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radio days ②いよいよ本番!

これまでのお話はこちら。

まず午後に市長の電話インタビュー。


負けた藩に異様に気を使われて発言されてるのが編集のポイントだな、と思う。

しかも百年以上の話だし。

そして夜の出陣まで、ご飯を食べに行く。レポーターと。もちろん僕の奢り。💧

気分を盛り上げるために、無駄にお世辞を言う。疲れるよね。自分も財布も。

新橋駅前のSL広場🚂で酔っ払った人にインタビュー。

実はお酒を飲んだ人、というのはインタビューのタブーというか、面白すぎて何度もやりたくなるんだよね。


問題は酔っ払い帰宅待ちで、開始時間が遅くなり、終了時間が遅くなること。


本来は夕方までにインタビューを終えて夕方から編集するのが理想。


今夜も酔っ払いの皆さんありがとう。🍶


面白い答えだらけで1時間分録音終わる。

使うのは多くて一分2回の2分!なんという贅沢!


会社に戻り夜九時。


油っぽい弁当(たしかやげん亭といったな)の夕飯を食べつつ、テープ起こし。


僕は6ミリの✂とテープの編集が苦手で、スクープマンという、ソニーの小さい録音機材にマイクを刺して使い、切手のようなディスクに録音された音をDATに落とし、編集機でデジタル編集し、それを6ミリに落とす、という手がかかる方式を採用してた。


まず録音した一時間をテープ起こしして、使う声を選び、面白くなる順番に並び替える。1分の素材を編集するのに、約一時間と言われていて、僕は一分以内のまとまりわ三つ作るから、大体3時間。


途中おやつを食べて、社内を巡回して残ってる人と世間話をするから、時間はかかる。


徹夜で編集し、原稿を打ち、早朝4時に完成。


四時からは鬼のようにニュース原稿のリライト。


ダラダラ意味なく長文の原稿を短い2センテンスにまとめる。


原稿を書くのは泊まりデスクの仕事なのだが、そのまま使えるような代物ではなく、ほぼ書き直さないと番組クオリティ委員会(パーソナリティ)が本番中原稿を女性パーソナリティが読んでいておかしな表現があると、こちらをジロっと見る、これが怖い。ちびる。


こんな原稿そのまま使ってるじゃねーよ、と言ってるように思える。


5時、番組パーソナリティ到着。2時間分の番組表の原稿チェック。特に何も言われない。


いい兆候なのか、諦められてるのかわからない、不安だ。


本番開始。街頭録音のコーナーは七時半、それまで原稿書いたり、CMのボタン押したり、時間の計算したり、てんてこ舞い。


そして運命の時間がやってきた。


最初は市長さん。インタビュー聞きながら、市長さんが、負けた藩に異様に気を使って話されてる面白さにパーソナリティも気づいてくれて大笑いしてる。

幸先いいぞ!


いい夫婦の日ネタ、

僕が意味不明だな、と落とした酔っ払いの怒鳴り声の音声をプロデューサーが本番前に聞いて、面白いから入れといたよ、と言われる。


サラリーマンの悲哀のような、哀しい夫婦喧嘩の負け戦ぶりが次々披露され、パーソナリティ大爆笑。


久米宏が若い頃ラジオの外からの中継をするとき、スタジオの司会の永六輔に笑ってもらうためだけに喋っていた、とインタビューで答えていたが、それと同じ。


僕もパーソナリティに笑ってもらうことだけを目指して作業してた。


コーナーが終わり、CMに入ると、ガラスの向こうから、ちらっと僕を見て、手でOKサインを出してくれた。


それを見たプロデューサーが気を使って、「あんなことめったしないよ」と盛り上げてくれた。

僕は「まぁこんなもんです、本気出せは」と大きな口を叩いた。


しかし嬉しかったことは間違いない、悩みの森から抜け出した気がした。


その後、この会社を辞めたが、プロデューサー氏は激怒して、僕の名前を名簿から消せ!と後輩に厳命したそうだ。


会社を辞めるには無傷ではいられない。


たまーにパーティーがあるとき、同期の女性ディレクター等から携帯にお誘いの電話が来る。


「けいすけくる?」


ありがたいと思いつつ、名簿辛消えた人間が行くものではないな、と思いお断りしている。

「来ないよねー」


いい夫婦の日、のネタは何か方向性を掴んだ回だったかもしれない。

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