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「誰かがいる気がする環境」が学習効果を上げる?

※全文公開、投げ銭方式

こんばんは、駆け出し眼鏡です。昨日学習動機について少し書いたところ、今日何人かきら読んだよとお声がけいただきました。ありがとうございます。

需要がありそうなので、もう少し教育学の話をしようと思います。今日は自分の卒業論文の話をざっくりと紹介します。
※実は今日が1ヶ月毎日更新プロジェクトの最終日でした。本当は振返り企画をやる予定でしたが、急にこのネタを書きたくなったので、気持ちを優先しました。振返りはまたの機会に。

教育工学(Educational Technology)とは
ぼくの大学での専攻は教育工学(Educational Technology)でした。あまり聞いたことがない方が多いと思うので簡単に説明します。

大体教員になりたいの?と聞かれる教育学部ですが、実は更に下層の分類があります。例えば、学校と社会の関係性を対象とした教育社会学や、海外の教育制度を対象とした国際教育学、法律や行政を対象にした教育行政学など、その種類は様々です。

教育工学は、教育を科学的に検証する学問で、比較的新しい領域なのですが、さらにその中にいくつかの分野を内包しています。ぼくの専攻はオンライン教育やeラーニングを対象とした分野でした。

オンライン教育をよりリアルに近づける
オンライン教育を対象とした学問の中で、ホットな話題として効果測定があります。オンライン教育には効果があるのか。あるとしたらどんな条件の元か。を検証する分野です。

ぼくはその中でも、「オンライン教育をリアルに近づけること」が学習効果を高めるのではないかという仮説を立てました。なぜなら非同期的に行われる学習では、伝えられる情報量に限界があり、また現時点では受講者が仕組みに慣れていないため、適切な学習が行われないと考えたためです。

ここで二つ概念を紹介します。今流行りのVRなどで用いられる概念で、テレプレゼンスとソーシャルプレゼンスというものです。

テレプレゼンス:バーチャル空間に自分が存在するかのように感じること
ソーシャルプレゼンス:バーチャル空間に他者の存在を感じること

この二つの概念は、言い換えれば仮想空間上でどれだけリアルを感じているかを表すものです。そこで、仮にぼくの仮説が正しければ、この二つの概念と学習成果には関係があるのではないかと考えました。

ソーシャルプレゼンスと学習効果の関係
本来は実験を行い、適切に数値を計測すべきですが、この仮説の検証は修士論文で丁寧に行いたかったので、卒業論文ではメタ分析という手法を用いたレビュー論文を書きました。また二つの概念のうち、他者の存在を示すソーシャルプレゼンスに注目して、学習成果と学習満足度との相関係数を対象とすることにしました。

メタ分析:先行研究レビューの手法の一つ。過去の研究結果を統計的に統合して効果検証を行う

2ヶ月ほどひたすら先行研究を探す日々を越え、ようやく出た結果は、**ソーシャルプレゼンスは満足度には正の相関があり、学習成果には相関が見られないというものでした。

結果は残念なものでしたが、この結果はMOOCsの修了者の重要な特徴にオフラインコラボレーションが上がっていることなどから言われている、コミュニケーションがオンライン学習においても重要だという主張と矛盾します。

そこで更に詳しく調べたところ、先行研究より満足度がモチベーションやエンゲージメントに関与し、結果的に学習成果が上がる構図が仮説として浮かび上がりました。かなり論理の飛躍もあるので検証は必要ですが、ひとまずソーシャルプレゼンスはオンライン教育に重要だと言えそうです。

なぜソーシャルプレゼンスに着目したのか
ここで最後になぜソーシャルプレゼンスなのかを説明しておきます。
コミュニケーションが重要ならコミュニケーションをとれる仕組みを作ればいいはずなのに、なぜソーシャルプレゼンスなんていう概念を導入したのかについてです。

答えは端的にオンライン教育がいつでもどこでも学べることが一つの売りだからです。そこにコミュニケーションが深く関わってくると、どうしても同期的な学習が必要になります。しかし同期的な学習では「いつでも」のメリットが担保されません。

しかしソーシャルプレゼンスでコミュニケーションの効果ぎ代用できるのであれば、何も本当にコミュニケーションを起こす必要はありません。学習環境上で、他の人がいるように感じれば、何も人がいる必要はないわけです。

ニコニコ動画のように、コメントを動画に埋め込む形式を擬似同期型のメディアと呼びます。別々の時間に動画を見ているはずが、盛り上がるタイミングで「過去に誰かが書いたコメント」が流れてくると、一緒に盛り上がった気がするわけです。この形式を上手く応用すれば、「いつでも、どこでも」を担保したまま、効果的な学習を行うことができるかもしれません。

書いてみると思ったより長くなりました。今日は遅い時間に書いているので、特に参考文献なども載せませんが、要望があれば追記していきます。改めて書いてみると、論理的な飛躍も多いし、上手くいくかもわからない主張ですが、何かしら新しい部分はあるのではないかと思い共有してみます。

本日も最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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