帯化、第三音源集『御池塘自治』

2023年2月10日 19:52

　われわれ帯化は、およそ2年半ぶりに新しい音源集『御池塘自治(おんちとうじち)』をリリースしました。

https://taikafasciation.bandcamp.com/album/3rd-album-2

　さて、ぼくらは一作目の音源集『擬似縁側型ステルス』、そして二作目の音源集『河原結社』と、とても短い制作期間で作品を作ってきました。二作とも録音からパッケージの完成まで1カ月以内だったと思います。あの頃のぼくらはアイデアをそのまま形にしてしまっていいという、ある種の大雑把さと勢いがありました。
　転じて、自主での録音の挫折と、その後浅草橋ツバメスタジオでの録音を経て、じっくりミックスをしていたら、今作の制作期間は2年にまで膨らんでいました(まあ２年かけてアルバムを作るのは割と普通のことなのかもしれませんが)。

　当然のごとく素晴らしい音で録ってくれたツバメスタジオ君島さんの音を中心としながら、やっているあいだは何の手応えもなく、全部やり直そうと思っていた自主録音期のデータも結局はかなり再利用し、そして今作を作っているあいだ、生活のなかでフィールドレコーディングした環境音も合わせて、気づけばこの２年のぼくらが過ごしてきた様々な時間が入り組んだ不思議な音響作品に仕上がっていました。
　今作のメインのモチーフになった「池塘(ちとう)」という語は、高原に堆積した植物の死骸や雨水が形成する小さな池のことで、一部の地域では餓鬼が飢えをしのぐためにこさえた田んぼに見立てて、「餓鬼田(がきだ)」と呼んだりします。池塘の写真を調べてもらうと、高原に小さな池が無数に並んでいる写真が出てくると思います。

　前作は「河」のアルバムでしたが、今回は流れがなくて、もっと澱んでいて、しかも時間をかけてじわりじわりと形成されていく、ひとつではなく複数の池、そんなイメージをもって制作にあたっていました。時間をかけて作品が形成されていくのを眺めているうちに、その「池塘」のニュアンスはまさにこの作品に相応しいものになっていったと思います。まあつまり、やっぱり2年かけないと作れなかった作品なんだよな、と今は思っているということです。

　それにしても作品を作るという営為が不思議なのは、こうやって「いいものが作れたな」となると、その制作期間中にあった嫌なことやめんどくさかったことも、「あれがなかったらこうなってないし、じゃあ全部これで良かったのか」という、謎の諦念が発生することです。
　同時にそれは、いつまでたっても楽器が上手くならないぼくら二人が、自分の持つ身体のままならさや、垢抜けなさや、ぎこちなさ、どうにも抜けない癖なんかを、曲を作っていくなかで肯定できるようになる過程でもあるわけです。そして明確にどこでそうだということは明示しませんが、そのようにして、ままならないばかりのあらゆる対象を、なんとなく肯定したり楽しんだりできるようになっていくこと、それ自体が今作のテーマにもなっています。

＊＊＊＊

　さて、今作はカセットとCDでフィジカルを二種類作りました。もともとぼくは完全にレコードとカセット派なので、「CDなんて死んでも出さないぞ」という決意とともにバンドやレーベルを始めたのですが、何だか最近は一周回ってCDってやっぱ良くないか？という感じがしてきていて、ついにCDも作る運びとなりました。まあCDを否定したいマインドって一種の高二病の類ですからね。

　デザインも随分上達し、今作にぴったりのアートワークを作ることができました。それにパッケージも、今までの作品のような大喜利感はないですが(というか意図的にそれを避けたわけですが)、それぞれ工夫が凝らされた面白い仕上がりになっていると思います。以下に取り扱い店舗をザクっと貼っておきますが、それぞれがそれぞれの仕方で販売の為に工夫をしてくれているので、レビューを読み較べたりすると面白いのではないでしょうか。

　ぼくは他のバンドの活動にはほとんど影響を受けることはありませんが、こういうインディペンデントショップの方々の姿勢には日々影響を受けています。頭が上がりませんよ、ほんと。まあ結局は「自治」ってことを本当に知っているのは、「ぶっ飛んだ振り大喜利」をするアーティストではなく、それを支える流通や販売の人たちなんです。それも本作のテーマで、、なんて野暮な付け足しはやめましょう。

────

3la(東京)

Reconquista(東京)

https://www.reconquista.biz/SHOP/zoenkeikaku024.html

FILE-UNDER(名古屋)

https://www.fileunderrecords.com/?pid=172918722