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この世の天国 ドブロヴニク

夢うつつに何か聞えてくる。
たしかに窓の下から、かすかにコトコトコト……。
寝ぼけ眼で重たい鎧戸をあけると、
真下の広場では、うす暗いなか、
採れたての野菜、果物、花などをならべている。
まもなく朝市がはじまるのだ。

ドブロヴニク       朝市                        2006

多民族国家ユーゴスラヴィアを治めてきた英雄チトー亡きあと、
連邦のタガがゆるみ、1991年、クロアチアが独立を宣言。

それはならじとセルビア人を主とするユーゴ軍が侵入、
クロアチア内戦が起きた。

ユーゴ軍とクロアチア軍、住民同士であったクロアチア人と
独立阻止の少数民族セルビア人との争い。
昨日まで親しかった隣人が、難民となり逃れていく。

アドリア海の真珠といわれるドブロヴニクに砲弾の雨が降った。

4年後、内戦終結。危機遺産となったこの街は、
市民必死の修復で中世が息づく美しい昔の面影をとりもどし、
ふたたび世界遺産となった。

ドブロヴニク       朝市のおばあちゃん                            2006

朝日がのぼると近在の農家が持ってきた野菜などをもとめ、
街の人が広場にやってくる。
人のよさそうなおじさんが売るジャガイモは人気だ。
禿頭おじいちゃんの干しイチジク、これはうまかった。

この朝市のおばあちゃんが、今朝、にっこりと笑顔でむかえてくれた。

ドブロヴニクの夜景                                       2006

守りをかためる城壁が旧市街をぐるりと二キロほど取りまく。
そのうえから見ると、オレンジ色の古びた屋根瓦に新しい瓦がまじり、
黒ずんだ白壁に真白な壁をつぎたしている。
内戦の傷跡だ。

昔から外敵と戦ってきたこの街は、現代の苦しい試練をのりこえた。

劇作家バーナード・ショーは
「この世の天国を見たければ、ドブロヴニクに行かれよ」と、語っている。
 


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