46. ケーオーでセクシーな闘志をミナギらせる

12月の第1週の土曜日、次の日に“フユゼン”を控えた我が愛知学院競技ダンス部は午前中に名古屋から新横浜へと移動した。

そのまま慶應義塾大学競技ダンス部との合同練習の為、会場の日吉キャンパスへと向かう。

前を歩いていたセクシー先輩が振り向く。

「フフッ、坊やは初めてよね❤️」


はい、やっぱ慶應は歴史を感じますね〜。

「そうね。アタシはもう4回目だから慣れちゃったけど、アタシも初めての時はそう思ったわ。」

やっぱ、そうっすよね。

「ま、アタシは今回で最後だけどね・・・。」

えっ?

「皆んなと一緒に練習するのは今日が最後よ。」


なんですってぇー! もう部活来ないんすかー!?

「だって明日の試合で4年生は終わりだもの。」


ショックっす、寂しくなりますね〜。

「だからアタシの姿、今日と明日でしっかり眼に焼き付けてね。忘れちゃやーよ💋」


もちろんっすよ! 絶対に見逃さないっす!

現に私の記憶にバッチリとセクシー先輩のお姿が焼き付けられたからコレを書けている訳だが(笑)


会場に到着すると慶應のダンス部の皆さんはもうすでにスタンばっていた。

めっちゃ部員が多い。おそらく50人くらいはいるのではないだろうか。

しかも何か空気がピリピリしている。この雰囲気はあの夏合宿以来だ。

人数が多いと競争も激しいのだろう。

さすがにウチのような弱小ダンス部とは全てが違う。

「今日はよろしくお願いしまーす!」

お互いに全員で挨拶をする。

なんか

「名古屋くんだりから来た奴らが一体どんな踊りを見せてくれることやら、ケケケッ。」

という眼でこちらを見ているような気がしてならない。

完全な被害妄想である。


練習が始まってみると意外にもウチとそんなにメニューは変わらなかった。

そして1年生はみんな同じようなもんだった。

なんだ、ビビって損しちゃったよ〜。


練習の最後は試合形式で、次の日の“フユゼン”に出場する組のみが踊る模擬対抗戦が行なわれた。

1種目につき各校1組ずつ、1対1での本気のダンスバトルである。

特に4年生は明日が最後の試合とあって気合がハンパない。

「よく見ておきなさい、坊や。

ミナギる! ミナギるわ❤️」


セクシー先輩はどうやらかなりアドレナリンが分泌されているらしい。

全国屈指の強豪校だけあって全組がやはり上手い。

慶應はほぼ全ての組が4年生だ。

4年生同士ではそこまで差は分からなかったが、さすがに2年生と4年生では勝負にならなかった。

しかしその中でもセクシー先輩とデヴィ先輩は慶應のレディー達と比べてもまったく遜色が無い。 

いや、むしろ個性では上回っていると言っても過言ではない。

さ、さすがだぜ!


しっかりそのお姿、焼き付けさせて頂きます!

そして模擬戦とは思えない程の盛り上がりをみせたまま、全メニューを消化し合同練習は終了となった。

デヴィ先輩がペットボトルの水を飲みながらこちらへと近づいてくる。

「どうだった、ボクちゃん? 

初体験は💋」


いや〜、やっぱりレベル高いっすね、東部は。

「だいぶ刺激的だったかしら💋」


はい! でも先輩もめっちゃイケてました!

「あら、ありがと❤️

嬉しいわ、明日も頑張れそうよ💋」


・・・最後ですもんね、楽しみにしてます!

「ウフッ、しっかり見ておいてね❤️」


そう言って去っていった先輩であったが、ペットボトルを持つ手が微かに震えていたのを私は見逃さなかった。


次回、いよいよ“フユゼン”!



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