野流 interview / 不定形のセッション・コミュニティ
2023年の6月、野流(やりゅう)と名乗る二人組が、アンビエント〜スピリチュアルジャズを基調とする瞑想的な作品、『梵楽』をリリースした。オープンチューニングされたオートハープ、エレクトリックピアノ、シンセサイザーが編み上げる、穏やかでありながらプリミティブな「粗さ」を内包するおおらかな音。
しかし『梵楽』の録音を終えた後、野流は、ライブのたびごとにメンバーが変動する不定形のセッション集団に姿を変えていた。野流の結成から『梵楽』の制作、そしてメンバーの流動化など、刻一刻と変化する彼らの活動を支える理念を探るため、野流の立ち上げメンバーであるHyozoと織川一にインタビューを敢行した。聞き手は『梵楽』のリリースを手がけたインディペンデントレーベル、造園計画の島崎。
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1.野流とはなんなのか?
──ではまずは野流の結成の経緯を教えてください。
Hyozo:はい。ぼくはもともとDe Loriansというバンドでキーボードを担当していたんですけど、コロナ禍を経てバンドを脱退することになり、音楽をやめて地元の千葉県の市原市で庭師をしていたんです。その時の親方の武田さんがとても面白い人で、庭師と平行してゴヰチカというカセットテープショップを経営していたんです。それでぼくも庭師をやりつつゴヰチカで働くようになりました。
そのうちにゴヰチカの空き時間を使って、店のなかで地元の友達の織川くんとオートハープを使ってセッションをするようになりました。でもそれは何かの練習というよりは、iPhoneのレコーダーで録音して自分たちで聴き返して楽しむという遊びみたいなものでした。
──人に聴かせることを想定していなかったということですね。
Hyozo:そうです。そうこうしてるうちに、武田さんと一緒にゴヰチカを立ち上げた共同設立者の方がゴヰチカの近くで京葉画廊という画廊をオープンすることになり、そこのオープニングイベントとして音楽と展示をやってくれないかというオファーをしてくれました。それで野流という名前をでっち上げて、織川君と一緒に「概念としての河原」という展示/演奏をおこないました。
──ではなんとなくの遊びでやっていたセッションに、半ばなし崩し的に名前を付けたのが野流だったと。とはいえ、De Loriansで活動されていたHyozoさんが野流の音楽性にたどり着くのはまだわかるとして、一方で織川さんは野流以前は音楽活動をされていないんですよね?織川さんはどういう経緯でオートハープという楽器にたどり着くのでしょう?
織川:オートハープという楽器自体は、Hyozo君が演奏しているのを何度かみていたので存在は認識していたのですが、決定的だったのが2019年に行われたLaraajiの来日公演でした。その時の彼の演奏は視覚的にも音響的にも本当に素晴らしいものでした。さざなみのような手つきでオートハープを弾く所作、川の中を流れていくような柔らかい音響。
──LaraajiはBrian Enoとの共作などもあるオートハープ奏者で、ニューエイジアンビエントというジャンルにおいて重要な位置にいる作家ですよね。
織川:その体験からオートハープを自分でも初めて、家でひとりで演奏したり宅録したりするようになりました。それから少しして、ゴヰチカでのセッションにHyozo君が誘ってくれて、幼馴染というのもあって気軽に楽しくセッションを重ねていきました。
──なるほど。ところで野流という名前にはどういう意味合いがあるのでしょうか。
Hyozo:そもそも河原というものにこだわりがあったので、「平野部を流れるゆるやかな川」という意味合いがある野流という名前をつけました。それからさっきの話のとおり、そもそも織川君は音楽活動の経験自体がないし、ぼくだってバンドはやっていたけれど、正規の音楽教育は受けてない。ポップス、クラシック、ジャズとか、そういう「ちゃんとした」フィールドとは程遠いところで活動をしていたわけです。野流って直訳したら「ワイルドスタイル」とも読むこともできるわけで、そういう意味で「ぼくたちは我流ですよ」というニュアンスも含まれています。
──ライブや制作という「発表」の場や、その場に付随する「技術」から離れてセッションを続けていた二人にぴったりの名前ですね。ではどういう流れで『梵楽』の音源制作に至るのでしょうか?
Hyozo:新高円寺でOTOlabというレコーディングスタジオを運営している石倉さんという人がいて、彼にはDe Lorians時代からお世話になっていたんですけど、ある日「Hyozo君そろそろ何かやらないの?」という連絡がきました。それでiPhoneで録ったセッション音源を送ったら、「うちで録音やってみようよ」といってくれて。それで三日間OTOlabを借りて、オートハープ、エレピ、パーカッションを使ってひたすら即興演奏を重ねていきました。
織川:恐らく40テイクくらい録音したと思います。そのあと3、4ヶ月くらいかけてOTOlabに通いながら編集を進めていったのですが、その時はリリースの算段すらなくて、ただ二人で遊びながら録音したものを編集しているという感覚でした。
──あくまでゴヰチカでのセッションの延長で『梵楽』も作られているということですね。
Hyozo:そうです。そもそも野流が存在すること自体、休みの日に勝手に店のなかを使わせてくれるゴヰチカのような場所があったおかげですし、さらにいうと活動を始めてすらいないぼくらに演奏と展示をやってほしいとオファーをしてくれる京葉画廊のような場所があって、好きにレコーディングしていいといってくれる石倉さんのような人がいて、そうやって大人たちから自然に演奏できる環境を与えてもらったおかげで生まれた音源だと思います。
織川:うん。そうだね。そういう環境のなかでぼんやりやっていたら『梵楽』ができたという感じで、気持ちいいことをやろうというモチベーションだけがあった。
──とはいえ『梵楽』は緩慢な曲ばかりというわけではないですよね。
Hyozo:そうですね。特にA1『艸幻』、B1『曲亭』は大量のテイクをカットアップして、自分たちなりの物語を編集で作っています。A2『虹遊』はもう少し編集が少なくて、B2『空寛』は編集なしで、録った音をそのまま使っています。
織川:『空寛』に関しては使用しているのもオートハープ2台だけだよね。
Hyozo:うん。「気持ちよさ」とか、「なんとなく音を出す」というこのアルバムの精神性を象徴しているのは『空寛』かもしれない。
──『空寛』は二人の身体性というか、「コミュニケーションとしてのセッション」がリアルに記録されている雰囲気がありますよね。
2.影響を受けた音楽
──ではこのアルバムにおいて影響を受けた音楽について聞かせてください。
Hyozo:先ほども触れましたが、一番影響が大きいのはLaraajiの初期作品です。Brian Enoが関わる前の宅録感のあるプリミティブな頃の音源です。
Hyozo:それからLeaving RecordsやMAPPAなどのニューエイジリバイバルのレーベルからの影響も大きいです。でも実は『梵楽』はLeaving RecordsとMAPPAに送ったことがあって、その時は直接「よくない」と言われているんです…(笑)。
──おお。そうなんですね!
Hyozo:ぼくらは彼らに影響を受けているつもりでいたけど、全然理解されなかった。多分正しく影響を受けることができていないということだと思います。
織川:ぼくもLeaving RecordsとMAPPAは大好きでした。特にMatthewdavidの作品が好きでしたね。ニューエイジとサイケが組み合わさった音響感が、横になって目をつむって聴くのにぴったりな作品です。こういう音楽を自分たちでもやろうと思って『梵楽』を作ったのに、どうやら向こうからしたら全然違うものらしい。ぼくらからしたら「あれー?」という感じでした(笑)。
──その二つのレーベルはあくまでクラブ経由のニューエイジというイメージがあるので、ぼくも野流とは違うと思います。
Hyozo:あとポストクラシカルの感覚も強いですよね。でもぼくらの音楽はポストクラシカルという面で見たらすごく拙い。ぼくらはLeaving Records、MAPPAを異質な形でローカライズしてしまっているんでしょうね。
──ではLeaving Records、MAPPA以外ではどういった音楽に影響を受けていますか?
Hyozo:スピリチュアルジャズは二人とも好きです。Alice Coltrane、Phroah Sandersなどのフリーに近いオリエンタルなジャズが特に好きです。個人的な部分でいうと、マイルスやファラオと一緒に演奏をしている、Lonnie Liston Smithというエレピ奏者からの影響は大きいです。『梵楽』のエレピはこの人のプレイを意識しています。
Hyozo:それからTony ScottがFocusのギタリストJan Akkermanと作った『Meditation』というアルバムからもかなり影響を受けています。
織川:Phroah Sandersでいったら、『Thembi』というアルバムに入っている『Red, Black & Green』という曲が好きです。一曲目のアンビエントっぽい曲からのギャップでテンションが上がりますね。音に意識が巻き込まれるような凄まじい曲です。『曲亭』でネイティブアメリカンフルートを吹いてる時にこの曲は意識していました。
Hyozo:ぼくらはアンビエント的な気持ちいい音楽の後に闇に突き落とすみたいな展開も好きですね。
──実際、野流の音楽は素朴にアンビエントと呼ぶには違和感がありますよね。
織川:ぼくらはサイケも好きですからね。『艸幻』のオシレーターの音は、石倉さんに「Picchio dal Pozzoみたいな音を出したいです」ってお願いをして、ローランドのジュノで音づくりしてもらいました。
Hyozo:イタリアのSoft Machine影響下のサイケバンドだね。あの音はワクワクする音だよね。ぼくらはアコースティックな音楽も好きですけど、やっぱり音楽から「電気」を感じたいんですよね。ある種、電子音に対するレトロフューチャーな感覚があるのかもしれません。キッチュなものとしての電子音というか。
──『梵楽』にはアンビエント的なテクスチャーへの感性だけではなくて、もっと記号的な電子音への感性があると思っていたので、今の話は腑に落ちました。一方で『艸幻』の最後のパートなど、もっとプリミティブな部分もありますよね。
※7分以降の展開
Hyozo:あのパートは、木でできたパーカッションと、鉄でできたパーカッションをぼくと織川君がそれぞれ持って、赤ちゃんがおもちゃで遊ぶみたいにうーうー言いながらこすったり叩いたりして録音しました。一番プリミティブなセッションパートだと思います。
3.低音への感性、音によるコミュニケーション
──先ほども触れましたが、やはりニューエイジリバイバルという潮流はクラブカルチャーと近接しながら育っていったものだと思うのですが、今回の野流の音源には、クラブミュージックに不可欠な低音がまったく入っていない。そのうえ明確なリズムを規定するリズムセクションすら入っていない。そこへの感覚を聞きたいです。
Hyozo:まず個人的な感覚でいうと、いわゆるリズム隊、ドラム、ベースというのは、音楽の枠組み、エクセルの「セル」みたいなものを作り出すもので、その上にメロディ楽器が色を塗っていくというイメージがあります。
──DTM的にいうと「グリッド」ともいえますね。
Hyozo:そうです。その枠組み/セル/グリッドをじっくり作り込むというのは西洋音楽をやるうえでは自明のものだと思うんですけど、ぼくらは、特に織川くんは、そこの感覚がものすごく希薄なんです。だから「あえて」リズムや低音をなくしたというよりは、枠組みの部分であるリズムや低音をうまくデザインしていこうという発想が自然と出てこなかったんですよ。代わりにあったのは、枠組みとは関係のない時間の流れだけがあって、そこに自然と色が塗られていくというイメージです。
──型があってそこに色を塗るのではなく、初めから時間と色しかない、と。織川さんはここら辺の話はどうでしょうか?
織川:ぼくは演奏のクオリティを上げるとか、よくできたものを作りたいというよりは、二人で作り上げるコミュニケーションというか時間というかノリというか、そういうものを優先させたいと思っています。その方が自分も気持ちいいし、Hyozo君も楽しい。
Hyozo:以前ぼくがやっていたバンドでは、ドラムの人の意見がすごく強かったんですけど、リズムっていうのは正解/不正解が指摘しやすいから、割とどのバンドもそうなるんじゃないかなと思うんです。でもぼくは演奏するうえで、ただ出た音を肯定するしかないと思うんですよね。織川君と演奏をしているとき、彼がふわーと弾いたらふわーと返すし、激しく弾いたら激しく返すし、音が「合っているか」ということではなくて、ただ音でコミュニケーションを取るというか、ふたりの間で見えない塊を練り上げていくというか、そういう感覚で野流の演奏をしています。
──今の話を聞いて、野流のなかには、音楽的な形式としてのサイケデリックミュージックへの愛だけではなく、サイケデリックミュージックの形成過程への愛があるんだろうなと感じました。ふわっとした身体性とかコミュニケーションが、編集者/録音者である石倉さんや、場所を与えてくれた人たちとの関係性を経ることで「結果的に」音楽を生み出していく。そしてそうやって生まれたものを音源化するうえでも、ある種の「粗」を整えすぎてしまうことなく、ラフに出してしまう。
Hyozo:思想ということではなくて、「サイケデリックな身体のあり方」っていうのはぼくらの作品の根幹にあると思います。ぼくは元々70年代のロックミュージックへの憧れが強いバンドで活動をしていて、若い頃はそういうものも楽しかったんですけど、他人が作ってくれた形式のなかで「やらせてもらっている」という感覚が強くなってきた。
──「他人」というのは「西洋世界」ということですか?
Hyozo:もっと明確にいうと70年代のイギリス人ですね。70年代のイギリス人に憧れて組み上げた技術とか手法を、織川くんというバンド未経験者に合わせることで、全部リセットしたかったのかもしれません。
──なるほど。そういう話を聞いていると、オートハープという楽器が中心となって野流が生まれたことは必然だったのかもしれないですね。ぼくもさっき実際にオートハープを弾かせてもらいましたが、Laraajiに倣ってオープンチューニングにしているおかげでどこを触っても音楽になる。それにタッチの微妙なニュアンスにも敏感に反応してくれる。恐らくオートハープは誰が弾いてもある程度楽しく弾ける。民主的な楽器だなと感じました。
Hyozo:オートハープはそもそもカーターファミリーなどのアメリカのカントリーバンドがギターみたいにコードを押さえて使用していた楽器なんです。
織川:メーカー側はコードバーというパーツを使うことを想定して作っているんですけど、ぼくらは外しちゃったんです。バーを外してオープンチューニングにした方が触っていて純粋に楽しいんです。
4.『梵楽』後の展開
──二人の音楽との向き合い方はよくわかったのですが、現在、野流はデュオという形ではなく、演奏のたびにメンバーが流動的に入れ替わるセッション集団として活動されていますよね。活動形態が変わった経緯を教えてください。
Hyozo:君島結さんというエンジニアの方が運営しているツバメスタジオという、都内のインディーバンドが愛用しているスタジオがあるのですが、2022年の夏ごろにツバメスタジオが入っているビルが老朽化で取り壊されることになって、解体前のセレモニーイベント「ビルの葬式」なるものが開催されたんですね。その「葬式」は、ツバメスタジオと縁のある音楽家たちがビルのなかでフリーな即興演奏をするというものでした。
(「葬式」の様子は、白岩義行さんによって撮影された映像で確認できる。)
Hyozo:ぼくらも君島さんから声をかけてもらって「葬式」に参加することになりました。その時ぼくは野流と並行する形で、シベールの日曜日というバンドで一緒に演奏をしていた水野さんというベーシストの方ともよくセッションをしていたのですが、そのイベントを機に野流と水野さんとのセッションをくっつけてしまおうと思いつきました。
──シベールの日曜日は、裸のラリーズと共振するような音楽性を持つサイケデリックバンドですね。
Hyozo:「葬式」の当日は、ぼくがオートハープ、織川君がオートハープとネイティブアメリカンフルート、水野さんがベースという三人編成でセッションをすることになりました。でもその日のセッションは「演奏する側」と「見る側」がはっきり分かれているようなものではなく、ぼくらがビルの廊下で演奏をしていたら、それを見ていた音楽家たちがどんどんセッションに参加してくるんですね。んoonのJCさんとかkumagusuのプエル君とか、あと島崎さんもボーカルで参加してくれましたね。
織川:本当に素敵な時間だったなあ。
──そうですね。あの日のセッションはすごかった。
Hyozo:ぼくもこの路線はいけるなという感触がありました。とはいえあの日はひとつの「祭り」だったから、終わりが来てしまう。だからああいう空間を繰り返し発生させることができたらポジティブな結果を生み出せるんじゃないかと思い、永遠に完成しないで形が変わり続けるグループとして野流を作り替えることにしました。
──最近だとどういった音楽家がライブに参加していますか?
Hyozo:Klan Aileenの澁谷さんが録音をしているTitan Arumっていうバンドで活動していたアヤスミ君という人がパーカッション、The Ratelの池田さんがフルートで、あとさっきも出てきたKumagusuのプエル君もサックスで参加してくれていますね。それから今度Babican EstateのMiriさんにフルートで参加してもらう予定があります。
織川:千葉に呼ばれた時は千葉に住んでいる音楽家と、群馬に呼ばれた時は群馬に住んでいる音楽家とセッションをするので、ライブをする場所によってメンバーも変わります。
──二人のコミュニケーションという次元を越えて、他の人たちを巻き込みながら活動が拡大しているということですね。一方で本当に輪郭がなかったら「野流」という名前を維持できないわけですよね。
Hyozo:そうです。なのでぼくと織川君と水野さんのほかに、ウェブサイトを作ってくれたり細かい運営をやりつつ、パーカッションとかキーボードで参加してくれる聶、ライブでは琴やギターを弾いてくれていて普段は庭師をやっているコースケ君、この5人がコアメンバーという形で活動をしています。
──それでは最後に今後の野流の活動についての展望を聞かせてください。
Hyozo:いまのところ都内のバンドシーンに深くコミットするつもりはありません。ぼくは野流での演奏活動を、ライブハウスやクラブと縁のない一般の人にも参加できるものだという確信があるので、千葉県の四街道市の役所の人と市民団体として活動するための話し合いをしているところです。
──市民団体ですか!それは面白い!
Hyozo:以前京葉画廊で「音の即売会」というイベントを主催したことがあるのですが、それが参加費を払ってくれた人と一緒にセッションして、そこで録音したものをお渡しするというものでした。
Hyozo:二回目はもっと即興演奏の色を増やして、子供とかお年寄りにオートハープを弾いてもらったり、鈴を鳴らしてもらって、実際に野流に参加してもらうというものでした。「細かい演奏の技術とか、音階とか論理とか、そういうことがわからなくても自然と音を出していれば音楽になるよね?」という問いかけのつもりでこのイベントを開催しました。それをもっと自治体レベルでの活動にしたい。
──オートハープという楽器のある種の民主的な部分が活きてきそうですね。織川さんはどうでしょうか?
織川:普通に生きていたら一人でいる時間の方がどうしても長くなるじゃないですか?なので野流みたいなゆるい共同体を通じて、人と話したり演奏したりする「場」にできる限りいたいなと思っています。
──そういう「場」に対する具体的なイメージはありますか?
織川:もっと具体的にいうと、皆で河原で演奏をしたり、参加者たちがシンセでドローンを作ってスタジオでお互いのドローンを流す会みたいな、ミニマムな催しをやってみたいです。野流は参加する人ごとにモチベーションが違っていいと思うので、それぞれが違うモチベーションを持ち寄って、自然と化学反応が起きるような共同体に育って欲しいです。
編集後記/野流体験
インタビューを終えたあと、ぼくらはインタビューをおこなったHyozo宅で、鈴をしゃんしゃん鳴らしたり、オートハープをじゃわーんとやったり、意味のない歌を歌ったり、ピアニカを吹き鳴らしたり、木造の集合住宅の限界を超えたセッションを繰り広げることとなった。その様子を録音、ミックスしたものを以下に公開する。
オートハープ/織川一
ピアニカ/Hyozo
鈴、鎖、歌/島崎森哉
彼らの言葉はともすれば難解かもしれないけれど、小難しい顔をして頭をひねるよりも、一緒に演奏をしてみるのが、彼らを理解する一番の近道なのだということがよくわかった。彼らのライブはいつでも飛び入り歓迎らしいので、これを読んでいる皆さんも一度野流の輪に加わってみるのも面白いかもしれない。そして『梵楽』のカセットテープは相当かわいい仕上がりなので、こちらもぜひ手に取ってみてほしい。レーベル在庫は完売しているので、野流のライブの物販か以下の取扱店舗で購入可能。
Reconquista
FILE-UNDER
Diskunion
カセット版にはアルバム本編のDLコード、ステッカー二種と野流の理念が書き綴られたミニブックレットに加えて、野流主催のセッションイベント、「しらべ」の一部を切り取った『極乙』のDLコードが付属。
≪野流・アーティストバイオ≫
人と人が、出会い、音を紡ぎ、会話するための流動的な共同体。2022年に結成し、現在は、キーボード/ハープのHyozo(hYouU€a)、インディアンフルート/ハープの織川一、ベースの水野翔太、琴/ギターの佐々木皓介、ピアノ/パーカッション/写真/エンジニアリングの聶を中心としたセッションコミュニティとして、主に都内や千葉県などで活動を行う。
楽器未経験者を交えた即興演奏ワークショップ、セッションイベント、ギャラリーでのライブ、アンビエントを軸にした音楽の制作など、その活動は多岐にわたる。
【contact】yaryu.tokyo@gmail.com
【hp】https://yaryu.com/
【shop】https://yaryu.bandcamp.com
【twitter】https://twitter.com/yarryuu
【instagram】https://www.instagram.com/yarryuu/
≪造園計画・レーベルバイオ≫
フォース・ワールド的な感性で活動を続ける二人組ロックバンド、帯化が主催するインディペンデントレーベル。帯化の作品すべてのリリースを手がけるほか、2021年には謎の電子音楽家、大山田大山脈のリリースを立て続きにおこなう。
同作家の3rdアルバム『Zolpidem』はele-king vol.30特集「2020年代エレクトロニック・ミュージックの必聴盤50」に選出され、Sam Gendelとの共作LPが話題となった秩父のギタリスト"笹久保伸"のライブにもゲスト出演するなど、エクスペリメンタル・ミュージック方面との接点を持ちながら活動を続ける。
【contact】taika.fasciation@gmail.com
【shop】https://taikafasciation.bandcamp.com/music
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