点していた守備陣には改善の兆しが徐々に見え、無失点試合も増えてきた。しかし直近4試合で3試合がスコアレスドローという決定力の低さは気になるところ。強力な攻撃が武器の藤枝に対して守備は継続してやっていきたいが、アタッカー陣のさらなる奮起が求められる。

注目選手は菊井悠介。開幕から常に攻撃の中心として存在感を発揮する強心臓なルーキーは、サポーターが選ぶ5月の月間MVPにも選ばれた。名波監督も絶大な信頼を置き、ピッチ上での指示も彼が担うことも多い。
前節の悔しさをバネに、今日も前線を操り、牽引する。

藤枝MYFC

予想フォーメーションは3-4-2-1。
前節からスタメンの変更はなし。
リザーブは三木直土に替わり芝本蓮が入ったことのみが変更点。前節かつ、ここ数試合の好調の勢いを持ち込もうという意気込みであろう。

前節はアウェーで福島との上位対決。堅守を武器に、ここまで複数失点が1試合もなくわずか3失点しかしていなかった福島相手に攻撃陣が大爆発し、前半・後半で3得点ずつを奪い0-6と圧勝。これで5試合負けなし、4試合連続複数得点とチーム状態は絶好調と言えるだろう。

福島戦同様、守備が好調の松本との対戦となるが、この福島戦のいい流れを持ち込んで確実に勝ち点3を狙いに行きたい。現状4位でちょうど1つ上の順位にいる3位松本との勝ち点差は2。白星でひっくり返し、J2昇格争いにもさらなる殴り込みをかける。

注目選手は鈴木淳。かつては福岡などで活躍したレフティーのキック精度は未だ健在。今シーズンもセットプレーのキッカーを務め、チーム最多の3アシストと強力な攻撃陣を牽引する。松本相手にもその展開力と精度は大きな武器になりそうだ。

前半

コイントスでエンドを変更し、互いのゴール裏に向かって攻めていくことになった前半。

最初の決定的なチャンスは藤枝。左サイドの横山暁之から水野泰輔へつなぎ、ペナルティエリア左で受けた水野からマイナスのグラウンダーパスが土井智之へ。土井は左足で受けるとうまく切り返して右足でゴール右隅を狙うも枠外。崩しまでは完璧だったが惜しくも捉えられず。
藤枝は好調の勢いそのままに、前半10分以降はボールを握る時間帯が増える。ビルドアップから両サイドをうまく使い、クロスだけではなくときには鈴木淳のミドルシュートなどでゴールを狙う。さらに25分には先ほど枠を捉えられなかった土井がミドルシュートを狙うも松本GKビクトルに阻まれる。

松本は攻め込まれる時間を耐えつつカウンター攻撃を展開。後方からのボールを基点となる小松蓮がしっかりとときに収め、頭で競り勝ったところに菊井悠介や田中パウロ淳一らが周りを走りチャンスを作る。

すると32分、後方からのロングボールをペナルティエリア手前で小松が収めると、左サイドに預けてクロス。これを田中が落として再びエリア内で待っていた小松が胸トラップからシュート。すると藤枝DF小笠原佳祐のハンドと🟨を誘ってPKを獲得。
キッカーの小松は真ん中低めを狙うも、藤枝GK内山圭の足に当たってしまう。それでも当たったボールは再び小松の足元へ。こぼれ球を冷静に押し込み松本が先制点を奪う。

押し込んでいたが先制された藤枝は、先制されたあともボールを握るも、44分の鈴木の不規則な回転がかかったミドルシュートがビクトルのファインセーブに阻まれるなど同点にはできず。

前半は1-0と松本リードで折り返す。

後半

後半開始時間になっても前半終了間際から降り注いだ雨は止まず、逆にゲリラ豪雨と雷のセットで襲来となり、15:30に再開判断となったが、なお止まず。結局16:00前頃に雨は弱まり、16:05に再度ウォーミングアップ、16:25に無事に後半がキックオフとなった。

すると後半開始から追加点を狙いに行っていた松本は5分、外山凌から左サイドでボールを受けた菊井悠介が2人寄せに来た藤枝DFの背後へ絶妙に掬ったループパスを供給。2人を追い越してワンツーのような形になった外山はペナルティエリア内に侵入しクロス。走り込んできた小松蓮がダイビングヘッドで合わせて松本が貴重な追加点。アイデアとサイド攻撃が見事に合致したきれいなゴールだった。

2点ビハインドで苦しくなった藤枝は12分に土井智之を下げ古巣対決となった岩渕良太を投入。16分にも秋山貴嗣、小笠原佳祐と後方の選手を下げ、鈴木翔太と芝本蓮を投入しまずは1点を取りに行く。それでもラストパスの精度を欠き決定的なチャンスは生まれず、松本の守備陣の集中力が上回る。

松本にもさらに決定的なチャンスが。23分にうまく裏を取った田中パウロ淳一がペナルティエリアに侵入しドリブルで相手をかわしてクロス。外から走り込んだ前貴之が完璧なボレーで合わせるも、至近距離で藤枝GK内山圭のビッグセーブに合い3点目は惜しくも届かず。

これを凌いだ藤枝は大石治寿、河上将平の攻撃的なカードを投入し松本より先に交代枠を使い切るも、最後までサイド、ペナルティエリア内ともに松本のブロックを崩せず。堅守vs攻撃力の対決は2-0で松本に軍配が上がった。

ざっくり感想

松本山雅FC

豪雨の中断にも相手の激しいチェックとパス回しにも動じず。前節の苦い経験をきっちりと活かし構築されつつある堅守がこの日も光り、負ければ順位がひっくり返る上位相手に大きな勝ち点3となった。

「堅守」が物語るように、勝因はDFラインに尽きる。サイド攻撃の対人でしっかりと身体をいれ、要所でのクリアやタックルも機能していた下川陽太と外山凌の両SB。外山はオーバーラップから正確なクロスで2点目もアシストした。
そして高さと強さで貢献した常田克人、スライディングタックルや対人など、CBに必要なものをほぼ完璧なパフォーマンスで披露した大野佑哉のCBコンビも素晴らしかった。前半以外はGKビクトルのもとに飛んだ危ないボールが少なかったのは彼らが事前に潰せていたことであることは明らかだった。

前線も前半に藤枝にボールを持たれる展開の中、田中パウロ淳一と菊井悠介を中心にサボらずに追いかけ、奪ったチャンスからサイドをうまく使った攻撃につなげたことも良かった。基点となる小松蓮だけでなく、先制点のPKに繋がった流れの小松のシュートの相手のハンドにつながる落としは田中が身体を張ったもの。持ち味のドリブルに加えてそのようなプレーも含め、確実にチームにとっていい起爆剤となっていたことは間違いない。

名波浩監督の中断後のコメントがさすが。こういうモチベーションの上げ方をさせると本当にうまいことはジュビロのときから感じていたこと

藤枝MYFC
攻撃を武器に上位争いをしているチームの「らしさ」は随所に見せ、必ずしも悪い内容だとは思わなかった。福島を翻弄したワンタッチパスを含めたテンポの良いパス回しや、ボールを大切にするチェックの激しさなど、今回の負けを引きずりそうな空気は感じられなかった。それだけに、押していた展開で松本の前線の強さ(特に小松蓮)に屈し、喫してしまった2失点が悔やまれる。

もう1つ感じたのは、豪雨で長引いた中断後のプレーで松本より後手に回ってしまった感は否めない。前半よりもミドルシュートでゴールを脅かしたり、前線の選手にボールが入る場面が減り、ペナルティエリア近くに決定的なボールが入る前に松本の守備陣に潰されていく場面が目立った。攻撃のカードも早めに切ったが実らず。福島に続く堅守攻略とはならなかった。

MOM

大野佑哉(松本DF)

2得点の小松蓮も貢献度は高いが、藤枝にペースを握られる場面も多かった中で、確実にDFラインのリーダーとして強力な藤枝攻撃陣をシャットアウト。完封に大きく貢献した大野佑哉の貢献なくして勝利なしと思い、彼をMOMに。
的確にボールに向かっていったスライディングタックル、一対一の対人の対応、カバーリングとクリアなど、DFの中心としてほぼ完璧なパフォーマンスを見せた。3節以降はリーグ戦フル出場。4年目にして充実の内容と名波浩監督の信頼が伺える。

2年ぶりのアルウィン
アクシデントで垣間見えたJ3でもなお、冷めやらぬ熱意とホーム力

私は常々、「松本山雅サポーターは日本一のサポーター」だと言い続けている。サポーターやボランティアスタッフの熱量はもちろんのこと、私の出身地からは遠くてなかなか行けないけれど、やはりこのアルウィンは一度行くとまた行きたいなと思わせるスタジアムだ。それは人生6度目の参戦となった今回も変わらない。まあ、未だに負けなし(3勝3分け)ということもあるのだが。

確かにJ3に降格した今シーズン、全盛期よりも随所に空席は見られることは否定できない。けれども、多くのサポーターがいるという事実は変わらないし、J3が舞台でも年間の1試合平均が10000人超えを目指すクラブの方針は曲げないでほしい。
少々マニアックだが、スタンドや待機列でばったり知り合いにあってご挨拶をする、といったサポーターあるあるを一番目撃するのは松本のサポーターであり、それを傍から見てていつもほっこりして好きだ(笑)。

今回の観戦でも、松本のサポーターいいな、と思う光景があった。
それは後半開始が遅れ、ゲリラ豪雨に打たれ、雷の音も轟いていた中断後。「避雷針の関係でスタンドに待機をお願いします」とのアナウンスもあり、屋根のないスタンドにまるで修行僧のように打たれて待機していたサポーターたち。15:30に試合再開の可否を判断するとのアナウンスから、さらに16:00に判断するとの引き伸ばしもあり、フラストレーションが溜まっていたことも否定はできない。

だいたい15:40過ぎだったと思うが、ようやく強い雨から小雨に変わりつつあったそのとき、すっと手拍子が自然発生した。しかもその手拍子の始まりを作ったスタンドはメインスタンドから見て左側のサポーター。太鼓などの楽器があるゾーンではないので、お世辞にもぎっしり埋まっている席ではない。まだピッチに選手やスタッフの方が戻ってきたわけでもないし、その手拍子が開始されたときは正式に試合再開時刻もアナウンスされていたわけではない。

それでもやはり当たり前のように発生したこの光景は素晴らしかった。やはり圧倒的なホームの応援が根付いていることを証明する光景でもあり、それを見た隣のゾーンの雨宿りから戻ってきた藤枝のサポーターも手拍子を始めた。やがてこちらのゴール裏も太鼓と手拍子が始まり、再度ウォーミングアップを始めた選手たちを後押しした。

他会場では声出し応援も解禁されたこの週末。手拍子でも十分な迫力を持つ松本だが、やはり声の圧倒的なアドバンテージは日本屈指の「ホーム力」を感じるスタジアムだと思っている。最低でもシーズン終盤のクライマックスには元に戻っていてほしい。2018年のJ2優勝が決まった最終節を現地で見た私としても、改めて強調したい。

選手入場時の緑のタオルが舞う光景
少数精鋭ながら、楽器の音と「蕎麦より朝ラー」の傷つかない絶妙な煽りを加えた弾幕を掲げた藤枝サポーター。大変好印象でした。10月にはぜひアウェー参戦したい
約1時間半の中断後の光景。
写真では伝わりにくいが両チームのサポーターの仕切り直し後の手拍子の熱意がいい空間を生み出した
勝利のアルプス一万尺。これをやりにアルウィンに来ていると言っても過言ではない。知らないサポーターさんとまた肩を組んで歌える日が早く来てほしい
終わったあとさらに踊らされる田中パウロ淳一とガンズくんがダンスのポジションを奪い合う光景

試合結果

松本2-0藤枝
得点
【松本】小松蓮×2(前半34分、後半6分)
🟨
【松本】菊井悠介(後半24分)、外山凌(後半31分)
【藤枝】小笠原佳祐(前半33分)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?