ディケンズ オリヴァ・ツイストを読んで

 村上春樹が影響されたディケンズの作品を読んでみようと思い、オリヴァ・ツイストを手に取った。
 
 序盤から主人公のオリヴァに次々と災難が降りかかり、読んでいて非常に心苦しかった。サイクスやフェイギンといった悪党が容赦無くオリヴァを苦しめる様を読むと、架空の物語と分かっていても主人公に深く同情せざるを得ない。

 全体を通してこの作品では、善と悪が非常にリアリティを持った筆致で書かれている。ディケンズは、社会的弱者の味方としてストーリーを展開しているが、弱者を食い物にするような悪者を、ストーリーに深みを持たせ、弱者を輝かせるための道具として使っているように思う。それゆえにあれほどのリアリティがあるのだ。

 オリヴァ・ツイストという一つの作品を通し、ディケンズの社会的弱者に寄り添う純粋な気持ちが垣間見えた(本作品一つでディケンズについて語るのは憚られるのだが)。
 時代が違えど、本作品に登場するような同情の余地のない悪者、絶対的悪というのは、現代社会でも至る所に存在している。主人公オリヴァのように、清廉な精神を持って今後の人生を生き抜いていきたい。


 

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