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【観劇レポ】心を受けると書いて愛 ミュージカル「天使にラブソングを」

今日も今日とて観劇レポ。ミュージカル「天使にラブソングを」大阪公演、初日&2日目のレポです。

主人公デロリスを演じるWキャスト、森公美子さんと朝夏まなとさん、それぞれの大阪初日でした。初日は2階席、2日目は1階センターブロックと、どちらも席に恵まれました。2日連続で贅沢なこと。

ストーリーは言わずもがな、映画でも有名な作品。多幸感にあふれる魂に響く作品です。

心を受け入れる

主人公デロリスはスター歌手を目指す女性ですが、その真の願いは「人に受け入れられること」。彼女は歌を通じて、たくさんの観客に受け入れられることを夢見ていましたが、シスターたちと交流する中で、彼女たちこそが自分を受け入れてくれた存在、かけがえのない存在であることに気付きます。

「心」を「受」けるで「愛」と書きますが、歌を通じて心を通わせたデロリスとシスターたちは、まさに愛を体現していたということでしょう。そしてデロリスは歌だけでなく、シスターとして勤勉に聖書を読み込んでいた。それは誰のためでもなく、デロリスの本来持つ真心から出た行動で、修道院長もその心を知り、彼女を受け入れる。心そのものは目に見えなくとも、歌や行動に表れる。

今回デロリスはWキャストで、モリクミさん、まあ様と全くタイプの違うお二人。

モリクミさんはやはりコメディエンヌの極みというか、ダイナマイトボディから溢れる愛嬌とユーモアがたっぷり。「どこに隠れろっていうのよ」というセリフが冒頭にありますが、まあ様が言うと普通のセリフなのに、モリクミさんが言うと笑いになる。モリクミさんにしかないセリフややり取りもあったような気がします。
一方で生来の優しさや面倒見の良さもありつつ、パワフルな歌声を響かせる姉御肌なデロリスでした。そして修道女の衣装がよくお似合い。初演から演じられているということを抜きにしても、ここまでピッタリな役はないでしょう。

まあ様のデロリスは、スター性のあるデロリス。それゆえに、トップ歌手になるという夢が叶わない切なさや辛さ、もどかしさが伝わってくる。そして長い御御足で舞台を駆け巡る様はやっぱりトップスター。シスターと一列に並んで足を上げるところも、まあ様と希帆ちゃんだけ宝塚感が溢れてました。大階段が見えたわ…。カーティスのプレゼントである真っ青なジャケットも、モリクミさんは「どうやって着ろってのよ!」と怒りますが、まあ様はなんと着こなしてしまうんですね。このギャップよ…。まあ様デロリスは1階席の割と前の方で見れたこともあって、より表情の機微や仕草を堪能できました。

心を解き放つ

音痴なシスターたちは慎ましく、壁の中で清貧に生きてきた人たちですが、デロリスによって「楽しく歌う」ことを知ります。楽しく歌う様は、観ている人も楽しませる。1幕終盤から2幕冒頭にかけて、心湧きたつ、心が解き放たれるシーンの連続。ハッピー系のミュージカルでは、カーテンコールではいつもそうなのですが楽しさで涙が出る。今作はもう、1幕の時点で涙が止まりませんでした。

そして、自分に自信のない修行中のシスター・メアリー・ロバートは顕著な例で、歌によって自分の心を解放し、笑顔と高音を世界に響かせる。

真彩希帆さんの「私が生きてこなかった人生(リプライズ)」は、まさにこれを象徴していて、舞台の上でロバートが歌い上げるとともに、彼女を縛っていた紐がホロホロとほどけていくような、嘆息する解放感がありました。重い鎖がガシャンガシャンと外れるのではなく、柔らかい(けど破れない)紐や絹のイメージ。観ているこちらも心解き放たれるような歌でした。

心をくすぐる

音楽も素晴らしいのですが、コメディとしても非常に面白い作品。シスターたちが繰り広げる「カトリックジョーク」も、分かるとクスっと笑えます。最後のエディとデロリスのキスシーンも、祈るシスター、キャーっていうシスター、呆然としているロバートと、反応様々で面白い。
そして純度100%の谷口さん演じるパトリックはひたすらカワイイし、春風さん演じるラザールスの愛ある皮肉っぽさとハッチャけも堪らない。酸素注入するくらい激しいラップをかます春風さんを観れるのはシスアクだけ!

カーティスとその手下トリオもアホで可愛らしい。カーティスはTHEヴィランという感じですが、手下トリオを見るとなぜか無いはずの母性が湧く20代男性is僕。オハラ神父がどんどん昭和歌謡ショーの司会みたいになっていくのもジワジワ来る。何気に神父様が一番ノリノリなんですよね‥‥。それで良いのか教会。

そして鳳蘭さん演じる修道院長は、決してコミカルな役ではないはずなのに、真面目さと厳格さゆえの笑いがある。面白いシーンはいくつもありますが、デロリスを博愛の精神で受け入れろという神父に対し、「(博愛の誓いは)取り消します」と即答する場面が特に好きです。終演後もずっと院長が「シスター・メアリー・クラレンス!」と呼ぶ声が頭に残っています。鳳蘭さんのパワーですね。

カーテンコール(ダンスパート)

シスターアクトのカーテンコールは、観客も踊れるコーナーがあります。振り付けは主に手下トリオが一人、パブロ役の木内くんが、作中と同じくカタコトの日本語で指南してくれます。

まだ声出しは禁止のご時世なので、お口はミッフィで!と木内くん。2日目はキティちゃんで!になってましたが、ややウケ(キティちゃんは口がないというシャレ)。キャスト陣からも微妙な反応。負けるな木内くん!
他にも1日目は「2階、3階はこの劇場、傾斜がすっごいから座ったままで楽しんでね」と言っていましたが、2日目は同じことを言った後に「…そうでもないか、まあいいや」と言ってました。確かに梅芸はそれほどキツイ傾斜ではない…。

特に全体を通じて2日目は、木内くんのテンションがおかしかったらしく、しかも舞台袖で大きな物音がしたこともあり、まあ様から「グダグダ」と言われてました。負けるな木内くん!

「キンキーブーツ」もそうですが、観客も踊れるフィナーレっていいですよね。木内くんは「身も心もシスター!(髪をさらっと手で払う仕草付き)」というアクションを流行らせたいみたいです。流行るといいね。

カーテンコール

フィナーレから続く形でカーテンコール。最後の銀色の衣装が煌びやかで、セットも虹色に輝くファンタジーな世界。エレクトロパレードかな?

大阪初日はモリクミさんでスタート。カーテンコールでは、感極まって涙を流されるモリクミさん(もちろん、ええいああもらい泣き)。大阪に来るまでに、例の菌のせいで公演中止にもなり、ステージに立てることの喜びと感謝を語るそのお姿には、もうホンマに涙腺崩壊。最後の最後まで「大阪最高!!」「大阪ありがとう!」と元気に手を振って袖へ歩いて行かれました。

大阪2日目はまあ様初日。ダンスコーナーでは「大阪好きやで!」と関西弁でお言葉頂戴しました。終了後も拍手止まず、アンコールでカーテンコール。エディと決めポーズをして終幕。まあ様の挨拶は、元男役なのが抜けないのか、めちゃくちゃ男前です。好き。

人は自由、なりたい人に

ここ最近観たミュージカル・・・「アナ雪」「エリザベート」「アラジン」「キンキーブーツ」と、偶然にも「心を自由に」「なりたい自分になる」みたいなメッセージのある舞台が多くありました。そしてこのシスアクもまた、メッセージの一つにこれがあります。

カッコいい男に、デロリスを守れる男になりたいエディも、嫌なことは嫌とはっきり言えるくらい強い意志を持ちたいロバートも、そして大切な人とつながり、受け入れられたいと願うデロリスも、なりたい自分になるために、そうなれていない自分と戦いながら生きているキャラクター。

そして音痴だったシスターたちが、自分たちの中に湧き上がる音楽を解放して、天まで声を響かせる様は、この作品を象徴するシーン。1日目も2日目も、多幸感と解放感とで涙が止まりませんでした。世の中には悲しい涙、悔しい涙もありますが、楽しい涙もあるんです。

心を自由に。楽しむことを忘れずに。そんな風に生きていきたい。そう思える作品でした。

ハッピーエンド

今年は様々なミュージカルを観てきましたが、やはりわかりやすいハッピーエンドの作品は心が洗われる。もちろんバッドエンドも好きなんですが…幸福感で満腹になるといいましょうか。

大阪のあとは全国公演が控えています。落ち着かない世の中(いつまでこの言葉言い続けるんでしょうね)ですが、無事完走されることを願っております。というわけで、

身も心も…シスター〜!

おあとがよろしい…のか…?木内くん、これ、流行る…?

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