愛着が持てるカメラとオールドレンズで写真を撮るようになってからセカイの視え方が変わった
これまでは主に仕事で写真を撮影していた。
僕はプロのカメラマンをしているわけではない。
WEBディレクターやWEBメディアの編集などを仕事にしている。
それこそクライアント企業のWEBサイトを作る時や、ライターさんに同行して取材先で写真撮影が必要だという時に、出動する。
本当はプロのカメラマンにお願いしたほうがいいのだろう。
しかし、案件によっては予算がとれない時がある。
本当は僕みたいな素人が客先で「カメラマンさんです。」と担当者のかたに紹介されて、"カメラマン"という認識の元、被写体の社員さんや取材対象者のかたを撮影していることは、日々、デザイナーさんやライターさんと一緒に仕事をしている身としては本当に後ろめたい気持ちだ。
そんな形でカメラを仕事で使っていると、カメラ自体に愛着がわかなくなっていた。
そんななか、2019年の2月にバンコクへ行った時のことだ。
僕が運営に携わっているおきなわマグネットの編集メンバーであり、タイに住む古性のち氏(@nocci_84)と、ちょうどに滞在中だった編集者の伊佐知美氏(@tomomi_isa)のふたりと1日タイを周遊する機会があった。
ふたりの写真の撮り方は、僕のものと違っていた。
構図をしっかりと捉え、一枚一枚を大切にするかのようにシャッターを切っていた。
僕の場合は違う。フルサイズセンサーのそこそこ良いカメラに、誰が撮ってもある程度良い感じに撮れる良いレンズで、オートフォーカスで大枠の構図を決めてから少しずつポジションをずらしながらシャッターを連続で切る。
誰かと一緒に写真撮影をしに行ったことなどこれまでほとんどなかった僕にとって、この違いはかなり強く印象に残っている。
100枚撮れば、数枚は良い写真は撮れている。
ただ写真選定に結構時間がかかっていた。
だからレタッチ自体も一枚あたりの時間をそこまでかけずに現像をしていた。
カメラを始めたのは高校生の頃だ、東京にいた時はエントリーモデルの一眼レフとGRで写真を撮っては、写真のコンクールみたいなものに応募してみては、ひとりでもくもくと散歩し、楽しんでいたものだ。
もともとカメラは大好きだったはずなのに。
ああ。いつからそんなカメラを「仕事用」として認識してしまっていたのだろうなと、この時思った。
日本に戻り、すぐさま僕はあるカメラを買った。
FUJIFILMのX-Pro1。
そして以前から、調べては作例を見て、目を輝かしていたオールドレンズHelios44(シルバーの初期型)。
X-Pro2が出ている中、X-Pro1を買った理由は3つある。
1つ目は、X-Pro2はとても今の僕にとってオーバースペックだったからだ。X-Pro1はもともとは10万を超えるものだが、今は3.5万円ほどで買える。スペック面でも価格面でもそこまでの高性能を今の時点で求める必要がなかった。
2つ目は、一枚一枚を大切にシャッターを切りたいと思ったからだ。オートフォーカスの速さなど関係ない。構図を考えながらマニュアルフォーカスでピントを合わせてゆっくりとシャッターを切ろう、そう思った。
そして3つ目は2012年に世に出たカメラだからだ。2012年というと僕がまだ東京にいて、写真を本当に好きで撮っていた時に喉から手が出るほど欲しかったカメラだったからだ。
"仕事用"ではなく愛着の持てるカメラが欲しかった。
結婚すると趣味にかける時間もお金も減ってくる。
ベースギターやターンテーブル、スノーボードも今はもう手放した。
ただカメラだけは手放していない。
それでも、仕事でしっかりとした画質でクオリティを担保するための重いフルサイズセンサーのカメラと、重いレンズは、プライベートだとなかなか持ち歩くことがなくなってしまう。
常に持ち歩くカメラを持って、外に出よう。
そんな想いで買ったわけだ。
道端に咲く一輪の花を撮ってみると、現像した写真は僕の想像以上のもので、まさに「 #ファインダー越しの私のセカイ 」だった。
嫁に「明日、一緒に写真を撮りに出かけよう」と誘ってみた。
モアイ(沖縄では模合という定期的に決まったメンバーと会って飲み会をするような文化がある。)でメンバーの写真を撮ってみては、あとで見返して「ああ、良い飲み会だったな」と笑みが溢れる。
オールドレンズをもうひとつ買ってみた。
ASAHI PENTAXのSuper Takumar 28mm F3.5。
これまであまり僕が撮らなかった柔らかさだ。
こういうのが撮れるなら、きっと視野がとても広がる。
フレアと顔が被っても、なんだか僕にとっては愛着が湧く一枚だ。
ここ数年、純粋に写真を撮るためだけに出かけるということが無くなっていたが、もっと写真を撮るのが楽しみになった。
これからは学生のときに撮っていた様に、道端で何気ないものを一枚一枚撮ってみては、被写体に気づいてよかった。撮ってよかった。と思える写真をたくさん撮っていこうと思う。
お客さんから修正依頼のない写真。自分で思うがままに撮るものを撮れる。だから写真撮影は楽しい。
そして仕事用で使っていた愛着のなかった一眼レフカメラも仕事で僕を助けてくれる大切なカメラになった。
愛着があるカメラを持ち、改めて気付かされました。