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薬剤の過剰摂取(overdose,OD)について(①一般向け)


この題材を選んだ理由

薬剤の過剰摂取が少しでも減ってほしいから

今日はクリスマス・イブですね。そんな日に水を差して申し訳ありませんが、今回は薬剤の過剰摂取(overdose, 以下ODと略します)について伝えようかと思います。この題材を選んだ理由としては、巷でoverdoseの件数が増加しているというニュースが散見されるからです。

薬剤師としてこの状況は悲しいですが、件数が伸びている現状を鑑みて、少しでも件数の低下に貢献出来ればと思い、記事を作ろうと思いました。
また、薬剤の過剰摂取(以下、ODと表記します)で運ばれてきた患者さんの対応をする医療従事者のためにもなればと思っています。

今回の記事はどちらかというと一般向け、次にupしようとしている記事は医療従事者向けに、と考えています。次の記事のupは年内に出来たら良いな、程度の感覚でいます。upが遅くて申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。


ODの現状について

ODの件数は本当に増えているのか?

実臨床の立場から言うと、軽症(薬物が吸収されたであろう量が多くない、意識が清明で1泊2日で帰宅可能)の患者さんについての相談は薬剤部に来ないことがほとんどです。なので、問い合わせが来るのは重症例、特殊例に限ります。

薬剤部への問い合わせ件数について、統計は取っておりませんが、直感としてはあまり変化無いように感じます。私が勤務している施設は3次救急のため、軽症のODであれば救急医のみで十分対応可能なことも理由かと思います。

問い合わせ件数を考えると、重症の患者さんはもしかしたらそんなに増えていないのかもしれません。しかし、母数が大きくなれば重症例も増えるであろうことは予測されます。対応する可能性のある医療従事者は、どの情報ソースを参考にすべきか一度復習しておいたほうが良さそうです。

最近のニュースとしては下記のようなものがあります。
(※一部有料記事もあります)

特に若者に増えている傾向のようです。小学生でODはかなりセンセーショナルなニュースだと個人的には思いました。情報収集が昔に比べてかなり容易になったことも関係しているのでしょう。

ODという選択をする前に・・・

生きていることに希望を見いだせず、市販薬を手軽に購入可能ということを考慮すると、ODという選択をしてしまうことはあり得るとは考えます。
もし、ODを選択しようとしている方がこの記事を読んでいるのであれば、一度思い留まってください。東京都のHPにも下記のような記載があります。

正直いって、ODしても誰も幸せになれません。しんどい時は誰でも訪れることはあります。それでもODという選択をする前に、誰か話を聞いてくれる人はいないか、探してみてください。そして話してみてください。話す人がいなくても、公的な機関を使って伝えれば良いと思います。

ODに関わらず、本当に無理だと思ったら、下記サイトもあります。思い悩んでいることを話す、もしくはSNSなどといったツールで伝えるとかなり心は楽になると思います。

なぜODを選択するのか?

薬以外の身近なものでも致死量は存在します。
代表的なもので言えば水、塩、砂糖など。
どの家庭でも基本的には手に入る、とっても身近なものでしょう?どれもおすすめはしませんし、楽に命を絶つことにはつながりません。

ではなぜODを選択してしまうのか?楽に命を絶てるという思い込みもありそうですが、話題性に富んでいるためと私は考えています。ODは注目を浴びやすい傾向にある。そこから話題性を求めてやってしまう、という流れです。

どうしても表現出来ない・訴えられない、というもどかしさが原因となり、「誰もが注目する何か」をやってしまう。このようなこともきっとあるのだと思います。

(余談)私自身も気落ちすることがある

ここまで書いておきながら、私自身もメンタルが崩壊しそうなほど追い詰められることもあります。むしろ私がNOTEを始めたその日も、まさにそれでした(最近すぎでしょって話ですね笑)。

私事で恐縮ですが
「身近な人間が離れていき悲しい気分になる」
「とある事情で仕事を中途半端に投げ出す形になり、自分の中で納得出来ない状況にある」
「今後の予算を考えると絶望的になる」

そんなことが重なってメンタルがーーーってなったところで、かねてから興味のあったNOTEを始めてみようと思って書いたのが最初の記事です。

見ての通り、本当にメモ書きみたいな感じで15分程度で作成したものです(画像はあとから付け加えました)。
なので、すでに色々訂正したい部分もあったりはするのですが、自分への戒めとして文章は変えずに残しておこうかと思います。

落ち込んでいても、ガガガガガって無心で書いていくと気持ちが楽になりますよ!


ODの結果、どうなる?

楽に逝ける、そんなことはほぼあり得ない

個人的な意見ですが、ODの後はスッと意識が飛んで気づいたら天国へ行っていた。。。ODを決断した方々はそのような感覚でいるのかな、と思います。

実際は全然違います!ある種の薬剤を超大量服用すればありえますが、基本的には
苦しみが伴う
のです。悪心・嘔吐、下痢、めまい、頭痛、腹痛、末梢神経障害、各種臓器障害など。
そして、自分自身だけでなく、周りの人間にも苦痛を与えてしまう可能性が高いです。

付け加えておきますが、ODをしてしまった方々を攻めたり批判したりする気はございません。ODにたどり着いてしまう環境因子が良くない、と私は思います。

昔の事件からわかること(アルコールとアセトアミノフェン)

自らODを行ったというより、意図的にかぜ薬とお酒を一緒に服用させ殺害し保険金を入手したという事件が1999年に起きています(犯人が逮捕されたのは2000年)。当時、私は中学生か高校生くらいであったと思います。テレビで報道されまくってましたね。詳細はwiki参照。

アルコールとアセトアミノフェンの相性は最悪です。アルコールの代謝物とアセトアミノフェンの代謝物は肝臓のグルタチオンという酵素で解毒されます。よって、肝臓のグルタチオンが枯渇しやすくなります。

グルタチオンが枯渇した状態でアセトアミノフェンを使用すると肝臓にダメージを与え、急性肝障害になってしまう可能性が高まります。

また、アルコールを摂取する習慣のある方は、アセトアミノフェンの長期服用に注意が必要です。というのも、アルコールは肝臓の代謝酵素の働きを活発化させます。代謝酵素を正常より活性化させることを代謝酵素の誘導と私達は呼んでいます。

酵素誘導が生じている状態でアセトアミノフェンを服用すると、アセトアミノフェンの分解がより促進され分解産物が増えます。そうすると、増えた分解産物の解毒にグルタチオンが大量に使用されるため、グルタチオンの枯渇が起こりやすくなります。

一部の薬剤では酵素誘導を引き起こすものがあるため、そのような薬剤を服用されている方もアセトアミノフェンの長期投与には注意が必要です。抗結核薬や抗てんかん薬の一部では酵素誘導を引き起こすことが知られており、アセトアミノフェンの添付文書にも「併用注意」の記載があります。

このことから、アルコールや一部の薬剤を服用中の方はアセトアミノフェンによる肝障害が出現しやすいので注意が必要です。

余談ですが、アルコールで薬を服用すると薬の血中濃度が増加する(薬が効きすぎる)、というデータが動物実験レベルですが証明されています。アルコールで薬を服用する方は少ないと思いますが、もしそうしてる方がいるのであれば絶対にやめましょう。

ODして病院に運ばれたあとは?

実際の体験談として、私が経験した症例を次の記事で紹介いたします。とはいえ、プライバシー保護のため「事実をありのままに」ではなく、万が一本人が見てもわからないくらいに脚色はするつもりです。

助かるケースが多いですが、かなり医療資源を消費することもあります。なのでODをすることは、色々な意味であまり得策では無いと私は考えます。


まとめ

ここまで記載してきましたが、ODによって幸せになる可能性は低いと思います。是非とも、「ODはしない」とこの記事で思いとどまっていただければ幸いです。

また、医療従事者の方々からしたら当たり前のことであったかと思います。次の記事では実際に行ったことなどを記載予定ですが、一般の方向けでは無い内容にする予定です。

最後まで読んでいただきありがとうございます。また来てくれたら嬉しいです。
よろしくお願いいたします。

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