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ユーザー目線のブランディングとは?グローバルに展開する「Acer」のものづくりへのこだわり #未来へ繋ぐ台湾エクセレンス

台湾エクセレンスに関わる方々の思いを未来に繋げる連載、「#未来へ繋ぐ台湾エクセレンス」。
第4回目は台湾PCメーカーの草分け的存在である「Acer」から、日本エイサー株式会社 代表取締役社長 詹 國良さんのインタビューをお届けします!

日本でも最近では身近なところで台湾製品をみかけるようになってきていることを、みなさんはご存知ですか?
最新技術を駆使して、革新的な製品を世に生み出している台湾ブランドは、医療、交通など公共的な領域から、家電やスマートフォンなどライフスタイルに関わる領域まで、様々な分野で発展し、みなさんの生活を支えています。

PCメーカーとして業界を牽引しているAcerも、現在はパソコンや周辺機器の開発のみならず、その事業内容は多岐にわたります。
先日発表された第31回(2023年度)の台湾エクセレンス賞においても、空気清浄機やウォーターディスペンサーといった、これまでのAcerのイメージとは異なる、パソコン以外の新製品が賞を受賞しました。

今回のインタビューでは、多様化する時代の中で次々と革新的な製品を生み出していくAcerの、ものづくりへのこだわりや台湾エクセレンス賞への思いをお伺いしました。

<日本エイサー株式会社 代表取締役社長 詹 國良 プロフィール>
1968年台湾生まれ。
1990年に来日し専修大学商学部を卒業。その後すぐに東京で日系企業に入社。
プロダクトマーケティング部に所属となり日本市場の製品マーケティング業務に従事したのち、1998年日本エイサーに入社。
営業担当として実績を積み、2002年に事業本部長に就任。

Acerがそれまでの受注委託生産企業から製造メーカーとしてのイメージへの変換期となった2003年、代表取締役社長に就任。ネットブックの発売、タブレット市場の活性化などAcerブランドの日本市場の定着に貢献。現在に至る。

創業時から変わらない、Acerのブランディング戦略

Q. Acer設立の背景について教えてください

Acerは1976年に弊社の創業者スタン・シーが台湾で設立しました。
当初は電子計算機から始まり、その後アジアで初めてのIBMコンパティブルのパソコンを開発しました。

特にハードウェア部門としてまず自社ブランドのAcer、それから周辺機器、コンポーネントのBenQ、それからEMSサービスのウィストロンという3本柱でやってきました。

創業から全てAcerという冠でやってきましたが、2000年にスピンオフして、EMSとしてウィストロンというグループをつくり、ペリフェラル(周辺機器)とパネルの方はBenQというグループになりました。

また、全世界のネットワークとして71カ国に支社をもち、約160カ国のマーケットをカバーしています。

設立者スタン・シーが提唱してきたことの1つとして、「スタン・シースマイリングカーブ(※)」という言葉があります。

(※)スマイルカーブとは価値連鎖の両側、つまり上流の研究開発や素材、デバイスといった領域と下流の販売やマーケティング、アフターサービスといった流通領域で付加価値が高くなり、真ん中の製造領域の付加価値が低下するという現象。

ICT全体の分野の中で重要な項目として、「研究開発」、「生産」、「流通」という3つが挙げられます。
この3つの流れの中で、「研究開発」と「流通」は付加価値が高く、Acerとしてはこの2つの領域のブランディングに、創業から今日に至るまで非常に注力しています。

台湾の中でも、いち早くブランディングに特化して事業を展開してきました。

Q. Acer製品の強みとは、どんなところですか?

まず、全社的な強みは、「グローバルなネットワーク」です。
先ほど紹介したように、71カ国の拠点を持ち、160カ国以上のマーケットをカバーしているんです。

単純に販売拠点だけではなく、アフターサービスやマーケティングにも力を入れています。

2つ目は、「ブランディング」という非常に長い歳月がかかる事業です。
いかにAcerとして親近感を感じていただき、ブランドとしての価値を認めていただくかを常に考えてきました。

そして、もう1つの強みが、パソコンのマーケットシェアです。2008年頃には、世界シェア2位になりました。四半期によって変わりますが、今でも大体4位と5位の間で推移しています。

マーケットシェア=スケールの強みと、ブランドの強みというのが、Acerにとって1番の財産になっていると思います。

一筋縄ではいかない?!日本のマーケットへのアプローチ

Q. 「日本エイサー」として、日本へ独自にアプローチしている点はありますか?

パソコンのマーケットにおいて、日本は非常にユニークな点があります。

まず、日本には古参メーカーがたくさんいらっしゃること。
やはり日本のユーザーは、自国のブランドを非常に大事にしている、信頼しているというマーケットの特徴があります。

我々は日本のマーケットにアプローチする商品は、何か絶対的な差別化を図るということを1番のポイントとしてやってきました。

そういった中で、2008年頃に小さなネットブックをローンチしました。この製品は多くの日本のユーザーさんにも受け入れていただき、非常に高いマーケットシェアを取らせていただきました。

近年ですと、他社さんがまだできていないような新しいテクノロジーをマーケットに紹介していくという意味で、パソコンとして初めて裸眼で3Dのコンテンツを観ることができるノートパソコンをローンチしました。

また、現在ゲーミングパソコンはマーケットが着々と拡大しており、私たちも単純なハードウェア・デバイスの開発だけでなく、eスポーツの自社のリーグをもっています。
実は今年の11月、弊社の自社リーグ「プレデタリーグ」のファイナルトーナメントを東京で開催しました。

このように、単純にハードウェア・デバイスを広めていくだけでなく、テクノロジーや、人のつながりも広めていくというのが、日本の事業において重視してきたところです。

徹底した「ユーザー目線」が生み出す、革新的な製品

Q. Acerがものづくりをする上で、大切にしていることはなんですか?

パソコンの事業・業界が非常に成熟している昨今、簡単に差別化を図るのは難しくなってきました。
その中でも、私たちはユーザーの目線に立って、製品作りをしています。

例えば、最近ユーザーからもゲーミングパソコンはとても注目されていますが、我々の調査では実際ゲーミングパソコンを購入しているユーザーの半分以上が、ゲームをされていないのです。

ゲーミングパソコンは基本的に性能が高いので、ヘビーな作業をされているユーザーがゲーミングパソコンを購入されるのですが、では、そのユーザーは実際に何をされているのか。

例えば、クリエイターなどクリエイティブな仕事をされている方がゲーミングパソコンを購入しています。

では、その方々はゲーミングパソコンに満足しているのか。
確かに性能には満足しているのですが、ゲーミングPCはどうしても、ファンがうるさかったり、キーボードがカチカチしていたりと、エキサイティングな造りをしていますよね。
それがクリエイターにとってニーズに合っているかどうかと言うとそうではなく、クリエイターたちはなるべく高性能で静かなパソコンが欲しいのです。
そこにヒントを得て、「ゲーミングパソコンのような高性能なPCで静かなPCを作る」というコンセプトのもと生み出されたのが、 弊社の「Concept D」シリーズです。

このように、ユーザーが満足していないところを探り、それを製品作りに反映して、より満足できる製品をマーケットに広めていくことが、常に私たちの大きな努力目標です。

社内のミッションとして「Breaking barriers between people and technology」というスローガンを掲げているのですが、要は、人とテクノロジーの壁を打ち破っていくということ。

最新のテクノロジーをいかに合理的に製品化していくかということです。
簡単に聞こえますが、非常に高価で、まだ普及されてない最新のテクノロジーを、いかにユーザーが手頃に買えて、使用できるようにするか、ということがAcerのミッションなんですね。

「台湾エクセレンス賞」に対する思い

Q. 台湾エクセレンス賞は、Acerにとってどのような意味のある賞ですか?

台湾エクセレンス賞のようなアワードは、大きな評価の指標となっています。
台湾エクセレンス賞は私たちにとっては、1つの証明・証拠なのです。

いかにユーザーに認知していただき、受け入れていただくかには、客観的な見方というのが必要となります。
そのために、色々な国際的な賞がありますが、台湾エクセレンス賞もその中の一つだと受け取っています。

台湾エクセレンス賞を受賞した製品だということを非常に光栄に思い、世界各国で行われる展示会でも紹介しています。
台湾エクセレンスと一緒に頑張って、いろんな国で認めていただいているというのが、マーケットを展開する際に1番勇気づけられているところだと思います。

特に近年、台湾エクセレンス賞は、いかにイノベーティブな商品を作り出すかというところを非常に奨励しています。

そのことは私たちの方向性とも非常に合致するので、弊社としてはこれからもパソコンだけではなく、パソコン以外の新製品も毎年たくさん賞を取っていきたいと思っています。

「マーケットイン」の考え方で、Acerが見据える未来

Q. Acerは今後どのような事業展開を考えていますか?

ものづくりには2つの考え方・方法があります。
1つは「プロダクトアウト」。要は非常に良い製品を世の中に紹介していくという考え方。

もう1つは「マーケットイン」。プロダクトアウトとは逆に、ユーザー目線の考え方です。

うちのデザインセンターでは、色々な業界の方や専門技術者、学生さん主婦など、様々な方を常にお招きして、ディスカッションし、弊社の考え方や試作などを評価していただいています。

そういった声をたくさん取り込むことで、製品の完成度を高めています。
こういった取り組みは、もう十数年前から行っていて、異業種とのコラボレーションも積極的に行っています。

研究開発を重ねて素晴らしい製品を打ち出していくということよりも、私たちとしては、ユーザーセントリックに立って、マーケットインの製品を世の中に生み出していくということを、これから大きなテーマとして頑張っていきたいところです。

日本のユーザーさんには、長年弊社の製品を認めていただいていることを、まず感謝したいと思います。

Acerはこれからも、よりユーザーセントリック、ユーザーの目線に立って、ユーザーにとって本当に価値のある商品作りを頑張っていきたいと思いますので、ぜひたくさんAcerの製品をチェックしていただけるとありがたいです。


〜〜〜


台湾エクセエレンス賞を受賞することは、ユーザーが製品を選ぶ時の客観的な指標として大きな役割を担っているとお話してくださった詹社長。

常にユーザーからの意見を取り入れ、製品をアップデートしていく前向きな取り組みは世界中で認められているところかと思いますが、今後どんなイノベーションを私たちにもたらしてくれるのか、ますます楽しみになるインタビューでした!

みなさんもぜひ、製品を手にとっていただき、Acerのものづくりへのこだわりを感じてくださいね!

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