Scene16スタジオ

写真家がFumikoの写真を撮影している。
Davidが傍でその様子を眺めている。

写真家
緊張しないで、リラックス。

Fumiko、笑顔を作ろうとする。

写真家
もっと肩の力を抜いて。

Fumiko、肩を揺さぶる。

写真家
・・・さっきより良くなった。

写真家は手を止めDavidの方を見る。

David
Fumiko写真なんだ、大げさに考えなくていい。レンズを見つめて。

Fumiko
はい。

写真家
David、悪いが次の予定もある。

David
なんとかするから。もう少しだけ付き合ってくれ。

写真家
そうは言っても。

David
Fumikoこうするんだ。見てて。

DavidはFumikoの隣に立ち、写真家に写真を撮るよう促す。
写真家、撮影する。

David
簡単だろ。おいで。

David、Fumikoを抱き寄せ、写真家に撮影を促す。

Fumiko
ちょっと。

David
そうだ。その調子。

David、Fumikoから離れる。

David
あとは頼んだ。

写真家
了解。

David、退場。写真家、撮影する。

写真家
よし、いい感じだ。これで最後にしよう。

写真家、最後の一枚を撮影する。

写真家
お疲れ様。よく頑張ったな。

Fumiko
ありがとうございました。あの。

写真家
なんだい。

Fumiko
一枚いただけませんか？

写真家
構わないけど、劇場のそこらじゅうに飾られるよ。

FUMIKO
そうじゃなくて。さっきの。二人で撮ったのを。

写真家
了解。今度持ってくるよ。

FUMIKO
ありがとうございます。

写真家
ああ、また。

写真家、退場。
Racheal登場。

Rachel
Fumiko!

Fumiko
Racheal?

Rachel
ねえ、あなたもなの？

Fumiko
何が？

Rachel
Davidに呼ばれたんでしょ？

Fumiko
そうだけど？

Rachel
みんなそうなのよ、このプロダクションは。彼が選りすぐりの腕ききを集めてる。

Fumiko
そう。

Rachel
あなたはいつか這い上がってくると思ってたけど。まさかこんなに早いとは思わなかった。楽しみよね。けど、舞台の上では容赦しないから。お互いに頑張りましょう。

Fumiko
ええ。そうね。

Rachel
どうかした？

Fumiko
ううん。なんでもない。

Scene17劇場前
ポスター貼りの男が公演のポスターを貼っている。
鐵三登場。鐵三はどこかちぐはぐな印象の帽子と背広を着ている。
鐵三は壁のポスターを見ている。

ポスター貼りの男
おい。あんた。

鐵三
あ。すみません。

ポスター貼りの男
何か用かい？
鐵三
あ、はい。

ポスター貼りの男
チケット売り場はあっちだよ。

鐵三
いえ、そうじゃなくて。

ポスター貼りの男
用がないならどいてくれ。

鐵三
いえ、知り合いが。出るので。少し挨拶に。

ポスター貼りの男
知り合い？

ポスター貼りの男、鐵三をじっと見つめる。

ポスター貼りの男
・・・あんたFumikoの友達か？

鐵三
はい。そうです。

ポスター貼りの男
おお、やっぱりあの子の。いい子だよ。あの子は。熱心で。誰よりも早く来て誰よりも遅く帰るんだ。それで、約束は？

鐵三
あ、いえ。

ポスター貼りの男
今、リハーサル中だからな。

鐵三
じゃあ、改めます。今日じゃなくても。

ポスター貼りの男
ちょっとそこで待ってな。

鐵三
あの。

ポスター貼りの男
おい、Keenちょっと来てくれ。Keen。いないのか。またサボってやがるな。

ポスター貼りの男、楽屋口から劇場の中に入る。
鐵三はポスターを眺め、そっと触れる。

鐵三
夢を叶えたんだね。君は。

ポスター貼りの男、楽屋口から出てくる。

ポスター貼りの男
おい。

鐵三
はい。

ポスター貼りの男
入りな。中でkeenが案内する。

鐵三
え。

ポスター貼りの男
またな。大将。

鐵三
ええと・・・。

ポスター貼りの男
芝居が始まったら観に来るんだろ。

鐵三
はい。ありがとうございます。

鐵三、帽子を取り、挨拶し、楽屋口から劇場内へ。
ポスター貼りの男は作業を再開する。

Scene18劇場の楽屋
舞台の方から音楽が漏れ聞こえてくる。
午後遅い時間、リハーサル中で頻繁に出演者の出入りがある。

男
こちらでお待ち下さい。今、呼んできます。

鐵三
すみません、ありがとう。

男、退場。
鐵三、部屋の隅で所在なさげに佇む。
コーラスダンサーたちが猛ダッシュで常に出入りしている。
鐵三、鏡前に置かれている写真立てが目に入る。近づき手に取り、しばらく眺め、写真立てを鏡前に戻す。
Fumiko登場。

Fumiko
テツ！

鐵三
やあ。

Fumiko
どうしてここに？

鐵三
たまたま仕事で。近くまで来たから。忙しい？迷惑だったかな？

Fumiko
そんなことない。いつでも大歓迎よ。久しぶりね。

鐵三
もう2年になるかな。君はあまり帰ってこないから。

Fumiko
あっという間だから。この街にいると。全部あっという間に過ぎていくから。

鐵三
元気そうで何よりだよ。

Fumiko
あなたもね。みんなは？相変わらず元気にしてる？

鐵三
おじさんは君の顔を見たいっていつも言ってる。たまには帰っておいでよ。

Fumiko
うん、仕事が落ち着いたら。

鐵三
今夜も舞台？

Fumiko
そう稽古中なの。名前のある役をもらえたの。ポスターにも名前が載るのよ。

鐵三
すごいね。

Fumiko
でしょ。オーディションを勝ち抜いてやっとここまでこれた。クリスマス前には舞台に立てる。

鐵三
じゃあお祝いしよう。ご飯は？日本人がやってる店を聞いてきたんだ。

Fumiko
もちろん、あんまり時間はないけど。

女性ダンサーの声
Fumiko、Fumiko！

Fumiko
はーい！ごめん呼ばれちゃった。食事は今度落ち着いてからでもいい？

鐵三
うん、わかった。大丈夫だよ。

Fumiko
ごめんね。

女性ダンサーの声
Fumiko！

Fumiko
今行きます！またね。

鐵三
ああ、また。忙しいところ、ごめんね。

Fumiko駆けだしていく。
鐵三、後ろ姿を見送る。
再び鏡前の写真を手に取り、眺める。
舞台の方から再び音楽が漏れ聞こえてくる。

M6クインテット
鐵三、David、Rachel、正一、Fumiko

鐵三：
明日になれば　夢が叶うと
信じて生きてきた

正一：
昨日までの　つらい悲しみ
笑える日が来ると

鐵三＆正一：
朝になれば　夢は覚めて　君はもういない
あの日からずっと　今日までずっと
夢見てた景色　たどり着いたのかな

Fumiko&David&Rachel
明日になれば　夢が叶うと
信じて生きてきた

Fumiko：
幕を開けよう

David：
夢の世界

Fumiko&Rachel：
演じるため　この舞台

David：
全てを揃えて　魔法をかける
舞台に広がる　理想の世界

Fumiko
いつの日か　夢見た世界

David&Rachel：
夢を追いかけて

正一：
遠ざかる

Fumiko:
私は行こう

鐵三：
追いかけられない

All:
夢が叶う時　どんな気持ちなの
夢が叶う時　どんな景色なの

Fumiko
今はまだ　わからない　その日を夢見てる

All:
魔法は解けない　君となら

David&Rachel：
夢を追いかけて

Fumiko：
幕を開けよう

つづく　６月３日から７月２９日まで毎週月曜に３シーンくらいずつ公開予定