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浅草と僕、私 1

写真を載せようか迷ったけど、写真を載せ始めるといよいよ終わらないので、潔く文字だけで残そうと思う。
僕が浅草に引っ越したのは未曾有の感染症が流行し始めた2020年3月の末で、転勤1週間も経たない内に強制在宅勤務が命じられた。
僕にとっては新婚なのに別居だった妻と一緒に暮らすことができて凄く嬉しかったのだけれど、「浅草に住む」あるいは「東京に住む」という楽しさを、当時は十分に享受できていなかったと思う。
越してくるまでは、姫路の片田舎の平松という所に一人暮らしをしていて、だだっ広い1LDKで毎日彼女とLINE電話をしていたのだった。
どうしても寂しさが勝る夜は相生の方まで車で走り、何をするでもなく折り返し、帰宅したら演劇の戯曲もどきを書いて、眠りにつく日々だった。
ーーー東京に来れば何か華やかな生活が送れるに違いない。
そう思っていた矢先の感染症流行で出端をくじかれたというか、誰もいない浅草仲見世を歩いて、いよいよディストピアに来てしまったのかと錯覚したような気がする。
そんな厳戒態勢も1ヶ月ほどで少し和らぎ、仲見世にも人がちらほら見えるようになった。
東京に来たからには色んな街に行って、大勢の人に溺れたかったし、賑わいでいるお店を楽しみたかったのに、こんなことになってしまったがために却って浅草、台東区という町に深く根ざして暮らしていこうと考えた。
7月、急に思い立って東上野にある植村春栄小原流教室に電話をかけ、いけばなの体験レッスンを受けてみることにした。
いけばなは余りにも未知の世界で、未知過ぎるために仕事や感染症のことを忘れて没頭することが出来た。
体験レッスンを受けたその日に入門し、8月から通おうと思ったそのタイミングで第二波で稽古が潰れてしまったのだった。

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銭湯に出会ったのは確か6月頃だったと思う。元々尼崎の祖母の家にお風呂がなく、年末年始は家族で銭湯に行くのが楽しみだったのをふと思い出した。
不動産屋からは「湯どんぶりが良いですよ」と紹介を受けていたのだが、私が最初にハマったのは家から徒歩2分にある鶴の湯で、人工ラドン装置の嘘くささに惹かれたのだった。
しばらくずっと鶴の湯に通っていて、せっかくだし広げてみようと思って次に行ったのは曙湯で、その次が湯どんぶりだった。
湯どんぶりはその時はまだ炭酸泉や美泡水風呂がなくて、水風呂が今の炭酸泉の所にあり、サウナからの動線がイマイチだった。
なので、次に見つけたアクアプレイス旭によく行っていた記憶がある。
堤柳泉はかなり後に入ったのだった。
妻とは鶴の湯によく行ったが、アクアプレイスには一緒に行ったことは殆ど無かったと思う。
鶴の湯の帰り、20分くらいソファーで妻が上がるのを待って、若干冷えた僕と湯立っている妻と2人並んで家に帰る瞬間が大好きだった。
10月に、サウナイキタイというアプリと銭湯お遍路スタンプラリーのアプリを入れたことがきっかけで、その先2年間、家でお風呂に入る機会が殆ど無くなってしまい、妻と鶴の湯に行くことも無くなってしまった。

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仕事は常に苦しかった。一度どうしようも無く辛い一件があり、金曜日の夜に東京を飛び出して熱海に温泉療養したものの、全く気が晴れることが無かった。
でも、東京からだと熱海がこんなに近いんだ、ということが分かり、それから少しずつ旅をするようになった。
東京に越してから九州にも、四国にも、東海にも、未踏だった東北にも旅行し、いよいよ日本全国残すところ秋田県のみとなってしまった。
東北は肘折温泉がとにかく良かった。
あれ以来鄙びた温泉街に心惹かれるようになったのだった。

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隅田川花火大会は勿論中止となった。
三社祭も無かった。
唯一酉の市だけが行われていたので、しっかり毎年熊手をレベルアップさせているのである。
今年初めて三社祭の空気を味わえて、遂に浅草の一員になれた気がした。
「来年は一緒にかつぎましょうね」となごむカフェの兄やんに言われているので、その約束はちゃんと守りたいと思っている。
なごむカフェの兄やんとは、私が毎日Twitter、Xで投稿している「今日もお疲れ様でした。」という浅草の路地の写真について、その継続1周年を祝して珈琲をご馳走してくれたことが出会いだった。
珈琲をご馳走してくれるというので、1人で行けば良いものの、たまたま大阪から遊びに来ていた友達も連れてお店に伺った。
実は年齢が一つしか違わず、それでその日から兄やんと呼ぶようになった。
珈琲は美味しくて、自然と翌日もなごむカフェに向かい、健康的なランチプレートを食べた。
以来ほぼ毎週なごむカフェでお茶をするようになった。

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今回は一旦ここまで。

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