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【CG技術の是非】VFX依存の映画界はまだ観客に通用するのか

映画の魔法担当部“VFX”ははたして、映画の核になり得るのか。このトピックでは、「VFX依存作品のリスク」を、知ることができる。予算を手にすると直ぐにVFXを使いたくなってしまうアーティストの、ために書く。

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アーティスト情報局:太一監督
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監督がスタジオから発する生存の記
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『 VFXを多用するリスク 』

VFXには、撮影現場と編集加工プロセスのどちらにも、実に多彩な段取りが必要になる。舞台裏を撮影する際にもっとも、重宝する“見栄え”風景だ。
カメラを自在に操る特機や大仕掛けの稼働美術セット、CG合成用のキャプチャー用具はまるでSFそのものであり、特殊メイクの繊細さは観客の度肝を抜く。それ、映画の撮影現場の空気を支配する、リスクでもあるのだ。

そこで、日本に入っていないニュースをお知らせしておこう。

■ 最新国際ニュース:ダニエル クレイグ版「ノータイム トゥ ダイ」ジェームズ ボンドとしての感動的な別れをVFXがどのように演出したか

ボンドVFXチームは、アストンマーチンDB5、沈没するトロール船、管制塔の屋根の上でのフィナーレなど、感情的なつながりについて説明します。

「No Time to Die」では、ダニエル クレイグのジェームズ ボンドとしてのアークを完成させ、5つの映画をすべて結びつけることがカリー ジョジ フクナガ監督にとって重要だった。そのためには、激しいアクションシーンでもボンドとの感情的なつながりを強調する必要があり、それがVFXにも影響を与えた。

SFXスーパーバイザーのChris Corbould氏は、「この映画は、ボンドがこれまでに経験したことのない感情的なポイントに到達したと思います。ダニエルのボンドは本作でピークに達し、感情的なシーンの撮影現場では、これまでに見たことのないようなパワフルさを発揮していました。」

インダストリアル ライト&マジック社は、DB5の爆弾やスモーク、フロントガラスの爆発やSFXなどのCGを担当した。「沈没するトロール船もまた、非常に感情的なシークエンスで、特別な回転ジンバルを必要でした。トロール船の内装を油圧リグに取り付け、セットを回転させながら20フィートの深さの水槽に沈めることができました」

「私はボンド映画で涙を流したのは初めてで、しかも2回目の鑑賞でも涙を流しました」。 - NOVEMBER 01, 2021 IndieWire -

『 ニュースのよみかた: 』

VFX部が映画へのコメントを求められて語ったが浅過ぎた、という記事。

プロダクション(撮影プロセス)の後のポスト プロダクション(編集×仕上げ加工)に属するVFX部は実のところ“具体作業”の段取りがおもであり、作品の機微に関わる演出部のプロセスに参加していない。スクリプト(映画脚本)と絵コンテやVコンテ、ストーリーボードなどの配布資料以外で、ドラマツルギーに触れる場面がない。

VFX部は、“ドラマ”のプロフェッショナルではないのだ。

『 映画の魔法、ドラマのリスク 』

VFXは便利でありつつも、緻密な設計に基づいたスクリプト(映画脚本)と繊細な演出、そして演者の役づくりの“全てを無視して介入”する、大工事なのだ。

映画のVFXシーンを撮影する日の現場では、繊細なドラマは創れない。

異論もあろうだが、わたしは15歳でVFX業界の前身SFX業界から映像業界に入り21歳の初起業もVFX会社でありつまりは、圧倒的に詳しい。VFX部の人間は映画の最重要スタッフの類でありつつも、ドラマには詳しくない。

『 もう、観客は驚いていない。 』

映像マジックが観客を魅了した時代は、終わった。CGという魔法は映画から限界を消し去りまた、映像から驚きを奪い去ったのだ。

エンターテインメント系映画の製作費はなお高騰しつつも“Weta”の技術部門買収劇が証明する通り、コモディティ化が加速している。映像系アーティストは「VFX依存」に陥ってはいけないどんなレベルの映像もやがて、誰もが制作可能な時がくる。その時に慌ててももうその先に、映像マジックは存在しないのだから。

『 インディペンデントこそ、VFXのスペシャリストに 』

“映像マジック”を追ってはいけないしかしその壮大な技術、「制作予算の圧縮」に革命を起こせる。たった1Cutのために海外にはいけないが、VFXならできる。エキストラさえ雇えないがA.I.で稼働するCG群衆なら、買える。ないはずの照明で夜道を照らし、天候も季節も自由自在。安全なスタントを実現し、クルーへの保険審査もクリアできるのだから。

VFXは、小さなドラマ作品にこそ活用すべきとても素敵な“お守り”である。

『 編集後記:』

あぁ、料理をしていない。
そもそもに調理なんてど素人の新人でありつつも¥1,000-以上のランチやコンビニで¥3,000-も買い物をすることに抵抗がある庶民の私は必然、どの国にいても自炊をする。その街のスーパーをはしごすれば、ひと月前に現地入りしていたクルーよりも生活習慣に精通できる利点もある。正直者としか会いたくないわたしが社交辞令の会食を避けて部屋から出なくていい、理由にもなる。

はやく自炊できる生活に戻りたい。

ジャンクに溺れながら自然を愛し、映画製作の現場へ帰るとしよう。では、また明日。

■ 太一(映画家):アーティスト業界情報局 × 日本未発表の国際映画業界情報 あるいは、 監督がスタジオから発する生存の記