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ゴジラ怪獣ここが好き ビオランテ編

ゴジラ怪獣の好きなところを書いていくシリーズ。
今回紹介するのは、バイオ怪獣ビオランテ。
劇中での顛末を、幽霊もの的な視点で考えます。
よろしければご一読ください。

ちょっとした前フリ

幽霊を見たことがあるでしょうか。
もしそんな経験があるならば、その幽霊はどんな様子だったでしょう。
おそらく、不気味さの中に悲しみをたたえたような、そんな雰囲気だったと思います。
幽霊というのは、なぜかほとんどが悲しそうな佇まいをしています。
映画や小説に出てくる幽霊も皆、どこか悲しげです。
悲しさと不気味さがあってこその幽霊であって、そうでなければ幽霊とはいえないでしょう。

例えば、ホラー映画で金縛り状態になり、恐る恐る足元を見るシーン。
そこにいたのが満面の笑みでカレーをモリモリ食べている男だったら、それを幽霊だと思うでしょうか。
誰もそんな風には考えないでしょう。
怖いことは怖いですが、それはただのわんぱくな不審者です。
幽霊であるなら、悲しげな顔でぼぅっと立っているべきなのです。
もちろん、食事は化けて出る前に済ましておきます。

そんな、幽霊が背負う悲しみと不気味さをまとった怪獣がいます。
それが、今回紹介するビオランテです。

ゴジラ×バラ×人間

ビオランテはバラとゴジラ、そして人間を掛け合わせることで生まれた怪獣です。
少しゴジラ映画の設定の話になりますが、G細胞という細胞がシリーズを通して登場します。
これはゴジラの身体を構成する細胞で、驚異的な生命力を持つという特徴があります。
ゴジラの無尽蔵の耐久力・再生力の核となる部分というわけです。

さて、そこに注目したのが白神博士という科学者です。
この白神博士、亡くなった娘・英理加の遺伝子をバラに移植して育てるという、なかなかコメントしずらい趣味をお持ち。
このバラに、さらにゴジラの細胞を組み込むことで、娘に永遠の命を与えようと考えます。

まあ、怪獣映画でこの手のマッドなサイエンスをたしなむ博士は、とんでもないことをしでかすわけで。
案の定というか言わんこっちゃないというか、ゴジラの細胞を組み込まれたバラは突然変異。
怪獣化し、芦ノ湖にその姿を現しました。
それが怪獣ビオランテ・「花獣形態」と呼ばれる姿です。

ゴジラVSビオランテ 予告編切り抜き

ゴジラ(東宝特撮)チャンネル 「ゴジラVSビオランテ 予告編」より
https://www.youtube.com/watch?v=1qnclpYUmx8&list=PLwMvH0gVbL89eqS4ugFpSINRKkjQ1Vf3i&index=17

この、ぼぅっと湖に立ちはだかる描写。
父親のエゴで疑似的に延命させられているというバックボーンも含めて、まさに幽霊のような悲しさと不気味さを感じます。
さっきの話ではないですが、夜中足元にこんなのが立っていたら悲鳴を上げるでしょう。
できれば、夜中に足元に立っている怪獣ならジェットジャガーあたりがいいですね。

ゴジラ対メガロ 予告切り抜き

ゴジラ(東宝特撮)チャンネル 「ゴジラ対メガロ 予告編」より
https://www.youtube.com/watch?v=OBHgwl1cb4A&list=PLwMvH0gVbL89eqS4ugFpSINRKkjQ1Vf3i&index=13

生活感あふれるショット。
「部屋にジェットジャガーがいる」という状況がすでに面白いですからね。
暗い部屋にいても多分笑うでしょう。

驚異の再生能力

このビオランテ花獣形態、見た目もさることながら鳴き声がなんとも物悲しい、心に刺さるものになっています。
女性が泣いているような、悲鳴を上げているような印象です。
そしてその印象通り、怪獣としてはとてもか弱い部類に入ります。
ゴジラとの初戦では、熱線に焼かれてあっという間に焼き尽くされてしまうのです。

しかし、ビオランテの恐ろしいところは驚異的な再生能力。
焼かれた身体を再生し、さらに高温にさらされたことで異常進化をとげ、再びゴジラの前に現れます。
それが、ビオランテ「植獣形態」と言われる姿です。

ゴジラVSビオランテ 予告編切り抜き2

ゴジラ(東宝特撮)チャンネル 「ゴジラVSビオランテ予告編」より
https://www.youtube.com/watch?v=1qnclpYUmx8&list=PLwMvH0gVbL89eqS4ugFpSINRKkjQ1Vf3i&index=17

花獣形態のときに感じられたか弱さや悲哀感からは一転、重量感のある怪獣らしいフォルムに変化。
それでも、顔つきには僅かばかり人間のような要素があるでしょうか。
なんというか、山奥にいる悪い魔女とか、詐欺がばれて逆上した時の悪徳占い師みたいな。
例えが限定的すぎてあんまり共感は得られないですけど、なんかそうみえるんですよね。

さてこの植獣形態、再生力に加えて硬い外皮による防御能力も獲得。
そして、なんといってもデカいです。
ゴジラを飲み込んでしまおうと、頭から上半身あたりまでパクっと口に納めてしまうくらいにはサイズ差があります。
しかし、そうやって口に入れてしまったばっかりに大惨事が。
口内でゴジラが熱線を発射し、突き抜けた衝撃で後頭部に穴が開きました。

一進一退の攻防の中、ゴジラは人間側の作戦の影響により戦意を喪失します。
ビオランテもまた、白神博士の言葉を受け人間の心を取り戻し、自らの意志で消滅。
金色の粒子となって、天に昇っていきました。

幽霊にして怪獣にして、娘

今作のビオランテの一連の行動は、幽霊もののストーリーに近いといえるかもしれません。
愁いを帯びた幽霊から祟りを起こす悪霊に、そして未練を払しょくし成仏するというような。

そういう視点から見ると、幽霊であるビオランテに対峙するゴジラはさながら、除霊を行う祈祷師といったところでしょう。
熱線で炎上させて霊本体をお焚き上げするという、だいぶ強引な除霊方法です。

結果としてゴジラに倒されるのではなく、父親の改心により悲しみを解消し成仏したビオランテ。
それは、怪獣化した以前からバラとして強引に生かされていた苦しみからの解放でもあります。

もしゴジラの手で強引に消滅させられていたら、人としての心が救われることはなかったでしょう。
映画の結末で寂しさとともに感じる安堵感は、怪獣としてではなく一人の人間に戻ったゆえに感じるものかもしれません。
そういった情緒的な部分が、ビオランテが他の怪獣とは一線を画すところなのでしょう。

ちなみに白神博士の娘英理加を演じたのは、科捜研の女でおなじみ沢口靖子さん。
ビオランテが天に昇るシーンでは、沢口靖子さんの顔がスクリーン狭しと大写しになります。
前情報なしに、いきなりアップの沢口靖子を見せられた観客はどう思ったんでしょう。
それはそれとして、大写しになるその表情は悲しみや未練を抱えている様子はありません。
怪獣でも幽霊でもなく、英理加として旅立ったことの証明です。


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