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【観劇レポ】クリスマス特別カーテンコールの劇団四季「オペラ座の怪人」

観劇レポ。今回は今年2回目、5カ月ぶりの「オペラ座の怪人」です。

元々12月は4本ミュージカル観劇の予定があったので、それ以上に観劇を増やすつもりはなかったのですが、劇団四季はこの時期の公演でクリスマス特別カーテンコールという粋なプレゼントをしてくれます。
「カーテンコールでお米3杯食べられる」を自称する僕としては、そりゃあ見に行くしかない、ということで急遽19世紀パリへ。

ちなみに前回のレポはこちら。

特別カーテンコール

通常カーテンコールを1回終えたあとに、支配人コンビが出てきて特別カーテンコールのお知らせ。ささやかながら良いクリスマスを過ごせるように、と。何がささやかなものか、特大プレゼントですよ。

オールキャストでパイプオルガンとともに合唱。「オペラ座の怪人」と同じく、19世紀のフランスで作曲された曲との解説があったのですが、曲名は忘れちゃった…「フランスのパン」みたいなタイトルやったような…。とりあえず絶対パンではない気がする。

星空のような背景と、青を基調とした照明。聖なる夜の演出として本当にヨーロッパのクリスマスの夜に瞬間移動したかのような空間。キャストが半円状に並んで聖歌隊のように歌う讃美歌のごとき合唱と、荘厳で神秘的なパイプオルガン。

夜の情景が似合うオペラ座の怪人の世界観にマッチしていて、特別カーテンコールと言いながら、さながらエピローグのようでした。ファントムもこの夜ばかりは、神の祝福を受けられたでしょうか…。夜に加えて、冬という季節もオペラ座の雰囲気に合っているような気がしますね。

特別カーテンコールのあとは通常カーテンコールへ。と言いながら、いつもより回数が多かったような気がするのは気のせいでしょうか?ああ、やっぱりカーテンコールはええのお。ラストの「いくよ~せーの!」的なノリからの走り出しは見るだけで楽しくて幸せ。最後はファントムがお辞儀をして幕袖へ。

僕はキリスト教徒でもないので(そしてこういうイベントシーズンは頭がお花ばた…浮かれた方で街が溢れかえるので)、クリスマスというイベントにはあまり関心ない中、クリスマスイヴ公演を狙ったわけではないのですが、とても素敵なプレゼントをいただきました。

ちなみに、僕の周りの席は軒並みカップル(しかも聞こえてくる会話から察するに観劇が好きというわけではない)でした。いろんな人にミュージカルのすばらしさを知ってもらえるのはいいことです。別にカップルに囲まれたことに対しての感想はありませんよ。決して。…決して。

キャスト

今回のキャストはこちら。

12/24マチネ

7月に観たキャストとはガラッと変わっております。四季はキャストがローテしていくので毎週のキャスト発表が楽しみですね。推し活で観劇される方にとっては、推しの方を狙っていくのは難しいですけどね。

ファントムの岩城さんは美しいテノールが印象的。物語が進むにつれて心の鎧がはがれていくような繊細な演技に加え、どこか深みや渋さも感じる。前回観た清水さんのファントムは若くて現代的な印象があったのですが、それと敢えて比べると、大人っぽさがあるのかなあ。心が歪んだまま年齢を重ねてしまったファントムと言いましょうか。
ラストのI love youを何回か呟くシーンは、クリスへの溢れて止まらない想いが言葉になって流れ出すような全身全霊の演技で、ただでさえ涙を誘うシーンやのにクリティカルヒットで心打たれました。

余談ですが、ファントムがクリスに仮面を取られ、美しいものへの憧れを口にするシーンが、今回なぜかめちゃくちぇ心に刺さっています。ありますよね、コンプレックスゆえにその対極にあるものを異常に求めてしまうこと。

藤原さんのクリスティーヌは「THEクリスティーヌ」という印象。歌声は終始力強さがありつつも正の感情も負の感情も素直に表現され、特に後半は恐怖や憔悴もありのまま素直に感じるクリス。クリスは特に冒頭、夢も世界に意識が行きがちなちょっと不思議な子、という感じですが、藤原さんクリスはそのあたりもナチュラルな感じ。聞けば、藤原さんはクリスデビューが2022年だとか。今後さらに進化していくのでしょうね!

光田さんのラウル。四季はどのキャストも基本的に、歌もセリフも聞き取りやすいですが、とにかくお声がすごく聴きやすかった。ファントム・クリスとの三重唱でもラウルがはっきり聞こえるくらい。墓前の三重唱はやっぱり圧巻ですね。

メインキャスト以外で個人的MVPを差し上げたいのがジリー親子。マダム・ジリーは怪人への鬼気迫る本心からの恐怖を感じる。実はファントム側の人間なのでは?と思わせる怪しさやミステリアスさが魅力的なキャラクターですが、過去にファントムを観た時の恐怖をトラウマのように抱えて生きているのが伝わってくる。
メグ・ジリーはマダムの娘で、クリスの友人でもありますが、慈しみと憧れと友情を強く感じました。そしてラストシーンでファントムの仮面を見つけ、掲げるのも彼女ですが、毎回印象が違う。今回は「音楽の天使」が天に帰っていったことをストーリーテラー的に語るような印象でした。

劇団四季のオペラ座の怪人はすごいらしい

今年2回目、通算3回目のオペラ座でしたが、回を経るごとに新たな発見や気づきがあるのが面白いところ。今回は2階席だったのですが、冒頭のオペラ座劇場が復活していくシーンを上から見て、装置、タイミング、照明、あらゆるものが精巧に組み立てられているのがよくわかりました。2階席は、ステージ全体を俯瞰して見ることができるのがいいところです。

「劇団四季のオペラ座の怪人はすごいらしい」というのが本公演のキャッチコピーですが、本当にすごいです。「マスカレード」をはじめとする豪華なシーンももちろん、心の機微を歌に乗せるミュージカルの真髄も見ることができます。

また、四季がやっている他の作品は、ディズニーなどストーリーがわかりやすい話も多い中、オペラ座は少し難しいところもありますが、日本上演開始から35年経とうとしている今でもなお、愛や美しさが何たるかを訴えるメッセージ性は強く普遍的です。テーマメッセージが普遍的だからこそ、見るときの自分の状況や心境によっても、受け止め方は変わるでしょう。

さて、大阪公演は来年の夏まで。すでにもう1回見たくなっていますが、果たしてあと何回オペラ座に向かうことになるでしょうか!

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