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企業乗っ取り列伝!時代を駆けた強者達

群雄割拠の現代社会

日本の経済史には、数々の企業乗っ取りのドラマがあります。企業乗っ取りとは、第三者が株式の過半数以上を取得し、会社の経営権を略奪する行為です。その背景には、経営者の経営方針への不満、私的な理由や嫌がらせ、資産やノウハウの狙いなど、さまざまな動機があります。企業乗っ取りは、上場している大企業だけでなく、中小企業やベンチャー企業でも起こり得るもので、会社が乗っ取られると、会社に対する社会の信頼が失われ、従業員の地位が不安定になるなどのリスクがあります。

この記事では、過去の企業乗っ取りの事例を紹介しながら、その手口や結末、対策などを物語風に解説します。企業乗っ取りの世界には、波乱万丈な山師たちの人生があります。彼らは、どのようにして企業乗っ取りを仕掛けたのでしょうか。そして、その結果はどうなったのでしょうか。それでは、物語の始まりです。

第一章 敵対的買収の時代

2000年代初頭、日本の経済界には、敵対的買収という言葉が広まりました。敵対的買収とは、買収対象の経営陣の同意を得ずに、株式公開買い付け(TOB)などによって、一方的に経営権を掌握しようとするM&Aのことです。敵対的買収は、欧米では一般的な手法でしたが、日本では、経営者の権威や株主の忠誠心が高かったため、あまり行われていませんでした。しかし、バブル崩壊後の不況や、金融ビッグバンによる市場の自由化などの影響で、敵対的買収の機会や動機が増えました。

敵対的買収の最初の事例は、1999年に起きました。その主役は、日本の証券界の若きカリスマと呼ばれた村上世彰でした。村上は、東京大学を卒業後、大手証券会社の野村證券に入社しました。しかし、野村證券の保守的な経営に不満を持ち、1998年に独立して、自らの名を冠した投資ファンド「村上ファンド」を設立しました。村上ファンドは、株式の買い占めや株主提案などの手法で、経営陣に経営改革を迫ることで、株価の上昇や配当の増加を狙う「アクティビストファンド」と呼ばれるタイプのファンドでした。

村上ファンドが最初に敵対的買収を仕掛けたのは、日本の老舗百貨店の大丸でした。大丸は、1990年代に不動産バブルの崩壊や消費の低迷などで経営が悪化し、株価も低迷していました。村上ファンドは、大丸の株式を次々と買い占めて、株主としての発言力を強めました。そして、2000年には、大丸の経営陣に対して、経営改革や株主還元の強化を求める株主提案を行いました。村上ファンドは、大丸の経営陣が株主提案に応じなければ、TOBを行って経営権を奪うという姿勢を示しました。これに対して、大丸の経営陣は、村上ファンドの提案を拒否し、敵対的買収から身を守るために、友好的な企業との資本提携を模索しました。結局、大丸は、同じ百貨店の松坂屋との経営統合を決めて、村上ファンドの敵対的買収を回避しました。村上ファンドは、大丸の株式を売却して、約100億円の利益を得ました。

村上ファンドは、その後も、日本の有名企業に対して、敵対的買収を仕掛けました。その中でも、最も注目されたのは、2005年に起きたニッポン放送株買い占め事件でした。ニッポン放送は、フジテレビの親会社であり、フジサンケイグループの中核企業でした。村上ファンドは、ニッポン放送の株式を買い占めて、株主としての議決権を約36%まで高めました。そして、ニッポン放送の株式をフジテレビに売却することで、フジテレビの経営権を握ろうとしました。これに対して、フジテレビは、ニッポン放送の株式を市場で買い増しして、村上ファンドの動きを阻止しようとしました。しかし、村上ファンドは、フジテレビの買い増しに対抗して、ニッポン放送の株式をさらに買い占めて、議決権を約47%まで高めました。この状況になると、フジテレビは、村上ファンドとの和解を模索するようになりました。結局、村上ファンドは、ニッポン放送の株式をフジテレビに売却して、約300億円の利益を得ました。

村上ファンドは、敵対的買収の先駆者として、日本の経済界に衝撃を与えました。しかし、その後も、敵対的買収の波は止まりません


第二章 敵対的買収の防衛策

敵対的買収に対して、買収される側の企業は、ただ傍観するだけではありません。自らの経営権を守るために、さまざまな防衛策を講じます。敵対的買収の防衛策には、大きく分けて、事前防衛策と事後防衛策の2種類があります。事前防衛策とは、敵対的買収が仕掛けられる前に、事前に準備しておく防衛策のことです。事後防衛策とは、敵対的買収が仕掛けられた後に、対応する防衛策のことです。それでは、具体的な防衛策の例を見ていきましょう。

事前防衛策の例

・譲渡制限株式の発行
譲渡制限株式とは、株式の譲渡に対して、会社の承認を必要とする株式のことです。譲渡制限株式を発行することで、敵対的買収者が株式を買い占めるのを防ぐことができます。譲渡制限株式は、中小企業やベンチャー企業に多く見られる防衛策です。

・金の砦条項の設定
金の砦条項とは、株主の一定割合以上の株式を取得した場合に、その株主に対して、他の株主にはない不利益な条件を課す条項のことです。例えば、株式の議決権を制限したり、株式の売却を禁止したり、株式の買い戻し価格を低く設定したりすることができます。金の砦条項を設定することで、敵対的買収者が株式を取得するインセンティブを減らすことができます。

・ホワイトナイトの確保
ホワイトナイトとは、敵対的買収者に対抗するために、友好的な企業や投資家を味方につけることです。ホワイトナイトは、買収される側の企業と資本提携や業務提携を行ったり、株式を買い増ししたりすることで、敵対的買収者の株式取得を阻止したり、買収価格を引き上げたりすることができます。

事後防衛策の例

・パックマン防衛
パックマン防衛とは、敵対的買収者に対して、逆に買収を仕掛ける防衛策のことです。パックマン防衛は、敵対的買収者が買収される側の企業よりも小さく、財務的に弱い場合に有効です。パックマン防衛を行うことで、敵対的買収者の財務状況を悪化させたり、株主からの信頼を失わせたりすることができます。

・クラウンジュエル防衛
クラウンジュエル防衛とは、敵対的買収者にとって魅力的な事業や資産を売却する防衛策のことです。クラウンジュエル防衛は、敵対的買収者が買収の目的としている事業や資産を手放すことで、買収の意味を失わせたり、買収価格を下げたりすることができます。

・スコーピオン防衛
スコーピオン防衛とは、敵対的買収者に対して、自らの企業を破壊する防衛策のことです。スコーピオン防衛は、敵対的買収者が買収したとしても、何の価値もない企業にすることで、買収を断念させることができます。例えば、自社の株式を大量に発行して希釈化したり、自社の債務を増やしたり、自社の事業を停止したりすることができます。スコーピオン防衛は、自らの企業を犠牲にすることになるため、最後の手段として行われる防衛策です。

以上が、敵対的買収の防衛策の例です。敵対的買収は、買収される側の企業にとって、大きな脅威となります。しかし、防衛策を用意しておくことで、敵対的買収から自らの経営権を守ることができます。敵対的買収の世界は、まだまだ続きます。次回は、敵対的買収のメリットとデメリットについてお話しします。お楽しみに。

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