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【時事抄】 やり過ぎな人たち、過敏反応社会

花粉症の時期、公用で都内某所を訪れた日の朝のこと。その日は特に症状がひどく、朝の早いうちにポケットティッシュを切らしてしまいました。某所駅前にキャバクラらしき店が偶然あり、開店前の店頭にポケットティッシュが置いてあったので、2袋ほどいただいて急場を凌いだことがあります。

開店前の店頭にあった販促品を手にしたことで、その後職を失った女性の話を読み、今年春先の自身の出来事を思い出しました。少し冷や汗💦

今朝の日本経済新聞に掲載された記事のことです。

<要約>
銀行で副店長を務めていた女性が懲戒解雇された。近隣の携帯ショップ店頭に置かれていた販促用の洗剤を持ち帰ったことが解雇の理由だった。「おひとり様1個ご自由にお取りください」とあったというが、勤め先からは「窃盗」と見なされた。処分は妥当だったのか。

23年3月のある朝、銀行店舗に向かう途中、女性は勤務先の斜め向かいの携帯ショップで販促品の箱を見た。箱はトランプほどの大きさで、1回分毎に小分けされた洗剤が3袋入っていた。「ご自由にお取りください」とあり、ショップ営業開始前だったが女性は1つを手に取った。

その後、商業施設の管理会社担当が銀行を訪ねてきて事態は急変する。携帯ショップ従業員が販促物が減っているのを不審に感じ、防犯カメラで確認すると女性の姿が確認された。銀行側の調査で、女性は販促用洗剤を1日に1個、計11個を持ち帰り自宅で使ったと判明した。

女性が上司を伴い携帯ショップに謝罪に訪れると店長は激怒した。「営業時間外の取得は窃盗」だと言い、その後の女性の直接の謝罪にも「会いたくない」と拒んだ。

1ヶ月後、女性は銀行からの懲戒解雇の通知を受け取る。「販促物の取得は窃盗罪に該当し、明確に法令、社会規範、行動規範に反する」「金銭その他の有価物を扱う銀行職員が決して犯してはならない重大な非違行為」。女性は不服と東京地裁に提訴した。

今回の行為が「窃盗罪」に該当するかが争われた裁判で、女性側は、営業時間外とはいえ通行人が手に取れる場所にあり、女性自身も潜在的な顧客だから非難される行為でないと主張。対して被告側は販促物は営業時間中に手に取るからこそ意味をなすこと、さらに「1人1個」とは「1日あたり1個」を意味してなく、連日に渡って持ち帰った女性の行為は窃盗罪に該当と主張した。

加えて原告の女性が銀行員という職責の特性も論じられた。銀行側は今回の騒ぎで預金者の信頼を失い、「取り付け騒ぎが生じて銀行の資金繰りが破綻し、他の銀行への連鎖反応を引き起こして金融恐慌へ発展」する懸念をいい、厳正処分の必要性を主張した。信頼で成り立つ銀行業務とはいえ「取り付け騒ぎ」に発展する可能性は低く過度な制裁だと女性側は反論した。

24年3月、東京地裁は「懲戒処分は避けられない」と判断した。営業時間前に洗剤を持ち帰った行為は窃盗罪に該当し、副店長という立場での窃盗は厳しい非難に値するとした。一方、販促物が高額なものではないため、最厳罰の懲戒解雇は重すぎる処分とし、解雇処分は無効、判決が確定するまで賃金の支払いを命じた。銀行側は控訴しなかった。

(原文2170文字→1067文字)


記事によれば長野県の地方都市で起きた事件だそうです。短い記事だけで正確な事実を掴むのは難しいから、東京地裁の判断の是非は批評しません。しかし、目についた当事者たちの「過剰」が何か嫌だなと個人的には感じました。

・懲戒解雇された女性
 無料配布とはいえ、洗剤(一箱3回分)を11箱も「いただき」するか。セコ過ぎるし、さすがにやり過ぎ。

・携帯ショップの店長
 営業時間外に「いただき」されるのが嫌なら、営業前の販促品は
 店の奥に仕舞っとけ。海外なら「取られた方が悪い」で終わり。
 激怒して謝罪も拒絶とか、下手に出る相手にはつけあがる、
 ハラスメント体質の持ち主なのでしょう。やり過ぎだ。

・銀行上層部
 地方都市のイチ携帯ショップ店長とはいえ、SNS等での非難の拡散を
 恐れたのでしょうが、トカゲの尻尾切り、事なかれ主義の典型だ。
 懲戒解雇という厳罰に値する事案なのか。やり過ぎ。
 取り付け騒ぎの恐れとか、処分の正当性についての主張も無理がある。

日本経済新聞 2024年5月12日の記事より

法令遵守や社会規範の尊重は、過去のさまざまな問題を経て辿り着いた社会の成熟を示すと評価してますが、時折、こうした奇妙な事案に遭遇します。

極端な事例だから、こうしてニュースに取り上げられる。どこもかしこも、日本社会の全体がこうなっているとは思いません。しかし、過剰な人というのはいつの世もいて、良きにつけ悪しきにつけ普及した現代の監視社会と結びつき、時に大きな影響力を持つことが起こりえます。極端な論調に「待った」をかける社会的な仕組みが司法制度であり、第4の権力たるマスコミであり、SNSなど新手のメディアの役目でしょう。noteもね。

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