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台北の故宮博物院を、入場券を買わずにじっくり楽しんでみる

台北の郊外に、世界四大博物館の一つとも言われている故宮博物院があります。翡翠でできた白菜「翠玉白菜」や、おいしそうな角煮「肉形石」など、一度は見てみたい芸術品がたくさん収蔵されている、とても魅力的な博物館です。
 
今回紹介するのは、入場料が無料になるお得な情報ではありません。

故宮博物院の入場料は350元、日本円で約1,750円(台湾元×5で計算)
※入場料は日本人を含む外国人用の料金 2024年2月現在

もちろん、ピンポンダッシュのように係員が見ていない隙を狙って入口を駆け抜けるという、常識外れの方法でもありません(笑)
 
博物館の周りにある、無料で見学できるエリアを紹介します。
 
「読んでもらうための釣りタイトルか?」
とお怒りになる人もいるかもしれません。
でも、入場券が無料になるとはひとことも言っていません。
「入場券を買わずに楽しむ」と言っただけです・・
 
私は何度も故宮へ行っていますが、今回初めて博物館の建物の周辺をゆっくり見学してみました。
意外と楽しめることに気が付きましたが、あまり紹介されていないので今回記事にしてみました。

有名な芸術品の白菜や角煮には会えませんが、騙されたと思っておつきあいください。
(全部読んだ後に「やっぱり騙された」となっても、責任は負いません・・)
 
路線バスやタクシーで故宮へ行くと、この大きな白いゲートをくぐって長い歩道と階段を通って行きますね。

ガイドブックでもよく見かける故宮の写真

今回は、ここをわき目でチラッと見るだけで通り過ぎましょう。

蓮の名所 至徳園

至徳園の地図


この白い大きなゲートの両側に公園があります。
まずは左側にある公園へ行ってみます。
 
通路が丸く切り取られている、チャイナテイストのゲートをくぐって奥へ行きましょう。

真ん丸の通り道が特徴的なゲート

至徳園という公園で、毎年6月から8月は蓮の花が咲き乱れ、地元のカメラマンが、大きなカメラを並べて撮影の腕を競い合っているそうです。
私が行ったときは季節はずれで蓮の花は咲いていませんでした(残念!)

奥に進むと、ジグザグに折れ曲がった橋が見えます。悪霊はまっすぐしか歩けないため、悪霊が後ろからついて来ないように造られたという言い伝えがあります。

ジグザグの橋

仙人に出会いそうな幽谷の中国庭園 至善園


次に右側の公園に入ってみましょう。
ブログなどで入場料20元、故宮の入場券があれば無料と紹介されていますが、今は故宮の半券がなくても無料で見学できます(期間限定かもしれませんが・・)。
ここは、宋の時代の中国庭園をイメージした公園で、王羲之(おうぎし)など有名な詩人の逸話が散りばめてあり、文学散歩も楽しめます。

王羲之と言われてもピンとこないかもしれませんが、王羲之の字体をもとに空海が日本語のひらがなを発明したとも言われています。
すなわち、ひらがなの原形を作った人なのです。なんだか親しみが湧いてきますね。
では園内に入ってみましょう。

至善園の入口
至善園の地図と解説

公園に足を踏み入れると、まるで山水画の絵の中に入り込んで散策しているような気分になります。
優雅にお茶を飲んでいる仙人が目の前に現れてきそうですね。

仙人がでてきそうな雰囲気です

龍のようなものが水を噴き出しています。これは蛟(みずち)と言い、龍になる前の姿を表しています。

龍の噴水と松風閣

蛟(みずち)の奥には2階建てのあずまやがあります。
松風閣と名付けられ、宋の時代の有名な詩人黄庭堅(こうていけん)の詩、松風閣詩が刻まれた大きな石があります。

この詩は、役人になった黄庭堅が権力闘争に巻き込まれ何度も失脚、落ち込んで旅に出たときに揚子江沿いの武昌で作ったものです。
人生の苦渋を味わい俗世間から離れることを決めた心境を描いているそうですが、漢詩の教養がない私は、
全部漢字で書かれていること以外、わかりません!
 この力強い字体は、行書の練習教材としても人気があるそうです。

黄庭堅の松風閣詩

この建物の2階からは、庭園全体を見渡すことができます。
台北の中心部からわずか30分の場所にいるとは思えない、深山幽谷の世界を堪能してください。

松風閣の2階からの眺め

さらに奥に行くと、王羲之がガチョウと自分の書と交換している像があります。
王羲之はガチョウがとても好きで、道士が飼っているガチョウを売ってほしいと頼んだところ、道士は道徳経を書いてくれれば何羽でもあげると言うので、すぐに道徳経を書き上げガチョウと交換したというエピソードを再現しています。

左側は道士、王羲之は右から2番目

この庭園はほかにも見どころがたくさんありますが、私の頭の中が漢詩の洪水でオーバーヒートしそうなので、一旦外に出ます。
庭園の出入り口は2か所ありますが、入ってきたところに戻りましょう。

バリアフリー通路

先ほどの庭園の左側にバリアフリー通路があります。
今回はここを歩いて博物館の方へ向かってみましょう。
ゆるやかな坂道を登っていくと、整備されたハイキングコースを歩いているようで、すがすがしい気分になってきます。

バリアフリー通路
地図の赤い線がバリアフリー通路

故宮の廟

バリアフリー通路を上まで行くと博物館の前に出ますが、今回は博物館の中には入らず左へ曲がりましょう。
まっすぐ行き駐車場の入口を右に曲がると小さな廟があり、日本の氏神様のような存在の福徳正神を祭っています。
ネットで検索してもほとんど出てこないので、台湾地元の人も知らない穴場スポットのようです。

柱に「五千年文物宝蔵」と書かれているので、故宮を守っている神様なのでしょう。

五千年? 中国の歴史は四千年では?

と疑問に思った方もいるかもしれません。
日本では「中国四千年」ですが、台湾では「中国五千年」としています。
紀元前2070年に始まった夏王朝から数えると、中国の歴史は約4千年になりますが、神話の時代も含めると五千年になるようです。

日本で「中国四千年」の言葉が広まったのは、テレビCMで流れていたインスタントラーメンのキャッチコピーだとも言われています。テレビの影響はとても大きいですね。
 
今回は、台北の故宮のひと味違った楽しみ方を紹介してみました。
ぜひ入場券を買わずに、博物館の周り楽しんでみてください。
 
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<参考にした資料>
・これだけは知っておきたい故宮の秘宝 古屋奎二著 二玄社発行
・台北ナビ
https://www.taipeinavi.com/miru/148/
・故宮博物院公式ホームページ(日本語版)
https://www.npm.gov.tw/Articles.aspx?sno=03012533&l=3
・NHK高校講座書道 第9回書聖・王羲之の世界 
https://www2.nhk.or.jp/kokokoza/watch/?das_id=D0022170029_00000
・SHODO FAM
黄庭堅(こうていけん)について解説/書風の特徴・代表作品:松風閣詩巻を紹介
https://shodo-fam.com/852/
・チャイニーズドットコム中国語教室
中国の歴史は何年?なぜ日本では4000年といわれるのか
https://www.1chinese.com/ala/12747/
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