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【怪談】林道で二人に分身した友人A

これは僕がまだ大学生のころの話だ。

大学2年の夏休み。


以前から大学の男友達Aに「女の子紹介して」と何度もお願いをされていたので、

知り合いの女の子Bにお願いをして、1泊2日の合コン旅行?的なものを企画した。


男子は僕と友人Aの2名、

女子は知り合いの女の子と、その女の子の短大の友人2名

合計5名で1台のレンタカーを借りて、関東のある湖(Y湖とする)の近くにある1塔貸しのロッジへ泊まりにいった。


ちょうど、そのY湖で花火大会があるとのことで、その時期に合わせて旅行をセッティングをした。

女性になかなか縁のなかった友人Aにとっては、

楽しい夏休みが始まったばかりで、女の子3名と花火大会に行くことができ、

しかもそれが1泊2日の旅行!もちろん夜はBBQだ!!


そんなわけで、旅行当日、集合時からテンションがものすごく高い。


僕が運転、友人Aと女の子3名を乗せて、いざY湖へ車を走らせる。

道中、助手席に座っている友人Aは、それはもうテンションが高く、

女の子たちと楽しく話をしていた。


途中、サファリパークに寄って動物を見たり、とても楽しい時間だった。


そして、夕方にY湖の近くにあるロッジへ到着。


荷物を車からおろし、ロッジの中や周りをちょっと探索したら、すぐ花火大会の会場であるY湖へ向かった。


Y湖へは林道になっている坂道を15分ほど歩いていく。

そして、花火大会の会場へ到着し、僕らはシートを敷いて花火を見た。

買ってあったビールを片手につまみを食べながら女の子たちと花火を見上げる。

友人Aは「あ〜最高!!」「今年の夏は今までにないぐらいに幸せだな〜」とか花火があがっている最中、話していたが


途中からなんだか様子がおかしくなってきた。

あれだけ喋っていた友人Aが急に何もしゃべらなくなった。


女の子たちはあまり気にすることなく携帯で写真を撮ったりしていたが、

僕は気になって友人Aに「どうしたの?」と聴いてみた。


「さっきからおしっこ漏れそうでやばい・・・・・」


そう彼が言う。


花火大会はみなさんもわかると思うが、とにかくトイレに行列ができる。

それを待っていることもできないぐらいおしっこを漏らしそうだと。


「もう直ぐ終わるからすぐに帰ろう!」

僕は友人Bにそう言い、友人にもう少し我慢してもらうことにした。


10分ほどして花火大会が終了し、ぼくたちはすぐロッジへの帰り道へと向かう。

もう21時をすぎている、暗い林道は100メートルにひとつ灯りがあるぐらいの暗さで、暗いところでは人のシルエットが見えるぐらいの明るさだ。

なので、女の子たちの見えないところで立ちションをすれば解決する話なのだが、

友人Aは、この日、初めて出会った女の子のうちの一人に一目惚れをし、

その子に立ちションをしたと思われるのがイヤといい、頑なに拒んだ。


女の子たちは、この友人Aが今にもおしっこを漏らしそうだとうことを一切知る由もなく、花火大会の余韻にひたりながら3人並んで、僕とBの前を歩いた。

ロッジまであと5分ぐらいの場所。友人Aはすでにまともに歩けないぐらいおしっこが出る寸前だった。

急いで走ったりなんかしたら、暴発するだろう。

そのくらいギリギリのようだった。


ここで、僕はあることを思いつく。


そういえば友人Aはとても怖がりだ。

そんな友人Aの前で「わぁ〜〜〜!!!」と言い、走って逃げたらどうなるだろう?

と、ふと悪知恵が働き


実行してみた。。


Aの横で「わぁ〜〜〜〜〜〜〜!!!!」と絶叫し、

5メートルぐらいさきを歩いている女の子たちを追い越し、ひとり走っていく。

それに連られ、女の子たちも

「なに???きゃ〜〜〜!!!!!」と言いながら僕に続いて、走り出す。


おしっこが今にも暴発しそうなAはその光景を見て

「おい!!!なんだよ!!!待てよ!!!!」と叫んでいる。


100メートルほど走っただろうか、僕は足をとめ、すぐ後ろを走ってくる女の子たちも追いついてきた。

「いきなりなに??なんかいたの???」

と女の子が僕に聴いてくる。


僕「Aがおしっこ漏らしそうだから、怖がらせて走って逃げようかと思って」


女の子「最低w」

というやりとりをしながら、後ろから「待てよ〜!!!」と言って早歩きでこちらへ向かってくる友人Aを4人で見て、笑いながら待っていた。


怖いけど、おしっこしたいから走れない。

でもなるべく早くこちらに追いつきたい。

そんな彼はモジモジしながら早歩きをして向かってくる。


ここで、ぼくら4名はとても考えられない、ありえない光景を目にする・・・・


ちょうど友人Aが灯りの下付近を通過した瞬間、

まっすぐとこちらに向かってくるBと、90度方向転換し林の中へ入っていくBと

2つに分かれたのだ。


それを見ていた僕らは、

「あいつ分身したよね!??」

「なにいまの??」

「幽霊???」

と驚愕し


「うわーーーーーー!!!」と彼を見捨て、全力で逃げた。


「なんなんだよ!!!!まてよ〜!!!!!」

という彼の声を無視し、僕らはとにかく走って逃げた。



そりゃそうだ。

彼は身長が低く、B系と呼ばれるようなダボダボのズボンに長めのTシャツ、とにかく特徴的な格好をしていたので、見間違えるはずがない。


そしてその光景を見た瞬間、

僕らは言わなかったが、無意識に

林に入っていく彼と、こちらへ向かってくる彼のどちらが本物なのかわからなくなり、

とにかく逃げるという手段しか思いつかなかったのだ。。


僕ら4人は先にロッジにつき、

走って息もまだ落ち着かない状況で、さっきの光景の話をしていた。


�「さっきの何!!?」

「いや、確実に二人に分かれたよね!???」

「こわっ!!!!」

「Aくん大丈夫かな?」


など話をしていたが、

すぐAが走って戻ってきた。


「なんなんだよ!!!!おまえら!!!!!なんで走り出すんだよ!!!」


どうやら、僕らに置いてかれた彼は、怖かったけど、おしっこが漏れそうだったので、

結局ふてくされながら立ちションをしてきたようだ。



怒っているAに

「いや!!!Aが分身したんだよ!!!!林に入っていくAと、こちらへ向かってくるAに!!」


しまいには女の子のひとりが泣きながら怖がっている。


それを見た、Aも僕らは嘘をついているとは思えなくなり、

「ドッペルゲンガーとか?」

「俺死ぬのかな?」などとにかく怖がっていた。


とにかくBBQの時間が迫っていたので

BBQ前に、温泉に入った。


温泉に入りながら、

僕はAに先ほど見た光景を細かく話をした。



彼は、それを怖がりながら聴いていて、

とにかくこのあと自分の身に何か起こるのではないかと、

すごく心配していた。


しかし、温泉からあがり、BBQをするころには楽しすぎて

僕らはもちろん、彼自身も起きたことを忘れていた。


結局そのあと、夜遅くまで女の子たちと恋愛話などで盛り上がり、結局何も起こることなく朝を迎えた。


二日目もY湖をあとにし何事もなく観光をしながら、帰路につく。


結局、あの瞬間だけ怖かったが、家につくころには僕らは一切にその話をすることもなかった。


話はここで終わる。


でも僕は、勝手にこう解釈している。


あの時見た、「林に入っていくA」は

おしっこをしたすぎて、出てしまった生霊なのではないかと。



※この話は実話を元に書いています。


東京出身。7年間の沖縄移住を経て三重県津市へ。沖縄移住応援WEBマガジン『おきなわマグネット』元編集長。神社メディア『sanpai. 』運営。Webデザイン、マーケティング、他制作ディレクションなどを生業としています。年間200社ペースで全国の神社を参拝しております。