若い教員が生徒になめられるのは、ある種の洗礼なのだろう。

自分が高校生だった頃も、先生になめていると思われるだろう態度をとっていた自覚もある。

実際、“なめられる” ことによる恩恵もある程度感じてはいる。

それは生徒との距離が近くなることである。

これによって生徒がこちらに見せる顔も変わってくるし、僕にしか聞き出せないことも増える気がする。

特に生徒指導の面では不都合もない訳ではないが、今のところは大きな壁に直面したことはない。

強いて言えば、一部の女子生徒から異常なまでの嫌悪の目で見られることくらいだが、こちらが何かしたのではないかと不安に駆られる程度で、お子さまを相手にしている訳なので、好きにすればと思っている。

いずれにしても、生徒との距離が近いことで、ほかの教員では得られないだろう情報も得ることができる。

良い悪いは別にして、今の僕にはまだこういう接し方しかできないのである。

そもそも、身長が低いせいで、精神的な面だけではなく物理的にも目線が近いので、まだ数年の間はこういう立ち回りをしなければならないだろうと覚悟はしている。

周りからすればなめられていると見えるだろうし、実際僕もそう思うが、仕方のないことなのだろうと思う。

そういう立ち位置に落ち着いてしまったので、もはやどうすることもできないが、真面目な生徒はそんな僕を相手にしても、きちんと指導を聞き入れてくれるので、それで十分じゃないかと思う。

僕にしかできないことがあれば、他の先生にしかできないことも当然あるし、そっちの方が断然多い。

経験も能力もまだまだ足りてない僕は、そうやって学校現場を乗り切るしかないのである。