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台北・北門 鉄道の博物館を「鉄分ゼロ」で古跡見学してみる

台北駅から西へしばらく歩くと、レンガと木造の豪華な洋館が見えてきます。
ここを通る人は、誰もが建物の美しさの誘惑に負けて、立ち止まってカメラのシャッターを押しています。
 
外観からは想像もつかないと思いますが、鉄道の博物館になっています。
 
この建物は、台湾が日本の統治下だった1920(大正9)年に完成し、台湾総督府鉄道部の事務所として使用され、戦後は引き続き台湾国鉄の事務所として使用されました。
鉄道に深い縁があるので、修復をしたあと台湾の鉄道を紹介する博物館になりました。
 
屋根の瓦は、東京駅の丸の内駅舎と同じ宮城県石巻市雄勝町(おがつちょう)で作られたものを使用しています。
なんだか親しみを感じますね。
 
敷地内には、この赤い建物を含めて日本の国宝や重要文化財にあたる国定古跡が6件もあり、国宝の宝庫でもあるのです。
 
そこで今回は、鉄道の展示は一切無視して、国宝の建物だけを見てどこまで楽しめるか、チャレンジしたいと思います。

庁舎

まずはメインの建物、庁舎を見てみましょう。
真ん中の丸い部分を中心にして左右に広がっています。

右も左も同じように見えますが、よく見ると違いがあります。
右側は先端まできれいに仕上がっていますが、左側は途中から見劣りする木造になり、あまりにもギャップが大きく驚いてしまいます。

右側の先端 きれいに仕上がっています
左側は途中から木造になっています

右側は1919年、左側は1920年に完成しました。
右側を建設するときは予算がかなりありましたが、左側は第一次大戦後の世界恐慌が始まり、コストが高く予算が大幅に不足してしまいました。
そのため屋根や壁の厚さを半分にしましたが、それでも建設費が足らず木造になってしまったのです。

左側の先端は、ビニールハウスのようになっています。
以前はここに厨房がありました。戦後壊されてしまったので、当時の様子がイメージできるように修復しました。
 

左側の先端 ビニールハウスのようになっている部分は、当時厨房がありました


では、建物の中に入ってみましょう。

コインロッカー

コインロッカーの数字

大きい荷物はコインロッカーに預けてください。10元硬貨が必要ですが使用後にも戻ってきます。
ロッカーに書かれた番号をみてください。
日本統治時代から台湾の国鉄で使用されているフォントを使用しています。鉄道博物館としてのこだわりを感じます。
 
今回は「この鉄道博物館を鉄分ゼロで見学すること」をテーマにしています。ここで感激してしまうと鉄分を吸収してしまうので、番号は見なかったことにします(笑)

ロビー

ロビー

質素なつくりですが、柱や天井の彫刻で十分に豪華さを感じます。
正面の階段は古跡を保存するため通行禁止になっています。
ロビーの左側で入場券を買って、右側から入ってください。
 

2階の廊下

板張りだったことがわかるように保存されています

廊下はすべてカーペット敷きになっていますが、当時は木の板に亜麻仁油などを原料にしたリノリウムを塗っていたことが、修復工事のときに発見されました。当時の様子がわかるように保存されています。
 
木の廊下を見て、私が中学時代に木造の校舎で学んでいたときの記憶がよみがえってきました。

床や壁のニスのようなにおい。
歩くたびに響く床のミシッミシッという音。
ガタガタで閉まらない窓。
割れた窓ガラスから入ってくる雨と風。
 
青春の思い出に浸っているヒマはありませんね。先へ急ぎましょう。
(こんなボロボロの校舎ですが、電車に10分も乗れば山手線の駅に到着する東京のど真ん中の学校でした・・)
 

楕円形ホール

楕円形ホール
楕円形ホールの窓

建物の中央に豪華な部屋があります。
ここは会議室として使用されていました。天井や壁の装飾がきれいですね。西洋風の雰囲気ですが、装飾をよく見るとパイナップルなど台湾の名産があります。探してみてください。

宙に浮いたドア

木造の建物に移動すると、宙に浮いたように高い場所にあるドアが見えます。
増築する予定でしたが、予算不足のため全面木造にして天井も低くして建てたので、すでに建設された部分にあるドアが高い場所になってしまいました。

食堂

上の方に見える食堂の階段跡

赤いレンガの建物の南側の先端、木造の建物は1階、2階ともに食堂として使用されていました。
食堂の奥の厨房にあった階段は、上の方しか残っていませんが、かなり急ですね。
1階の厨房で作った料理は、この階段を登って2階に運ばれていました。
私が料理を運んだら絶対にひっくり返してしまいます(笑)

八角楼

国宝のトイレ

中庭に出ましょう。
ここに傘を開いたようなおしゃれなデザインのトイレがあります。
当時は水洗設備もデザインも最先端の公衆トイレで、歴史的に価値があるため国定古跡になりました。
国宝のトイレは珍しいですよね。思い存分鑑賞してください。

電源室

屋根の上に2階のような煙突があるのが特徴

モダンなトイレの隣に、レンガづくりに小さな木造の2階がついた建物があります。
ここは、電報や電話、火災報知器など電気を使うものを扱う場所として使用されていました。
室内に熱がこもるので、屋根の上に煙突のような2階をつけて熱を外に出していました。
今は食堂になっていて、ここで一休みできるようになっています。

電源室の屋根瓦 新しいものと古いものがまだらになっています

屋根瓦をよく見ると、新しいものと古いものがあります。
修復するとき、できる限り以前からあるものを使用し、破損が多く使用できない部分のみ新しく作り直したので、色がまだらになっています。
 
 
国定古跡のうち、まだ4件しか見ていませんが、もうヘトヘトで歩けなくなってしまいました。
今日の見学は、ここまでにします。
 
この博物館は、あまり広くないのですが見どころがたくさんあります。
すべてしっかり見るのは大変なので、テーマを決めて見学することをおススメします。
 
 
國立台灣博物館鐵道部園區
交通:台北駅から歩いて10分くらい
   MRT松山新店線北門駅から歩いてすぐ
住所:台北市大同區延平北路1段2號
公式ホームページ
 
 
参考資料
・臺博數位導覽 (国立台湾博物館ガイド公式アプリ・日本語版)
・國立台灣博物館鐵道部園區 展示説明
・國立台灣博物館鐵道部園區 ボランティアガイドさんの説明


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