製品中心で経営すると陥る_マーケティング近視眼__という罠

製品中心で経営すると陥る「マーケティング近視眼」

こんにちは、村田泰祐です。今回はハーバード・ビジネス・スクールのセオドア・レビット教授の「マーケティング近視眼」を読んだので、まとめてみたいと思います。

この「マーケティング近視眼」は1960年に発表された有名なマーケティングに関する論文、というのを先輩に教えて頂き読むことにしました。

論文は上記の「マーケティングの教科書」の第3章に収められています。この本には、フィリップ・コトラーの論文、ブランド評価の新手法、ブランド・コミュニティなど興味深い論文もあるので是非おすすめしたい本です。

今回は「マーケティング近視眼」にのみ絞り、一体どのような"罠"なのか紹介したいと思います。

事業衰退の原因は経営の失敗である

主要産業と呼ばれるものであれば、成長期があれば衰退期も必ずあるものです。成長の真っただ中にあると思われていた産業が実は成長が止まっていたことも。

では、その成長が止まってしまったのは市場が飽和したからなのでしょうか?レビット教授は失敗の原因は経営の失敗だと言います。つまるところ、経営者の失敗なのです。

一体どういうことなのでしょうか?

鉄道会社が成長しなくなったのは、経営に大胆な想像力がないから

鉄道が衰退したのは、鉄道以外の移動手段である自動車、トラック、飛行機に顧客を取られたからではありません。

鉄道会社は自分たちを「輸送事業」と捉えずに、「鉄道事業」と考えたために顧客をどこかへ追いやってしまったのです。

事業の定義を誤り、輸送の手段が欲しい顧客中心ではなく、あくまでも自分たちは鉄道会社であると製品中心で考えた経営をしていたのが失敗の原因です。

「前世紀において最も進んだ鉄道が、それを支えていた想像力を欠いたために、みじめで不名誉な地位に落ちていくのを見ると、慚愧に耐えない。いま鉄道に欠けているものは、創意と手腕によって生き残り、大衆を満足させようという会社の意思なのである」-哲学者・ジャック・バーザン

成長産業など存在しないのに、そう思い込む4つの罠

レビット教授は成長産業などない、と論文の中で言い切っています。そして、多くの経営者が急成長する産業にも衰退が来ることを見抜けていない「近視眼」になっていると主張します。

では、なぜ経営者は近視眼に陥るのでしょうか?

①人口増加。今後も豊かになる人は増えるから成長する、と思ってしまう

②製品を脅かすような代替品が出てこないと思っている

③大量生産こそ正義。生産量が増加すれば、限界コストが下がると過信している

④製品はR&Dで品質は改良され、生産コストが下がるという先入観

レビット教授は、この4つの思い込みが経営者に存在するために近視眼になっていると言います。

(論文では、この4つの罠に対し細かく反証していますが、本記事では割愛)

顧客中心の企業になるにはマーケティングマインドとリーダーシップが欠かせない

衰退していった産業、そこにいた事業会社は、顧客中心ではなく、あくまでも自社の製品中心に物事を捉え、かつ4つの甘い見立てがあるために消えていきました。

レビット教授は、経営者の使命とは顧客を創造できる価値を提供し、顧客満足を生み出すことだとしています。

そして、このことを組織に浸透させる活動、CEOがどこを目指すのかという方向性を示すリーダーシップが必要なのです。


この論文を読み終えて、大きなビジョンを掲げる企業が自社の製品にとらわれず、広く顧客の課題、ニーズを解決する企業であろうとしていることが分かりました。

顧客中心のビジョンがあり、それに基づいた新規事業を推進している企業としてUberを連想しました。

移動したい人と空き時間で自動車でお金を稼ぎたい人のマッチングだけでなく、Uber eatsのようなデリバリーサービス、自動運転技術、空飛ぶクルマなど多数展開しています。

論文では鉄道会社は顧客の移動したいニーズにこたえられませんでしたが、Uberは移動というニーズを解決する「世界を変えていく機会の創出」というビジョンを大きく掲げています。

製品中心ではなく、顧客中心で自分たちのポジションを大きくとらえることの重要性を学ぶことができました。

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