見出し画像

【人道支援チャド】子供たちと向き合う日々の中で

皆さんこんにちは
人道支援家のTaichirosatoです。

チャドに来てからというもの、仕事の多さからなかなか自分の時間と活動を振り返る時間と電波がなかったため、しばらく大好きな文字におこす作業をしていませんでしたが、久しぶりに、そして電波の入る今のうちに、noteを更新していこうかと思います。
今回は、チャドでの活動で元気な子供たちとも重症の子供たちとも向き合う日々の中で感じたことを文字にしていこうかと思います。

僕の専門領域とチャドのプロジェクト
以前から僕のnoteを読んでくれている人がいたとしたら、なんとなく僕の専門性を知っている人もいるかもしれない。初めて読む人もいると思うので、少しだけ僕の専門領域を紹介しておく。

僕は、世界で活動する医療者であり看護師である。
特に紛争や自然災害で緊急的に支援を必要とする場所で活動するのが僕の仕事。専門領域はと聞かれれば迷わず、救急・集中治療領域と答える。
国内外に関わらず大けがや火傷、非常に具合が悪い人を緊急的に対応することに僕の医療者人生の大部分を費やしてきた。人道支援という海外活動においても僕の強みを生かせるのはやはり、救急・集中治療という領域である。過去にはコロナの集中治療や紛争地域での外傷センターでの経験がある。

では、今回のチャドでのプロジェクトはどうか。
結論から言えば、僕の専門領域とは離れたプロジェクトである。
実は、このプロジェクトを受ける前に僕はこんな思いを人事チームに打ち明けていた。

出発前の僕は、
チャドのプロジェクトを受けるつもりだが、自分の専門性と離れるところがある。もちろんベストを尽くすが、どこまでパフォーマンスを出せるかわからない。
と正直に伝えた。

そしてチャドに到着し、迎えた初日。
僕の人事を最終決定した現地の医療チームマネージャー パトリックと会い、現地の状況についてブリーフィングを受けた時のこと。
パトリックは僕にこう言った。

僕らのチームはとてもフレキシブルでなんでもやる。だから、なんでも柔軟に適応できる人を探していた。そんな時に君を見つけた。確かに君の専門性は違うところにあるけど、君の履歴書を見た時に君なら絶対に成し遂げられると感じたんだ。大丈夫、僕らがサポートするよ。
今日こうやって会えて、今確信に変わったよ。
一緒に頑張ろう。これからよろしくね。

どの角度から僕のCV(履歴書)をみたらそんな風に感じるのかは謎だが、自分の人となりを紙面上から感じてもらえたのであれば、それを伝えることができたのであれば、それはとても嬉しいことだと感じた。
パトリックから思いを伝えられ、僕のチャドでのミッションはスタートしたのだった。

麻疹と子供たち
日本で医療をしている人で麻疹患者を診たことがある人がどのくらいいるのだろうか。出生登録から成長に合わせた定期ワクチンがきちんと管理された日本で、麻疹の流行というのは起こりにくい。その他の感染症もしかり。生まれてから大人になるまで、無事に成長していることを市町村に認識され、必要な予防を受けることがどれだけの悲劇を防いでいるのだろうか。みんなにとっては当たり前で、面倒くさく煩わしい日本の保健医療システムに、今の僕なら心底関心するし、これほどの安心がある国は素晴らしい国だと思える。

ここチャドでは、出生をきちんと認識することや定期的な予防接種をすることが簡単ではない為、麻疹、髄膜炎、マラリアなど、季節によってさまざまな理由によって感染の大流行が起こる。そしてそれをコントロールし収めることは容易なことではないのは、コロナ禍を経験した世界なら想像に難しくないと思う。感染流行が起こったとき、現地の保健医療と連携をして、
「重症治療ー軽傷治療ー早期発見と治療へのアクセスー予防」
このチェーンを組み立て、機能させることが早急に必要になる。いうまでもなく、地域全体を巻き込んだ大規模な活動とイニシアチブが求められる。

こういった子供たちの命を脅かすインパクトは、なにも感染症だけが引き起こすわけではない。
紛争による人の移動、難民。
乾期による食料困難。雨季のアクセスの遮断。そして雨季の後に来るマラリア患者の急増や各々の感染症や食料困難が引き金になり起こる重症低栄養の子供たち。様々な危機が子供たちに襲い掛かる。
僕たちチームはそんな子供たちを危機から守るために活動をしている。

上記にも述べたが、僕は救急領域専門で、子供の病気に対する経験や知識が乏しい。そして何を隠そう、僕の人生で麻疹患者を見たこともなければ、マラリアや髄膜炎、重症低栄養の使用薬剤も治療戦略のことも全く経験がなかった。今は勉強し、仲間たちから学び、頭を抱えつつも何とか前に進んでいく日々である。

僕は、ここの子供たちが抱える疾病問題に関しては、初心者というわけだ。
正直に言えば、この仕事に関して僕は、知らないことしかない。

知らないということは、とても怖いと感じる。
知らないということは、僕を不安にさせる。
仕事をすることを、患者をみることを、僕は怖いと思う。
フランス語での仕事にもやはりハードルを感じる。
英語の通じない環境、フランス語でのチーム作り、僕が喋らないと始まらないミーティング。僕は日々不安を感じている。

でも、辛いと思ったことは一度もない。
僕には本当に頼もしい仲間いるから。
失敗することを不安に感じたこともない。
僕の仲間たちが、僕自身が少しずつ成長していけばいいことを常々僕に伝えてくれるから。僕はできないこと、分からないことを彼らとしっかりと共有すればいい。そんな環境で僕は働いている。
僕が解決できなくたって、誰かが、もしくはみんなで解決すればいい。
何しろ一緒に考えてくれるエキスパートの仲間たちに囲まれているし、
今まで各国でチームを作りそれなりに問題を解決してきた経験と自信もちょっとはある。

僕は、初心者で無知のマネージャーである。
フランス語も上手じゃないし、言っていることがわからないことなんて日常茶飯事。
でも、誰にでも初心者の時期はある。
僕自身がそのうちに、何とか適応していくことも知っている。
僕にできることを、僕の立ち位置で真摯に続けること。
それがチームにとって良い影響となるように、
今はベストを尽くすだけだ。

そして何より、
この地の子供たちの時間が未来へと続いていくように。
そんな思いを形にしていきたい。
そんなチームをこのメンバーで作っている。

重症小児患者と向き合う日々で思うこと
世界はちっとも平和じゃない
少なくとも今僕の見ている世界は
いま僕が感じている世界は
平和なんかじゃない

騒々しい日々の中で
元気に外を走り回り
明らかに異質なアジア人を見つけるなり
目をくりくりさせて興味津々に話しかけてくる子供たち
それとは対照的に
病院の中でぐったりとし
息も絶え絶え横たわる
重症の子供たちと向き合う
しばしば僕は、悲しい気持ちになる

病気でやせ細った腕
乾燥した肌
くぼみ、うつろな目
こんなに悲しい気持ちになるのは、間違いなく僕だけじゃない
お父さん、お母さんはどんな気持ちで我が子を見ているんだろうか
それを思うと言葉にならない
子供たちの為に家族の為に
僕には何ができるだろうか
毎日毎日、
小さなことから大きなことまで必死に考える

チームを作り、問題を解決する
医療の質を上げて死亡率を下げる
合併症の割合を減らす
病気にかからないように働きかけ、予防する
そのシステムを現地に残し
現地の人たちがそれを実現、継続できるようにする

思い描くことはできる
ただ、現実は簡単じゃないのだ

自国や地域の問題だけではない。
隣国や政治、
自然の力や地理的条件
どうにもならないような大きな力に圧倒され
僕らにはどうすることもできないことなんてたくさんある

直近では、隣国での大きな暴力で人々が動き
その先で、感染症と低栄養が起こっている
家族も子供たちも危機にさらされる
僕らは作戦を立て、その地へ足を運び
悪循環の鎖をぶった切るべく
現時点の最善と思われる アクションを起こす

このアフリカの地で
大勢の子供たちの命を守ること
こどもたちの笑い声を未来に繋ぐことは
決して楽ではないのかもしれない
無理なことも数えきれないほどある
この2か月間でいったい何回 悔しい思い をしただろうか
この2か月間でいったい何回 もう疲れた と思っただろうか
今までにどれだけたくさんの家族が 悲しい思いをしたのだろうか
これから先あと何回 悲しい 悔しい思いをするんだろうか

一人でもそんな思いをする人が少なくて済むように
僕らのチームは今日も動く

希望のパズルを作るのは誰か
人はいつか死ぬ
でも子供たちにとって
きっとそれは今じゃない
僕は、そう信じている

暴力による人の移動も、政治的影響も、自然現象も、感染症も、低栄養に苦しむ子供たちも、
今は真っ暗にしか見えないその状況の中でも
それでも
その中から希望になりそうなピースを一つ一つ拾い集めて、
穴ぼこだらけのパズルを作る努力をする

多分、すべてが揃い 完成することはないのかもしれない

例えそうだとしても
誰かが未完成のパズルを作ろうとしなければ
作り続けようと努力しなければ
一体誰が希望をもてるというのだろうか

完成しなくていい
完璧じゃなくていい
どんな形でもいいから希望のピースを拾い集めて
なければ造って
それを一つ一つ アフリカの大地においていく
僕らは希望のパズルを作っているんだと
みんなに知らせ
みんなで一緒にパズルを作ろうと声をかけて回る

僕らも、彼らも決して孤立なんてしていない

僕が大好きで仲良しのブバカ。僕らのチームリーダーでもあるブバカはどんな話の最後にも必ず、この言葉を使う。

On est ensemble
僕らみんな 一緒に

共に向き合い
共に乗り越え
共に生きる

今日も僕らは穴ぼこだらけのパズルと対峙しながら
現地の人たちの希望となれるように
共に乗り越えていけるように
一つ一つ、希望のピースを大地においていく

On est ensemble
共に生きよう

そんなチームの思いをパズルのピースに込めて
今日も僕らは動く

Best,
Tai

※投稿内容は全て個人の見解です。
最後まで記事を読んでいただきありがとうございます!
よろしければフォローも是非お願いします!!
また次回お会いしましょう。

✎2022年5月より✎
皆さんの「知らない世界🌎」を少しでも身近に感じてもらうきっかけになったら幸いです。

みんなで応援し合える場所づくりとして「🏝Naluプロジェクト🏝」サークルを立ち上げました!また、国際看護師をサポートするSNSコミュニティ「🌏NurseTerminal✈🌎」(通称ナスタミ✈)も仲間と一緒に立ち上げています。

https://instagram.com/nurseterminal

是非とも応援よろしくお願いします☺


いつも記事を読んでいただきありがとうございます!!記事にできる内容に限りはありますが、見えない世界を少しでも身近に感じてもらえるように、自分を通して見える世界をこれからも発信していきます☺これからも応援よろしくお願いします🙌